この記事は2025年12月19日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「上昇続くマンション価格、高所得層需要や投機規制が今後のカギ」を一部編集し、転載したものです。


上昇続くマンション価格、高所得層需要や投機規制が今後のカギ
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

首都圏のマンション価格の上昇が続いている。不動産経済研究所によると、首都圏の新築マンション価格は約1億円で推移しているほか、東日本不動産流通機構によれば、中古マンションの新規登録価格が約6,000万円へと上昇した。これは、2022年と比べて新築マンション価格は46%、中古マンションの新規登録価格は47%、それぞれ上昇したことになる。

都心マンション価格の急騰を受け、千代田区は不動産協会に対し、居住実体のない投機目的でのマンション取引への規制を要請した。こうした都心部を中心とした売買規制・対策に加え、金利の上昇などもあり、マンションバブルが崩壊するのではないかとの議論も活発化している。

そこで、マンション市況の実態を不動産情報システムのレインズの首都圏中古マンションデータから確認してみると、成約件数は着実に増加していることがうかがえる。また、25年は成約率(成約件数/前月在庫件数)も各県で改善が続いており、現時点で市況悪化の兆候は見られない。成約価格は図表のとおり、東京で顕著な上昇が続く一方、他の3県では25年9月までに頭打ちしているが、価格面で大幅下落の兆しはない。

なお、首都圏のマンション価格は、世界の他の主要都市と比べて高水準とはいえない。海外の不動産情報サイト「Global Property Guide」によると、東京圏の住宅価格に対して、ニューヨークは5.5倍、ロンドンは3倍であり、アジアの都市でも、香港は6.5倍、シンガポールは4.3倍となっている。

一方で、懸念点もある。首都圏の中古マンション価格上昇を主導している東京都心3区の成約価格は1億3,500万円に達しているが、在庫(募集)の平均価格は成約価格を5割以上上回る2億円だ。22年には成約と在庫の価格差がなかったことや、世帯所得以上に価格が上昇していることを加味すると、今後、在庫価格の急騰に需要が追い付かなくなる可能性もありそうだ。

海外企業も、東京の現在のマンション価格に警鐘を鳴らしている。UBSは世界不動産バブル指数をもとに、東京を世界の主要都市で2番目にリスクが高い住宅マーケットに指定した。だが、これは価格上昇(需要増加)の裏返しでもあり、実際に過去1年間に東京は主要都市で3番目に高い価格上昇率だった。

中古マンション市況データを見る限り、首都圏全体としてマンション価格の急落がすぐに起きる状況にはない。ただし、東京都心3区については、成約率の急上昇を投機的売買が牽引している可能性もありそうだ。今後の市場の成長には、投機的取引の抑制に加え、高所得層や外国人投資家の健全な需要増のほか、世帯所得や家賃の上昇がカギとなりそうだ。

上昇続くマンション価格、高所得層需要や投機規制が今後のカギ
(画像=きんざいOnline)

大和不動産鑑定 主席研究員/竹内 一雅
週刊金融財政事情 2026年1月6日号