株式会社ALGO ARTIS

かつて人間が膨大な時間と労力をかけて行っていた「計画」業務。製造業の生産計画から物流の輸送計画まで、その複雑性は企業の生産性を左右する重要な課題であり続けてきた。この難解な領域に、世界レベルの最適化技術で革命を起こそうとしているのが、株式会社 ALGO ARTIS(アルゴ・アーティス)だ。

同社は2021年に株式会社ディー・エヌ・エー【DeNA】からスピンオフする形で創業。以来、独自の最適化アルゴリズムを武器に、重厚長大産業が抱える複雑な計画問題を次々と解決に導いてきた。

永田 健太郎(ながた けんたろう)──代表取締役社長
1980年、神奈川県生まれ。宇宙物理学で博士号を取得後、業務コンサルティング会社を経て、2009年にDeNAへ入社。データマイニングや新規事業開発を手がけ、2018年にはAIを活用した最適化プロジェクトを立ち上げる。実用化・事業化を経て、2021年にスピンオフする形で株式会社 ALGO ARTISを創業。高度なヒューリスティック最適化技術によって、企業の意思決定を支援するアルゴリズム社会の実現を目指している。
株式会社 ALGO ARTIS
2021年7月、DeNAからスピンオフし設立。2017年にDeNA内で始まったAI事業を前身とし、関西電力との燃料運用最適化プロジェクトなどを経て独立した。「社会基盤の最適化」をビジョンに掲げ、製造業・エネルギー・交通(バス・鉄道など)といった社会インフラ産業を支えるAIソリューションを展開。配船計画や生産計画など、複雑な制約条件を伴う計画業務を最適化アルゴリズムで効率化し、持続可能な社会の実現を目指している。
企業サイト:https://www.algo-artis.com/

目次

  1. DeNA発、世界レベルの最適化技術で産業の課題に挑む
  2. “行き当たりばったり”のキャリアが拓いた経営者の道
  3. カルチャーを核に仲間を集め、産業の垣根を超えた全体最適を実現したい

DeNA発、世界レベルの最適化技術で産業の課題に挑む

── DeNAの新規事業からスピンオフされたそうですね。

永田氏(以下、敬称略) はい。もともと私は2017年からDeNAでAI技術を使った新規事業開発部門に所属していました。そこでさまざまな事業を検討するなかで生まれた一つが、現在のALGO ARTISの事業の原型です。

5年ほど事業を育て、2021年にスピンオフという形で独立しました。ゼロから立ち上げたというよりは、DeNAという大きな組織の中で培った技術と信頼を礎にスタートした形です。

── 「計画の最適化」というのは、どのようなものですか。

永田 私たちのサービスは、製造業やエネルギー、物流といった、いわゆる重厚長大産業におけるさまざまな「計画」業務を対象としています。

ALGO ARTIS
(画像=株式会社 ALGO ARTIS)

たとえば、製造業であれば「どの製品を、いつ、どのラインで、どれだけ作るか」という生産計画。物流であれば「どの荷物を、どのトラックで、どのルートで運ぶか」という輸送計画などです。

これらは非常に複雑な条件が絡み合うため、これまでは熟練した担当者が経験と勘を頼りに、頭で考えて立案していました。私たちは、強力な最適化アルゴリズムを用いて、人間には到底不可能なレベルで、コストやリスクを最小化する計画を半自動的に作成するソリューションを提供しています。

── 独立後の信頼を築くうえで意識されたことはありますか。

永田 DeNAという看板のおかげで、創業初期から大企業のクライアントにも話を聞いていただく機会を得られたのは、非常に大きなアドバンテージでした。

ただ、スピンオフ後も信頼を失わなかったのは、DeNA時代からお付き合いのあったお客様に、実直に価値を提供し続けてきた実績があったからだと考えています。

技術やソリューションという「中身」でしっかりと信頼関係を築けていたので、独立後もその実績をベースに、むしろ信頼度は上がっていったように感じます。

── ALGO ARTISならではの強みは、どういった点にあるとお考えですか。

永田 大きく二つあります。一つは、「ヒューリスティック最適化」という特殊な技術領域において、世界レベルの技術力を持つ組織であることです。

そしてもう一つ、より重要なのは、私たちが「技術ありき」で事業を始めていない点です。まず「計画の最適化」というお客様の課題があり、その課題を解決するために最も有効な技術は何かをフラットに検証した結果、たどり着いたのがこの技術でした。

つまり、お客様の課題解決に完全にフィットした技術であり、かつその技術力がワールドクラスであること。この二つの掛け合わせが、私たちの最大の強みです。

── 世界レベルの技術者の方々と、レガシーな産業の現場の方々とでは、コミュニケーションに難しさもあるのでは。

永田 そう思われるかもしれませんが、実は社内ではまったく問題になっていません。弊社のエンジニアは、技術的に優れているのはもちろんのこと、「自分たちの技術をお客様の価値につなげたい」という強い想いを持ったメンバーばかりです。

当然、私たちはお客様の現場業務をすべて知っているわけではありませんし、逆にお客様もITやアルゴリズムに精通しているわけではありません。お互いに知識の凹凸があることを前提に、それぞれが持つ専門知識を持ち寄り、リスペクトしあいながら一つのゴールを目指す。そのマインドセットが全員に共通しているため、コミュニケーションの壁を感じたことはほとんどないですね。

── AIベンチャーにとって、大手企業とのPoC(Proof of Concept:概念実証)は一つの関門だと思います。

永田 PoCは目的ではなく現場で使っていただくための手段であるという原点に立ち返るようにしています。「PoCだからこの程度でいい」という妥協や言い訳をせず、プロジェクトの初期段階から常に「本番運用」をゴールに見据えて設計する。このマインドセットが重要だと考えています。

PoCはあくまで、本番運用という目的を達成するために必要な検証を行うステップです。だからこそ、そこで得られた学びを次のステップに確実につなげ、最終的にお客様の業務に組み込んで価値を実感していただく。当たり前のことのようですが、この姿勢を徹底していることが、結果につながっているのではないでしょうか。

“行き当たりばったり”のキャリアが拓いた経営者の道

── 大学での宇宙の研究から、コンサルティングファーム、DeNA、そして起業とユニークなキャリアですね。

永田 よくそう言われます(笑)。ただ、私自身は明確なキャリアパスを描いてきたわけではまったくなく、その時々で一番楽しそうだと思ったことに飛びついてきたら、結果的にこうなった、というのが正直なところです。どちらかと言えば“行き当たりばったり”ですね。

研究者の道を諦めて社会に出たとき、自分の中に軸がなくなってしまったんです。それなら人の役に立つことをしようとコンサルになりましたが、リーマンショックの影響で会社の事業環境が大きく変化し、働く環境にも影響が及びました。そのことをきっかけに、転職活動を始めることになりました。不況下でどこも採用を渋るなか、たまたま積極的に採用活動をしていて、最初にご縁があったのがDeNAだった、というだけなんです。

── これまでの経験が現在の経営に生きていると感じる場面はありますか?

永田 経営はチームで行うものなので、自分に足りない部分は得意なメンバーに任せています。ただ、振り返ってみると、結果的にいろいろなことを広く浅く知っている状態が、経営判断に役立っているのかもしれません。

研究者時代にプログラミングの楽しさも辛さも少しだけかじりましたし、DeNAではデータ分析や契約書の細かい確認まで、本当にさまざまな業務を経験しました。一つの分野のスペシャリストではありませんが、多様な領域に対する解像度が少しでもあることが、全体を俯瞰して意思決定するうえで助けになっていると感じることはありますね。

── 今後のマーケットについては、どのように考えていますか?

永田 私たちの「計画」というテーマは、特定の産業に閉じたものではありません。製造、物流、エネルギーなど、複数の領域に横串で展開できる性質を持っています。これは事業成長のうえで大きな可能性を秘めていると考えています。

これまでは、私たちの技術が提供できる価値が大きく、投資対効果が出やすい大企業のお客様が中心でした。

しかし、私たちが目指すのは「産業全体の計画のあり方を変える」ことです。今後は、これまでのプロジェクトで蓄積した知見をもとにソリューションの共通化・プロダクト化を進め、より安価に、より多くの企業に価値を提供できるよう、裾野を広げていきたいと考えています。

── 顧客拡大に向けた今後の販売戦略として、パートナーシップも強化するのですか?

永田 はい。これまでは知見を貯めるために自社で開拓してきましたが、今後はパートナーシップを積極的に活用していきたいと考えています。

私たちならではの強みは主にプロダクトと技術開発にありますから、販路拡大や導入サポートなどは、その領域を得意とするパートナー企業と連携するのが理想です。

ただ、私たちの商材は専門性が高く、すぐに「お願いします」と任せられるものでもありません。外部のパートナー企業が販売しやすいようにマテリアルを整備したり、開発環境を整えたりと、パートナーシップ戦略を本格的に進めるための準備を、まさに今進めているところです。

カルチャーを核に仲間を集め、産業の垣根を超えた全体最適を実現したい

── 事業の拡大に伴い、組織も大きくなりますね。

永田 ただ事業のパフォーマンスを上げるうえで、必ずしも人を増やすこと自体が正解だとは考えていません。とはいえ、現状では人が足りていないのも事実です。組織を拡大していくうえで、私たちが能力以上にもっとも重視しているのはマインドセットです。

どれだけ優秀な方でも、カルチャーにフィットしなければ、チームとして良いパフォーマンスは出せません。一人ひとりが気持ちよく働き、会社全体のパフォーマンスを最大化するためにも、このカルチャーフィットという軸は決してぶらさずに、仲間集めを続けていきたいと思っています。

── IPOの可能性についてはどうですか?

永田 私たちはまだスタートアップであり、将来の成長に向けた先行投資を続けていくフェーズです。今後も必要に応じて資金調達は継続的に行う考えです。

私たちの株主にはベンチャーキャピタルも入っていただいており、それは私たちがIPOを目指す意思表明とほぼ同義だととらえています。グローバルなスタンダードになるという目標を達成するためには、M&Aなども含めた戦略的な資金活用が不可欠です。その選択肢を広げるという意味でも、IPOは重要なマイルストーンとして明確に意識しています。

── ALGO ARTISが目指す未来像を教えてください。

永田 私たちの究極のゴールは、「計画は人間が作る」という常識を過去のものにすることです。テクノロジーが人間より高度な計画を立てることが当たり前になり、それによって産業全体の生産性が飛躍的に向上する。そんな未来を実現したいのです。

今は個別の業務の最適化から始めていますが、将来的にはサプライチェーン全体、さらには企業や産業の垣根を越えた「全体最適」を実現します。部分最適の集合体ではない、真の全体最適化された社会。それが私たちの描く未来像です。

氏名
永田 健太郎(ながた けんたろう)
社名
株式会社 ALGO ARTIS
役職
代表取締役社長

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