新型コロナの検査試薬で大ブレに

宝ホールディングスは1842年に京都の伏見で日本酒の生産を始めたのが始まり。その後、焼酎やみりんを製造し事業の基盤を作ったあと、数多くのM&Aで業容を拡大していった。

同社の沿革によると、1926年に帝国酒造の合併を皮切りに、3年後の1929年には東京と広島の酒造会社を合併、さらに5年後の1934年にはワインメーカーなども買収した。

しばらく間が空いて2013年に英国の日本食材卸会社を子会社化した後は、再びM&Aを活発化。2014年にスペインの日本食材卸会社を、2016年にポルトガルの日本食材卸会社を、2017年にオーストラリアの日本食材卸会社を、2020年に日本の食料品卸会社を相次いで子会社化。このあと、この1年ほどで4件のM&Aへとつながっていく。

こうした取り組みもあり、売り上げは順調に推移している。コロナ禍の影響で飲食店向けの酒類販売が落ち込んだ2021年3月期に減収になったものの、2024年3月期は3期連続の増収を見込む。

2024年3月期第1四半期に、ソフトアルコール飲料や、本みりん、原料用アルコールなどが増収となったほか、海外酒類事業、海外日本食材卸事業も好調に推移していることから、2024年3月期の全社売上高は前年度比1.2%増の3550億円を予想する。

一方、利益の方は厳しい状況にある。2023年3月期に営業減益となったのに続き2024年3月期も2期連続の営業減益が避けられない状況だ。

2022年3月期に、タカラバイオグループで開発した新型コロナウイルスのPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査関連試薬が大幅に伸び、タカラバイオによる営業利益は289億200万円に達した。同期の全社の営業利益は433億5400万円(前年度比2倍)だったため、タカラバイオが全体の3分の2を稼ぎ出した計算になる。

ところが、新型コロナウイルス感染症の法令上の位置づけが2類から5類に変更になったことなどから、検査関連試薬の販売が減少。2024年3月期第1四半期の営業利益は4億2300万円と前年同期に比べ90.7%減少した。こうしたことから2024年3月期の全社の営業利益は30.7%減の264億円に留まる見通しだ。

ただ、新型コロナという特殊な要因を除けば、2021年3月期の215億9500万円から2024年3月の264億円へと、緩やかな増益のグラフを描くことができる。

M&A Online
(画像=「M&A Online」より引用)