保育ICT市場で圧倒的なシェアを誇る株式会社コドモン。代表取締役CEOの小池義則氏に、独自の開発手法と、初期の販売不振を乗り越えた「デジタルマーケティングの種まき」など、成功の裏側にある戦略を聞いた。
「ミッション・ビジョンに沿った中長期的な運営」を成長の基盤とし、業界のスピード感に合わせて成長を実現した同社は、少子化という逆風の中、どのようにリスクに立ち向かい「子育てエコシステム」の構築を目指すのか。その未来戦略を追う。
企業サイト:https://www.codmon.co.jp/
目次
最初は学校法人向けのサイト・アプリ開発から着手
── 創業期のコドモンはどのような企業だったのでしょうか?
小池氏(以下、敬称略) もともとは、今とはまったく異なる事業からスタートしました。創業当初は、ホームページやチラシ、名刺といった販促物の制作を受託する会社として、個人事業主から始めました。
── その後、現在の保育事業へと舵を切ったわけですね。
小池 はい、たまたま地域向けのポータルや学校の保護者向け連絡ツールの受託開発案件のお話をいただいたことをきっかけに、保育・教育領域に関する知見が高まり、それが現在のプロダクトにつながっています。徐々に受託から自社プロダクトへとフェーズが移り、学校法人などの案件を通して業務支援機能を強化していったことが、コドモン誕生のきっかけとなりました。
事前に種まきしたデジタルマーケが追い風に
── 受託開発中心の経営から自社プロダクトの展開へと進むにあたり、事業を一本化するという大きな決断があったかと思います。葛藤や、何かを捨てるような判断はあったのでしょうか?
小池 受託事業は、要件・見積・納期が明確で、クライアントの要望に沿った仕様で開発・納品すれば、確実に収益化できる安心感があります。一方で、自社プロダクトは自ら仕様を決め、プライシングを行い、マーケティングやカスタマーサクセスまで一から設計する必要があります。売れるかどうか分からない恐怖と向き合いながら、受託とのバランスに葛藤する日々を過ごしました。それでも顧客の声を元に少しずつ改善を重ね、昼は受託事業に時間を使い、夜はプロダクトを磨き続けていきました。
幸運なことに、コドモン自体は受託で開発したプロダクトがベースとなっていることもあり、初期の投資負担は比較的小さく進められた面もあります。
ところが、いざ販売を開始しても当初は全く売れませんでした。私自身、営業経験は長いものの得意というわけではありませんでした。
当時の保育園は、待機児童がどんどん増える中で、職員の確保が大きな課題であり、使い慣れるまでに少なからず現場の負担増になりうるICTツールの導入には消極的でした。園内にPCやITインフラの整備もされている状況でもなかったので、ICT導入のハードルは今よりも高い状況でした。
── 2016年ごろの補助金制度の開始は、追い風になったのでしょうか?
小池 はい、非常に大きかったと感じています。公的な支援や制度の変化が市場の採用を後押しする局面があり、他社以上にデジタルマーケティングに早期から注力していたことが成長に寄与しました。保育園が補助金制度を機にウェブで「保育園ICT」といったわかりやすいキーワードで検索すると、コドモンが上位表示され問い合わせにつながる、という流れができたことが、事業成長の後押しになりました。
「迅速な開発」「無理ない事業の進行」で成長へ
── 現在、業界シェアでナンバーワンといえるほどのポジションを築かれていますが、強みや成長を支えているものを教えてください。
小池 一番大切にしたのは、ミッション・ビジョンをしっかりと設計し、それに沿って中長期的な視点で運営してきたことです。
そして市場規模や顧客特性を踏まえ、保育ICT市場に特化して注力してきたことが差別化の要因になっています。
また、ローコスト経営や生産性重視の組織運営を心がけ、着実に事業を進めてきました。
特にセールス・マーケティングについては、過度に人材や予算を投下すること無くプロセスの標準化や効率化を図ることで生産性を高めています。
これらによって、普及拡大に対して無茶な投資はせずに、あくまで業界のスピード感に合った成長ができたと考えています。
── サービス、プロダクトの強みは何ですか?
小池 オールインワンの機能設計や現場の声を反映した改善サイクルの速さが強みです。私自身がマーケティングやデザイン、UI開発に携わってきたため、現場の声を聞き、その日のうちに実装するということも頻繁に行いました。
そのため、業界からは「現場のことを理解し、フットワーク軽く対応してくれる会社」という印象を持っていただけたのだと思います。もちろん、プロダクトの品質として一流とはいえなかった時期もありましたが、会社の仕組みや対応力でそれを補ってきました。
少子化など回避できないリスクにどう立ち向かうのか?
── 保育事業では少子化というリスクがありそうですが……。
小池 はい、少子化は避けられない課題です。中長期的には、保育園などのこども施設の利用者数は減っていくことが見込まれるため、ビジネスモデルの多角化と市場領域の拡大が必要になります。
政策動向やガバナンス、セキュリティは重要な論点であり、高いレベルのセキュリティとガバナンス体制を構築することを経営上の重要課題と位置づけています。
── そうしたリスクに対する対策は何でしょうか?
小池 こども施設、保護者、自治体の3者を大きな柱として捉え、それぞれとの連携を強化しています。少子化で保育園の絶対数が減ることがあったとしても、子育て市場全体はまだ拡大の余地があると考えています。
児童発達支援施設、学童、小学校など、子どもの育ちや学びに関わる多様な施設への貢献も視野に入れ、目指すのは、DXを推進できるプラットフォーマーとして市場拡大を牽引していく存在になることです。
── 経営者としてのこだわりや、大切にされていることは何ですか?
小池 社会的価値と経済的価値のバランスです。経済的価値は社会的価値を発揮するための手段であり、常に社会的価値を目的として意識しながら、両者のバランスを取ることが重要だと考えています。
また、ミッションドリブンな組織文化の形成にも注力しています。これにより、コミュニケーションがスムーズになり、心理的安全性が高く、部門間の協調が非常にしやすい環境が生まれています。採用や評価の方針も整えている一方で、バックオフィスや組織体制の強化も進め、事業成長に見合う組織運営を目指しています。
toB、toC、toGそれぞれで事業拡大を目指す
── 今後の資金調達やIPOの可能性について教えてください。
小池 資金調達は事業戦略に応じて柔軟に対応する方針です。IPOは手段のひとつであり、必要が高まれば検討する可能性がありますが、現時点での優先事項は持続可能かつ非連続な事業成長の実現です。
── さまざまなステークホルダーがいる中で、今後の事業拡大はどう考えていますか?
小池 BtoB領域では、保育施設を中心に普及促進を進めつつ、保育以外の子育て・教育領域へのサービス展開も進める考えです。
BtoC領域では、保護者向けサービスの利便性向上に注力し、サービス間連携の強化などでユーザー体験の向上に努めます。
BtoG(GはGovernment。行政)領域では、自治体と連携し、公的サービスへの貢献を目指します。こども施設、保護者、自治体それぞれの課題を解決し、周辺ステークホルダーを巻き込みながら、子育てエコシステムを構築していくことが経営戦略の柱となります。
海外展開も、日本の知見を活かせる地域を中心に可能性を検討しています。
- 氏名
- 小池義則(こいけ よしのり)
- 社名
- 株式会社コドモン
- 役職
- 代表取締役CEO

