良い製品を作っても「営業力」がなければ市場に届かない。一方で、優秀な営業人材は既存製品の販売に追われ、疲弊している。この構造的課題に20歳で切り込んだのが、カクトク代表の満田聖也氏だ。国内最大級となる1.8万人のプロ営業人材ネットワークを構築し、企業の営業課題を解決する同社。コロナ禍で売上が4分の1に激減する危機を乗り越え、独自のプラットフォームモデルでV字回復を遂げた。「正社員採用市場こそが競合」と語り、「営業の働き方」そのものを革新しようとするカクトクの戦略に迫った。
企業サイト:https://kakutoku.co.jp/
国内最大級の営業マッチングプラットフォーム「カクトク」の誕生
── 創業は20歳の時だとか。どんな経緯だったのでしょうか?
満田 創業のきっかけは、在学中に、「シタテル」というプラットフォームを提供する会社で、創業初期の営業立ち上げフェーズに参画していて、熊本、福岡、東京などで営業の初期顧客開拓や体制構築を担当する中で課題感を覚えたことです。
担当していたのはアパレルセレクトショップへのサービス提供で、営業は初めてでした。セレクトショップのオーナーは、自身で作りたいオリジナル商品へのニーズを持ちながらも、小ロットでの生産が難しく、その実現が困難な状況でした。そこに、小ロットでもオリジナル服が作れるというソリューションを提供することで、お客様のニーズにこたえられたのです。これは、イノベーションにおける「ラストワンマイル」を担う仕事だと感じました。
一方で、企業側、特にスタートアップは、良い製品を作ってもなかなか広まらなかったり、優秀な営業人材を採用できなかったりする課題を抱えています。営業人材は、既存製品を競って売るような状況に置かれ、本来売りたい魅力的なものを売りにくい構造がありました。そこで、営業の働き方そのものが変われば、良いものが世の中に広まっていくのではないかと考え、カクトクを立ち上げました。
当初は営業の副業・フリーランスマッチング事業から始めましたが、コロナ禍で会社が危機的な状況に陥りました。特に大手企業にご利用いただいていた営業の外注が軒並みストップし、事業存続の危機に瀕しました。そこから現在の「カクトクconnect」というプラットフォームモデルへと転換し、成長を遂げてきました。
── 現在の中心事業である「カクトク」について教えてください。
満田 カクトクは国内最大級の営業プロフェッショナルのネットワークを構築しています。現在、約1.8万人のフリーランス・副業のプロ営業人材と、約600社の営業支援会社が登録しています。これらの営業プロフェッショナルを、営業課題や営業リソースの課題を抱える企業様に対して最適な形でマッチングする事業モデルを提供しています。
── コロナ禍での危機をどのように乗り越えたのでしょうか。また、事業が軌道に乗るまでに、うまくいかなかったことは?
満田 様々な試行錯誤がありました。営業のフリーランス・副業マッチングを始めた後、企業がより営業成果を出すための改善を進める中で、営業人材データベースを活用した営業支援プロジェクトの受託事業を開始しました。
当時は「プロディレクター」と呼んでおり、弊社がプロジェクト全体をディレクションし、登録人材チームで支援するという形でした。2019年頃にはこの事業が一定の伸びを見せていました。
しかし、2020年4月の緊急事態宣言以降、企業からのプロジェクトが軒並みストップし、継続案件も停止となりました。当時の売上は、ピーク時の4分の1にまで急減し、まさに会社が死にかけた状況でした。
生き残るために、中小企業様向けの営業支援ニーズの増加に着目しました。中小企業様は販管費の調整や事業縮小が早かったため、攻めの営業へのニーズが高まっていたのです。
しかし、弊社が直接プロジェクトを受注するモデルでは、予算の制約から単価が合わないケースが多くなりました。そこで、ディレクターと営業人材をマッチングする、純粋なプラットフォームモデルへと転換しました。このピュアプラットフォームモデルへの転換が成長を牽引し、現在では年間約2,000社もの企業様にご利用いただくサービスへとスケールしました。
成果報酬ではなく固定報酬が実現できている理由
── 御社の強みや成長を支えている大きな要因は何だと分析していますか?
満田 まず、長期的な視点で業界革新に取り組んできたことが挙げられます。目先の成果や従来の営業外注市場の商習慣にとらわれず、本質的な業界の変革を目指してきました。
この姿勢に共感・賛同いただいた方々が、1.8万人のプロ営業人材、600社の営業支援会社、そして5,000社を超える利用企業様というネットワークを築き上げています。これが、私たちの大きな資産であり土台となっています。
── キーエンスやリクルート出身など、営業力が高いと言われる方々が多いように思いますが、そういった方々がカクトクを選ぶポイントは何でしょうか。
満田 優秀な方々が独立し、カクトクのパートナーとして企業の営業支援を行える仕組みが整っていることが理由の一つです。
大手営業代行会社やBPO会社で働くよりも、活躍した分が直接収入に繋がるため、優秀な方々が独立して自身の営業支援事業を伸ばしていくことが可能です。これが、そういった方々にとっての大きなメリットだと考えています。
── 報酬体系に固定費があるそうですが、成果報酬型が多い中で、踏み切れた理由や当時の反対などはなかったのでしょうか。
満田 弊社が目指しているのは、営業の人件費総額のリプレースです。成果報酬型の場合、企業の営業課題や状況によっては、仮説検証や営業組織の教育といったプロセスが十分に実施されず、結果として「売れなかった」というフィードバックしか得られないケースがあります。これでは、クライアント様には何も残らない可能性があります。
私たちは、営業人材が直販の自社営業チームとして活用されることを提案しています。これにより、行動経験をしっかりと蓄積し、営業的な知見を残していくことができます。将来的に正社員に切り替える際にも、スムーズに進められるというイメージです。
カクトクは営業職にとって「独立の登竜門」
── 正社員採用という、ある意味で競合となる領域をどう見ていますか?啓蒙活動が必要で難しい側面もあるかと思います。
満田 ご指摘の通り、営業の人材給与市場、すなわち正社員採用が最大の競合であり、戦う相手だと認識しています。
当社が7月に実施した調査では、営業目標を上回って達成している企業の約8割が採用順調である一方、営業外注を活用している企業では、採用順調な企業には及ばないものの、それに近い相関性が見られました。つまり、営業リソースは業績に強く相関しており、外注でも一定の効果を発揮できるということです。
営業人材市場はまさに過渡期にあります。営業組織の高度化、セールステック市場の拡大、そして営業職自身の労働価値観の多様化による独立者の増加など、市場は変化しています。企業は、直近の業績に貢献する仕組みを作らなければ変化に対応できません。
その仕組みをしっかりと作り、成果を出すことを突破するのが弊社の役割だと考えています。
── プラットフォームとして、総合型マッチングプラットフォームとの違いや、大手競合が参入してきた場合の対策、御社の魅力について教えてください。
満田 総合型プラットフォームは多様なジャンルを扱うため、特定の分野に特化して深いナレッジを追求することは難しいと考えています。
一方、カクトクは営業に特化しています。受注者側の審査も、一般的な会社審査だけでなく、個人単位での営業支援の実力を審査するテストを実施しており、合格率は非常に厳しいものです。この審査をクリアした方々が率いる営業支援会社がパートナーとして活動しています。
また、課金すれば上位表示されるモデルではなく、パフォーマンスが高ければ高いほどプロの営業人材を安く使えるビジネスモデルを採用しています。これにより、質の高い営業支援を提供できることが、私たちの明確な違いであり魅力です。
── 最も得意とする業界領域や業種と、あまり合わないという分野は?
満田 強みがあるのは、検索では見つかりにくい、業界専門性や地域特性が必要なケースです。BtoBの営業課題で活用いただくことが多いですが、直近では大手企業の新規事業や子会社の営業拡大、新規参入のケースで、専門性の高い営業部隊を構築するためにご利用いただくことが増えています。
── 経営者として大切にされている価値観や考え方を教えてください。
満田 「何を成すか」にこだわり、会社を作ってきました。世の中に数多くの会社がある中で、わざわざゼロからスタートアップを作るのは、そこに明確な意義があるはずです。その意義を見失うくらいなら解散した方が良いと考えています。
弊社は「営業の働き方を変える」ことを軸足に、企業が成果を出せる仕組みと、理想的な働き方を両立させる「売れる戦略と理想的な働き方」を追求しています。
── 今後のマーケティング戦略について、注力している部分やブランド構築についても教えてください。
満田 現在、超大手企業から地方の中小企業まで幅広くご利用いただいており、ほとんどがインバウンド、お問い合わせです。今後もこのインバウンドを強化するため、タクシー広告やオンラインカンファレンス、ウェビナーなどを実施しています。
特に、上場企業や新規事業の営業戦略開発において、専門性、戦略から実行までワンストップで解決できる点を訴求し、ブランド構築を強化しています。
── プロフェッショナル側、特に営業職の方々向けのマーケティングについてはどのように考えていますか?
満田 営業職の方々にとって、カクトクは独立への登竜門のような位置づけになっています。キーエンス出身者など、優秀な営業責任者やプレイヤーが、自身のキャリアをさらに極めるために登録いただくケースが多いです。
今後は、営業職の採用支援にも力を入れていきます。独立支援はもちろん、転職も含めた多様なキャリアモデルを提案できるよう、候補者起点での転職モデル準備を進めています。これにより、営業キャリアのエコシステム推進を目指します。
── プルデンシャルやMDRTのようなフルコミッションの方も、御社で活躍できるのでしょうか。
満田 はい、エコシステムとして機能し始めています。弊社のパートナー審査を通過する方々は、企業の営業戦略提案ができ、チームを組成・マネジメントできるPMクラスの方々です。そういったハブとなる方々のチームに、スペシャリストが参画し、活躍できる仕組みがあります。
インセンティブも大きいため、一定の収入を得ながら、クライアントワークを通じて営業支援のやり方を学び、次のキャリアステップにつなげられます。
IPOは視野に。営業人材以外への進出は考えていない
── 商品・サービスの今後のブラッシュアップについて、改善点や今後の方向性を教えてください。
満田 新たに採用支援事業も始めており、企業様がビジネスを多様化させる中で、成長戦略の一環として活用いただけるようにしています。
プロフェッショナルによる営業の勝ちパターン仮説検証から、それを内製化し、ジョブ型採用へとつなげる支援を行うことで、営業戦略開発に必要なケイパビリティを丸ごと提供できる会社を目指しています。
── プロフェッショナル側、企業側から、改善してほしいという声はありますか?
満田 大企業の新規事業推進において、多様な専門性を持つブティック型営業支援チームの管理や、ポートフォリオの最適化、戦略ディスカッションといったニーズがあります。
これに対応するため、エンタープライズでの営業拡大戦略を推進してきた人材を招き、ハンズオンでの支援体制を強化していく予定です。より上流のコンサルテーションからチーム組成まで、一気通貫でご支援できる体制を構築します。
── 完全リモートとのことですが、企業文化や社員のモチベーション維持についてどのように取り組んでいますか?
満田 フルリモートを追求しているのは、「働き方を変える会社」を目指しているためです。創業初期から、地理的条件が働く場所の制約になることを解消したいと考えていました。社員には、社会的意義がありチャレンジングな事業に参画したいという思いを持つ方々が集まっています。
フルリモートという働き方を守るためにも、結果を出すことへのコミットメントが文化として根付いています。オペレーションやシステム構築はもちろん、インバウンドで集客できるモデルも構築しています。
── 将来的なIPOや今後の資金調達の計画や、調達した資金の使途についても教えてください。
満田 IPOはメインストーリーとして視野に入れています。ただし、常に幅広い選択肢を視野に入れて事業を進めていて、資金調達の可能性はあります。これまではCVCからの出資が多く、顧客基盤の強化や自社グループ企業での営業活動強化につながってきました。
今後も、グループ企業の営業ケイパビリティ強化や、顧客基盤の拡大、協業文脈での連携を深めるためのファイナンスを検討しています。
── 今後の構想、新規事業や既存事業の拡大についてはいかがですか?
満田 「営業の働き方と戦略を革新する会社」としてのプレゼンスを高めることが基本戦略です。高度な営業人材ネットワークを活かし、企業が新しい製品・サービスを市場に投入する際の強力な販売体制や販売組織を提供します。
同時に、従来型の過酷な働き方ではなく、キャリアプランを支援する現代的な働き方によって、強い営業組織を構築するモデルを、様々なソリューション形態で提供していきます。
── 営業以外の領域、たとえばマーケティングや開発、バックオフィスへの横展開についても考えていますか?
満田 基本的には考えていません。弊社は「グロースの請負人」としての会社であり、営業に特化しています。マーケティングは考えられますが、開発やバックオフィスへの展開は優先順位が低いと考えています。
営業職の方々には、カクトクが提供する新しい働き方やキャリアの選択肢を検討いただければ幸いです。特に、大企業の営業戦略開発シーンで、戦略と実行を両輪で高密度に回すことに課題を感じている方、優秀な営業人材のアサインにボトルネックを感じているなら、ぜひカクトクにご相談いただきたいです。
- 氏名
- 満田聖也(みつた せいや)
- 社名
- カクトク株式会社
- 役職
- 代表取締役

