インテリジェンス(現パーソルキャリア)の新規事業コンテストから誕生し、設立初年度から黒字を達成したのが、ミイダス株式会社。同社は、単なる求人広告ではなく、採用の「前」から「後」までを一貫支援し、ミスマッチを防ぐ独自のサービスを展開している。
社長の後藤喜悦氏は、前述の新規事業コンテストを勝ち抜いたミイダスの創業者だ。地方の中小企業が抱える課題解決への注力、そして今後のデータとAIを活用した経営支援へとつなげる未来構想を聞いた。
企業サイト:https://miidas.co.jp/
旧インテリジェンスの新規事業コンテストからスピンオフ
── これまでの事業の沿革と、現在展開している事業の紹介からお願いします。
後藤氏(以下、敬称略) 私の経歴は、まず旧インテリジェンス、現在のパーソルキャリアに従業員として勤務していました。その中で、社内の新規事業コンテストにエントリーし、提案が承認されたことがミイダスの設立背景です。
「とりあえずやってみよう」という形でスタートしましたが、初年度から黒字を達成し、売上・顧客ともに順調に増加したため、分社化しました。
ミイダスのサービスはリクルーティングですが、他のサービスと大きく異なる点は、採用「前」から「後」の従業員育成・定着までを支援していることです。単に採用するだけでなく、ミスマッチを防ぎ、入社後に活躍する確率の向上を目指しています。
具体的には、全国60万人以上(2025年6月時点)の受験者に至るコンピテンシー診断(特性診断)やバイアス診断ゲームなどを通じて、個人の特徴を定量化し、自社の「活躍要因」に合った人に直接スカウトを送ることで、活躍・定着しやすい人材をマッチングさせることが強みです。さらに、入社後の教育支援やコンディション把握のためのサーベイツールなども提供しています。
また採用活動においても、特に地方の中小企業が抱える採用難という課題に着目し、採用力やサイドブランディングの向上に注力したサービスを展開しています。求職者にとって重要な福利厚生や研修制度のサービスも一緒に提供したり、「はたらく人ファーストアワード」という、従業員を大切にしている企業を称え、その取り組みを発信するアワードを開催することで、企業の魅力を高める支援も実施。
多くの採用サービスが求人広告で「どう見せるか」に注力しがちですが、私たちは企業の採用力そのものを高め、入社後のフォローまで含めたトータルサポートを提供します。しかも、これらのサービスを、リーズナブルな価格で提供している点が、大きな違いだと考えています。
── パーソルグループという大企業内からの立ち上げということで、一般的なスタートアップとは異なるアドバンテージや、難しさ、制約などはありましたか?
後藤 メリットとしては、やはり人材が豊富にいたことが挙げられます。パーソルキャリアで経験を積んだ優秀なメンバーが志に共感し、参画してくれたことで、立ち上げ当初から高い専門性と推進力を持ったチームを築くことができました。
一方、デメリットとして当時の大企業では、アジャイル開発や「試しながら素早く改善していく」といったスタートアップ的なスピード感やプロセスが、理解されづらかった場面もありました。
現在では大企業でもこうした考え方が浸透してきていますが、10年前は違いました。我々が「低コストで試してみよう」と提案しても、数字がない段階では精度の高い計画を求められることが多く、計画と実績の差異について丁寧に説明するための時間やプロセスが必要となることがありました。
私は可能な限り前向きに取り組んでいましたが、当時はこうした進め方が一般的ではなかったこともあり、周囲からは「慎重に進めるべきではないか」「少し踏み込みが早いのではないか」といった見方をされることもありました。
今では小さな検証を重ねながら改善していく手法が広く受け入れられていますが、当時はまだ過渡期であり、その点にもどかしさを感じていたことを覚えています。
あえて「定額制」を採用した理由とは?
── 事業構想やサービス開発の背景には、何があったのでしょうか?
後藤 私自身、人材業界で広告営業や人材紹介の営業を長く経験し、法人側の視点でも、自身が転職する際の視点としても、「使いづらさ」のようなものを感じていたのです。また、友人や知人から転職相談を受ける中で、彼らが抱える悩みを聞き、共感する場面も多くありました。
そういった経験を蓄積させていった結果、生まれたのが現在のミイダスの事業モデルです。「(当時は)みんな同じサービスで、進化も全くしていない」という課題意識から、それを解決できるサービスとしてミイダスが生まれました。
── 具体的な事業内容を教えてください。採用サービスにおいて、成果報酬型や従量課金型が多い中で、あえて定額制に踏み切った理由は何でしょうか?
後藤 定額制にした理由はいくつかあります。
まず、「採用にそこまで多くのお金をかける必要はないのではないか」という課題意識がありました。媒体選定や費用対効果の検証には膨大な時間がかかるため、私たちは、もっとシンプルに「これ一つで良い」と思えるような、安価でわかりやすく、かつ効率的に成果につながるサービスを提供したいと考えました。
実際に、多くの企業では年間で採用する人数は限られており、従来の料金モデルでは「時間を費やして活動しても、受注できない」状況が営業現場で生まれていました。大量採用を前提としない企業にとって、採用費は限定的になります。それであれば、その実態に合わせて年間定額で使える設計にした方が、顧客にとってもわかりやすく、私たちとしても営業・運用コストを下げながら継続的な価値提供ができると考えました。年間で一定の金額でご利用いただける仕組みにすることで、日常的な採用活動はもちろん、突発的に必要となった採用にもスピーディーに対応し、しっかりと成果を出せるサービスとして提供するべきだと判断しました。
その中には、レッドオーシャンである大手企業との取引に固執するのではなく、まずは裾野の広い中小企業市場に注力するという戦略も含まれています。
── 中小企業市場で強力なポジションを築かれていますが、今後は大企業へのアプローチも強化されていくのでしょうか?
後藤 はい、今後は強化をしていきます。お陰様で商品力が向上していて、大量採用するお客さまにもご満足いただける力がついてきてます。大量採用されている企業様の満足度やリピート率が急激に向上しています。特に、必要スキルや経験を事前設定するだけで該当候補者へ自動でスカウト送信できる「スカウトプラス」サービスがかなり好評です。
そういった企業は、入退社も頻繁に起こり採用以外の付帯機能が求められることも多いため、ミイダスのサービスが有効だと考えています。
効率的、数値的効果の高い採用を実現できる背景
── 現在は売り手市場が続いていますが今後、市場が変化した場合、どのように対応しますか。
後藤 前提としては、今後も売り手市場が続くと予想されます。特にエッセンシャルワーカーの需要が増加する一方で、ホワイトカラーの求人は相対的に減少し、転職しにくくなる可能性があります。
私たちはそうした中で、転職意欲は高くないものの「良い話があればしたい」という潜在層を掘り起こし、流動化させることに注力したいと考えています。
具体的には潜在層に直接アプローチし、「あなたとどうしても会いたいという会社があります」と面接を提案しています。意外なことに、こうしたアプローチから実際に転職が決まるケースが増えているのです。興味がなかった層からも、応募を獲得できているということです。
一方で、自発的に応募する層からの応募数は減っていません。これは、電話でアプローチした層は、もともと自発的な応募をしない層であり、我々が新たな層を開拓できていることを示しています。これにより、単純に顧客基盤が倍増している状況です。
従来の転職サービスでは現職との比較でしかアピールできないケースが多いですが、ミイダスでは特定の企業への入社可否というシンプルな意思決定に絞り込むことで、内定からの決定率を高めています。
これは、他の人材紹介サービスや媒体では難しい点であり、私たちの強みだと考えています。
── テレビCMなどのマス広告にも力を入れていますが、その狙いと反響について教えてください。
後藤 数年前にテレビCMを開始した当初の狙いは、地方の中小企業にもミイダスのサービスを届けたいという思いからでした。多くの採用サービスが都市部中心に展開する中、地方の企業が抱える採用課題を解決できるミイダスを、最も効率的に届けられるメディアがテレビでした。
クリエーティブにも工夫を凝らし、結果として競合他社よりも1.5倍から2倍の成果を上げています。これにより、ミイダスの認知度向上に大きく貢献しました。
現在では、WEB広告やトラックアド、電車車両内広告の展開、展示会への出展など、マス広告を単なる広告投資としてではなく、社会的な意義やコンテキストを広げるための手段として活用しています。
「はたらく人ファーストアワード」のような取り組みも、PRと組み合わせることで、より大きな反響を生み出しました。単にお金をかけて多くの人にリーチするだけでなく、媒体の特性を活かし、社会的な意義を共有していくマーケティング戦略を展開しています。
── 現在約600人規模にまで組織を拡大する中で、どのような課題に直面し、それをどのように乗り越えたのでしょうか?
後藤 組織拡大に伴って生じた課題は、多くの企業が直面するものと同様でした。30人、50人、100人という節目ごとに、新たな壁にぶつかったということです。
私たちは、従来型のマネジメント手法にとらわれず、新しい組織運営を模索してきましたが、実際には思うような成果につながりませんでした。しかしこの結果、どちらか一方に振り切るのではなく、両者の良いところを適切に組み合わせること、また、身の丈以上の成長計画に固執せず、組織が壊れる前にあえてスピードを緩める勇気を持つことの重要性を学びました。
組織拡大の過程で大きな壁にぶつかった先輩方の経験も、順調に拡大していった先輩方の経験も、どちらも参考にすべきだと考えています。そこから得られる示唆は、単なる成功・失敗事例ではなく、自社の組織にとって「ちょうどよい成長」を見定めるための視点そのものだからです。
データとAIを活用しサービスの進化へ
── 今後の商品・サービスの改善点や、ブラッシュアップの方向性について教えてください。
後藤 採用活動において、特に希少価値の高い人材の採用は難易度が高く、相場観が重要になります。ミイダスでは、独自のデータ解析により、求人票の設計から応募促進まで、AI等も活用して効率的に、最適な採用プランニングができます。さらに採用後の定着、活躍、エンゲージメント向上までのサービス提供を目的としています。
私たちは、面接における建前としての思いだけでなく、エージェントを介した本音でのコミュニケーションを促進することで、ミスマッチを減らし、効率的な採用を目指していきます。
さらに、ミイダスはリクルーティングデータに加え、勤怠、従業員データ、研修データ、評価データなど、多岐にわたるデータを保有しています。今後はこれらのデータをAIで分析し、人材配置や育成、昇格の判断などに活用することで、より精度の高い経営支援を提供できると考えています。
人間の能力だけでは限界がある部分を、AIとデータで補完し、企業の人材に関する課題解決を包括的に支援していくことが私たちの目指す未来です。
── 最後に、今後の未来構想についてお聞かせください。採用・転職領域に限定しない、より広いビジョンをお聞かせいただけますでしょうか。
後藤 経営において最も重要かつ扱いが難しいのは「人」に関わる部分だと考えています。資金調達や顧客獲得も重要ですが、採用、育成、定着、生産性向上といった「人」に関する課題は、常に発生し、解決が難しいものです。ミイダスは、これらの課題を解決し、包括的に支援できるサービスを目指しています。
具体的には、心理学や行動経済学といった人間科学の知見をデータ分析と組み合わせ、従業員のモチベーション向上や、適切な評価・フィードバックの仕組みを提供していきます。
たとえば、評価制度が曖昧(あいまい)なまま昇格が行われるケースも少なくありませんが、私たちは科学的根拠に基づいた働きがいを高める制度設計を支援していきます。将来的には、経営者が「人」にまつわるあらゆる課題をミイダスに任せていただき、我々とともに自社の魅力を高めていく「採用強化ブランディング」を提供していきたいと考えています。
- 氏名
- 後藤喜悦(ごとう きえつ)
- 社名
- ミイダス株式会社
- 役職
- 代表取締役社長

