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地図サービス「Mapion」、電子チラシサービス「Shufoo!(シュフー)」、ウォーキングアプリ「aruku&(あるくと)」を主力に、人々の暮らしに寄り添う「ワンマイル・イノベーション」を推進する株式会社ONE COMPATH(ワン・コンパス)。同社の母体は、TOPPANとNTTのジョイントベンチャーとして、インターネット地図サービス「Mapion」を作る会社として生まれた企業だ。

新卒でTOPPAN(当時・凸版印刷)に入社、関連事業を引き継ぐONE COMPATHの社長に就任した早川礼氏に、同社のユニークな事業変遷、競争優位性、そしてAIを活用した未来のマーケティング戦略や組織づくりについて語ってもらった。

早川 礼(はやかわ れい)──代表取締役社長CEO
2000年、凸版印刷株式会社(現・TOPPAN株式会社)入社。商業印刷部門の営業として旅行代理店などを担当した後、2006年、博報堂ほか4社の合弁会社である株式会社BrandXingに出向し、企業や商品ブランディング、商品開発、ECサイトの立ち上げ支援などを経験。2011年より電子チラシサービス「Shufoo!」事業においてマーケティングや新規事業立ち上げに従事し、2019年4月より現職。
株式会社ONE COMPATH
1997設立。ワンマイル・イノベーション・カンパニーとして、Mapion、Shufoo!を中心とした暮らしに寄り添うサービスを展開するとともに、AIや独自データを活用したマーケティング支援も行っている。従業員数は 134 人(2025年4月1日時点)。
企業サイト:https://onecompath.com

目次

  1. 「ワンマイル・イノベーション」を支える3つの主力サービス
  2. Googleとは異なる「ずらした戦い方」とデータ活用
  3. 「言行一致」を重んじる経営哲学:社長としての成長と外部からの学び
  4. 泥臭いB2B営業と共創によるB2Cマーケティング戦略
  5. 大企業グループにありながらベンチャー気質を保つ組織文化
  6. M&AとAI活用で描く未来:リテールマーケティングとウェルビーイングの進化

「ワンマイル・イノベーション」を支える3つの主力サービス

── 前身の会社を含めると30期目を迎えるとのことですが、現在の主力サービスに至るまでの経緯を教えてください。

早川氏(以下、敬称略) 最初はTOPPANとNTTのジョイントベンチャーとして、インターネット地図サービス「Mapion」を作る会社として誕生しました。

「Shufoo!」は、その会社とは別にTOPPANの新規事業として2000年にサービスが作られ、来年で25年目を迎えます。

これら二つの主力事業があるなかで、ONE COMPATHは6年前に、前身のMapionを母体とする形で誕生しました。そのタイミングで「Shufoo!」をTOPPANから譲り受け、MapionとShufoo!を母体にして、どんどん新しいインターネットサービスを展開しようという狙いがありました。

TOPPANグループがB2B主体の会社であるなかで、幸運にも誕生した複数のインターネットサービスをまとめ、インターネットの商習慣に寄せた組織形態で育てた方が、のびのびとうまくやるだろうという親会社の目論見もあり、現在の会社になっています。

ONE COMPATHが立ち上がってからも、いろいろ新規事業を始めましたが、現在はMapionとShufoo!、そしてONE COMPATHが立ち上がる少し前に始まったウォーキングアプリ「aruku&」の三つを主力事業として事業展開しています。

── 三つのサービスについて、それぞれ詳しく教えてください。

早川 Mapionは、インターネット上で地図が閲覧できるという基本的なサービスに加え、一般ユーザー向けにはニッチな機能を尖らせながら使っていただいています。また、その地図のテクノロジーを使って、企業向けにソリューションをいくつか提供しています。お店の場所や商品がどこで買えるかなどを案内する機能を企業に提供しています。

Shufoo!は、近所の折り込みチラシが無料でアプリやパソコンを通じて見られるサービスです。新聞を取っていないけれど折り込みチラシは見たいという根強いニーズに応える形で、20数年間続けてきました。

企業からすると、新聞を読まない方にもお店の情報を届けたいというのは大事なポイントです。最初は折り込みチラシの保管という形で始まりましたが、新聞を読まない方が増えていることもあり、Shufoo!にしか配信されないチラシなども含めて、お店の集客には重要なツールになっていると思います。

aruku&は、楽しみながら運動を習慣化できるアプリです。累計270万ダウンロード、約200社の企業に利用いただいています。「健康のために歩こう」と言っても続けるのは難しいものです。aruku&では、歩くとさまざまなキャラクターがアプリの中にコレクションできたり、ポイントがもらえたり、懸賞に当たるキャンペーンがあったりします。

また、会社単位で参加して、みんなでランキングを競いながらワイワイ楽しむこともできます。このようなエンタメ要素を詰め込むことで、歩くことが楽しくなり、いつの間にか習慣化されるサービスです。

Googleとは異なる「ずらした戦い方」とデータ活用

── 特にMapionはGoogleマップ、aruku&はポケモンGOのような大資本の競合がいるなかで、御社の強みや競争優位性がどこにあるのか教えてください。

早川 地図事業は、一般ユーザー向けでGoogleマップにユーザー規模や資本力で勝てない。そのため、企業向けにその企業の個性を生かしたり、ニーズにあわせたお店や商品を買う場所の案内ができる機能を提供したり、aruku&のように地図のテクノロジーを使って運動習慣活動という新しいサービスを生み出したりと、少し「ずらした戦い方」をしています。

Shufoo!に関しては、マーケティング機能の強化が競合との差別化で一番大きなポイントです。電子チラシサービスは、我々が日本初ですが、20社ぐらいがチャレンジし、今残っているサービスは我々を含めて4社ぐらいです。新聞購読者数の減少もあり、電子チラシサービスは盛り上がっているタイミングだと思います。

Shufoo!の強みは、チラシを見た人がどんな人で、どんなタイミングで、どのエリアからお店まで本当に来たのかということをGPSベースで把握し、それを可視化することで、販促活動のPDCAや精度を向上させるところまでしっかりご支援できる点にあります。

aruku&のような移動エンターテイメント領域は、ウォーキングアプリと検索するとアプリストアにはたくさん出てくる戦国時代です。そのなかでaruku&は、「仲間と楽しむ」という点と「エンタメ性」という点でポジショニングを取り、独自性を出しています。

「仲間と楽しむか、一人で楽しむか」「ガチで健康促進か、エンタメ寄りか」という切り口で考えると、やはりみんなで歩いたり競って歩いたりする方が楽しいし、エンタメ要素があるほうがウォーキングが続きます。

我々としては、将来の健康のために我慢をして歩くよりも、今が楽しくて歩くこと自体を楽しんだ結果、健康になるという習慣を作れた方が、人は楽しいのではないかと考えています。

具体的には、仲間を呼ぶとポイントが貯まったり、仲間と一緒にアプリ上のゲームをクリアしたり、企業や自治体のイベントができる仕組みを提供したりしています。一人で黙々と歩くのではなく、みんなで楽しむことを重視しています。

IPとのコラボレーションも積極的に行っており、アイドルやアニメ、漫画などとタイアップすることで、ユーザーを飽きさせない工夫もしています。直近では「カプセルトイ」で有名なキャラクターとコラボレーションしています。

「言行一致」を重んじる経営哲学:社長としての成長と外部からの学び

── 社長のキャリアについて、その経験が代表としての仕事にどう生きているか教えてください。

早川 新卒で現在の親会社に入社し、5年間ほど営業をやっていました。当時は旅行会社のパンフレットをひたすら印刷するような仕事です。その後、マーケティングの会社に5年ほど出向しました。TOPPANと博報堂が一緒に作った会社の立ち上げに携わり、クライアントをいくつか持ちながら、営業と企画をセットにしたような動き方をしていました。

そこでマーケティングの面白さや、それぞれの専門家の奥の深さに触れ、刺激を受けました。あまりに専門の奥深さにびっくりして、一つのテーマを追求していくのは難しいと感じた一方で、もう少し浅く広くいろいろ経験したり、俯瞰してコーディネートするような仕事の方が、営業に近い仕事をしていたこともあり、自分に合っているのではないかと思いました。

自分の幅をどんどん広げられるような経験をしてキャリアを作っていきたいと思ったのが、その5年間の出向期間でした。

その後、親会社に戻るタイミングで、このShufoo!事業のビジネスグロースのタイミングに幸運にも巡り合いました。そこでShufoo!のユーザー拡大のマーケティングや広報、サービス開発など、ビジネスサイドは一通りいろいろやらせてもらいました。

最後のほうは、ONE COMPATHの立ち上げプロジェクトに参加するなかで、自分はまったく想像していなかったのですが、「社長もやらないか」という話をありがたくいただきました。

当時は驚いて「1週間考えさせてください」と答え、食事喉を通りませんでしたが、こんなチャンスや機会はサラリーマン人生でもうないだろうと思い、挑戦する決断をしました。

── さまざまな経営者の方から学ばれたと思いますが、特に大きな影響を受けた考え方や、この方の考え方が良かったというものはありますか。

早川 この人、この言葉と集約するのは難しいのですが、たくさんあります。一つは「言行一致」を本当に大事にしなければならないということです。これはユニクロの柳井さんの言葉で「経営はステークホルダーに対して約束を守る」ということを本で読んで、自分はすごく刺さりました。自分の中で言行一致が大事だと思っているということは、そういうことなのかなと妙にしっくりきました。

会社の成果は言行一致の積み重ねで成立するし、それは経営だけではなく、各メンバーが言行一致を積み重ねていくことで成果が出ると考えています。

トップである自分がその言行一致を常に外さないようにすることは、常に社員から見られていると思いますし、言ったことを守らないと信用を失います。言行一致というのは、さまざまな方との話の積み重ねを経て、自分が非常に大事にしていることの一つです。

もう一つは、社外に出ることの重要性です。井の中の蛙にならないようにということを自戒的に思っています。親会社の管掌部門との連携はありますが、普段、立場上、自分に注意する人はほとんどいません。

いろいろなことをすっ飛ばして社長になってしまったというコンプレックスが就任以来強く自分の胸にあります。自分の考え方や視点、視野は常に足りてないのではないか、足りているわけがないという考えのなかで、先人の知恵は取り入れたほうが絶対に良いと思っています。

泥臭いB2B営業と共創によるB2Cマーケティング戦略

── 今後、マーケティングでどのような形で力を入れていこうと考えていますか?

早川 マーケティングはB2BとB2Cの両方があると考えています。B2Bに関しては、新しいことはないのですが、とにかく泥臭くお客様とお付き合いすることが、当社の業態、特にShufoo!などでは重要だと思います。全国で毎日1円、10円にこだわって商売されているスーパーやドラッグストアがお客様になるなかで、効率も重要ですが、しっかりフェイス・トゥ・フェイスで感情を通わせながらお付き合いしていくことがすごく大事だと感じる部分が多くあります。

リモートで会話できますが、社員の営業メンバーも含めて、できるだけ足を運んでお客様に寄り添おう、お客様の声を直接聞こうという方針です。

B2Cに関しては、「共創」で競争していくことを重視しています。我々のネットワークというか、ユーザーの接点を増やすことが、aruku&にしてもShufoo!にしても重要だと考えています。

ウェブ広告などを使ったキャンペーンやユーザー獲得は、CPAやCPIにこだわってやっていますが、これだけの情報量が多い世の中で、一つのサービスで自社だけのコミュニケーションで狙うのは相当難しいとも感じています。

そのため、Shufoo!で言うと流通企業と一緒にユーザーを増やす取り組みをしたり、Shufoo!と親和性のあるサービスを持っているアプリなどにShufoo!のコンテンツを提供して、チラシを見ていただく場所を増やすことで、チラシが見られるネットワークを作るということを以前から行っています。これを王道のやり方として今後も大事にしていきたいです。

aruku&も、単独でユーザーを増やしていければ良いのですが、簡単ではありません。そのため、先ほどのアイドルやアニメなどのIPとコラボし、そのファンの方に一度使っていただくことで、その後も継続的に使っていただくようなことや、企業のタイアップも行っています。たとえば、最近では生協の会員とタイアップし、aruku&でたまったポイントが生協のお買い物で使えるようにしました。

ウェルビーイングは、歩くだけとか食事だけといった単発のサービスだけでは実現できるものではありません。歩くことと食事を大事にすることなどを意識して習慣を作り、関連する企業との連携を増やすことで、結果的にaruku&を使う方も増えるというやり方が合っていると思っているので、パートナーシップを増やしていきたいですね。

大企業グループにありながらベンチャー気質を保つ組織文化

── 御社の組織の強みと課題についてはどう分析していますか?

早川 チームで何かをやるのが好きというところや、風通しの良さだと思います。あとは「お客様のために」。この三つが、我々の良さとしてはっきりしているところだと思います。

── 大企業をバックに持ち、社長もいわゆるレガシーな業界の出身ですが、ベンチャー的なスピード感があるイメージでしょうか。

早川 親会社とはカルチャーがまったく違うと思います。親会社のカルチャーを一部残しているところはあると思いますが、できるだけ独自の制度、独自の採用などで作っていきたいという思いは、設立時からあります。

人事制度はもちろん、たとえば我々が契約する健康保険組合もTOPPANグループとは別で契約しています。もともとMapionが少し独立心のあったグループ会社だったこともあり、そこはうまく引き継いでいます。

── 組織づくりやマネジメントで難しさや苦労はありましたか?

早川 一番難しかったのはそこでしたね。100年続くレガシーな会社で事業部門にいると、売上や利益、お客様のことだけ考え、そこに集中できていました。

しかし、社長という立場ですべてを見るとなって、今までまったく経験してこなかった人事や労務、組織作りで苦労しました。自分にとって「社長」とは、年に1回見かけることができるかどうかぐらいの存在、ありがたいお話を聞かせてもらうというような存在だったので、社長がどのように振る舞っているのか見当がつかなかった。

最初は「社員から好かれなければいけないのではないか」という思いから、好かれることがゴールのようなコミュニケーションをいろいろしていたような気がします。それが成果につながることなのかというと、多分そうではなく、今から考えると結構無意味なスタンスだったのではないかと思います。

カルチャーや雰囲気、コミュニケーションの量は必要だと思いますが、一方で会社の全社最適や利益をどう出すかを考えるときに、厳しいと思えるような判断も下さなければいけない。就任当初から2、3年目、コロナ禍もあり苦労しましたが、7年前に比べると、いろいろニュートラルに判断や意思決定ができるようになり、自分なりに進歩したのかなと思っています。

M&AとAI活用で描く未来:リテールマーケティングとウェルビーイングの進化

── 今後の資金調達やM&Aといった成長戦略について考えていることは?

早川 100%子会社なので、特に何か資金調達をするということは考えていません。調達をするとしたら、当社がM&Aを他社に仕掛ける時だと思います。

以前、一度小さなベンチャーを買収しましたが、うまく生かすことができなかったので、反省はたくさんあります。

しかし、今後この競争が激しいなかで、主力としている事業の周辺でサービス拡大や機能拡大するときに、M&Aは改めて有効な手段だと思うので、積極的に検討しなければならないと考えています。その際、自己資金で足りない部分があれば、どこかから調達するという話はなくはないと思います。

── どのようなスタートアップや会社との出会いを考えていますか?

早川 関係のない業種ではなく、近しい領域だと考えています。Shufoo!を中心とするリテールマーケティングでは、今後の進化の方向性としてAIの活用をとても重視して進めているので、このあたりで技術やニーズを持った企業との連携を考えています。

また、ウェルビーイングの面では、たとえば今後、ウォーキングに睡眠という要素を掛け合わせられないかとか、脳科学で脳のパフォーマンスをどう引き出せるかといったこと。そのような事業成長やサービスのバリューアップにつながる可能性を持っているベンチャーは面白そうだなと思っています。

── 今後の構想、特に中期戦略にひもづく形で、どのような事業展開を考えていますか?

早川 リテールマーケティング支援では、AIマーケティング事業をうまく重ねていきたいと考えています。今までは情報の配信や、お店と生活者の接点をどう作るかという価値提供が主でしたが、もっと流通小売業の企画制作の部分の支援に広げていきたいという思いから、AIマーケティング事業として「Shufoo! AI」というサービスを、実は(取材日の)今日ニュースリリースを出しました。

最終的には、チラシ制作の自動化などに入っていけたらと考えています。現状は、とにかくチラシの中身をAIとOCRで分解し、どのチラシにどんな商品がどんなキャッチコピーで載っているかということをデータベース化したり、行動データ、つまりどんな人がどんなタイミングで来店したかということをひもづけることで、効果的なチラシをAIがモデル学習してできるようになるはずです。

ここから、効果の出そうなチラシの企画を作るところを、担当者がAIやチャットボットとやり取りしながら、次のブラックフライデーの企画を考えられるとか、そのうちには商品構成までAIが考えていたり、デザインまでやってくれたり、最終的にはユーザーにあわせて今日の欲しい商品が自動で構造化されたチラシになっていたり、そのなかからレコメンドされたり、お店に行きたくなるような流れができたりとか、そんなことまでやれたらと考えています。

── 実現していくなかで、御社の中でまだ足りていない部分や、それに対して現在取り組んでいることはありますか?

早川 一つは全社員のAIスキルの底上げだと思います。自分もまだまだですが、息を吸うようにAIを使っている状態にどれだけ早く会社として持っていけるかというのが、今後の競争のなかでは重要だと考えています。

また一方で、商売の基本だと思いますが、お客様の声を直接聞くことにおいて、自分の目と耳と足を使って情報を収集することは、常にやり続けるし、もっと強化してもいいぐらいだと思います。そこの組み合わせを会社として並行して強くやっていきたいと考えています。

氏名
早川 礼(はやかわ れい)
社名
株式会社ONE COMPATH
役職
代表取締役社長CEO

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