この記事は2026年1月20日に配信されたメールマガジン「アンダースロー:財政不安ではなくイールドカーブの正常化による超長期金利の上昇」を一部編集し、転載したものです。

アンダースロー
(画像=years/stock.adobe.com)

目次

  1. 財政不安ではなくイールドカーブの正常化による超長期金利の上昇

財政不安ではなくイールドカーブの正常化による超長期金利の上昇

  • 日銀は、2%の物価安定目標が持続的に達成される経済の「正常化」が見通せるからこそ、利上げによる金融政策の「正常化」を進めている。金融政策に続いて、イールドカーブの「正常化」の動きが起きている。超長期金利(国債30年金利)の上昇は、将来的な名目GDP成長率の期待が、これまでの0-1%から3%台に上昇したことを反映する動きであった。超長期金利は、名目GDP成長率の12四半期移動平均を追っているように見える。

  • 衆議院の解散を決断した高市首相は、これまでの「行き過ぎた緊縮財政の呪縛を乗り越え」、「責任ある積極財政」として、「経済政策を大転換する」ことを示した。「行き過ぎた緊縮志向」を抵抗勢力とした。6月の骨太の方針に向けて、高市政権の積極財政への大転換の動きは全くブレておらず、衰えていない。「行き過ぎた緊縮財政の呪縛」は、ネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)が消滅し、日本経済が膨らめなくなるものだった。

  • 財政政策の「大転換」の積極財政によって、官民連携の成長投資の拡大で、ネットの資金需要を十分なマイナスとする期待が生まれれば、超長期金利が更に上昇してきたのは自然な動きだ。2%の物価目標対比で実質長期金利がマイナスを脱するように、長期金利(国債10年金利)が2%超となったのも自然な動きだ。昨年の上昇は、超長期金利が先、株価が後であったが、今年の上昇は、積極財政を既に織り込んできた株価が先、超長期金利が後となったと言える。

  • 超長期金利(国債30年金利)のマクロ・フェアバリューは、名目GDP(前年比、12QMA)、企業貯蓄率と財政収支を合わせたネットの資金需要(対GDP比%、マイナスが強い)、日銀の長期国債買入れ額、米国債10年金利、緩和的金融政策のコミットメントの強さを表すダミー変数で推計できる。「行き過ぎた緊縮財政の呪縛」によってネットの資金需要が消滅した0%であれば、超長期金利のマクロ・フェアバリューは3.7%となる。財政政策の「大転換」の積極財政によってネットの資金需要が-2.5%となった場合、超長期金利のマクロ・フェアバリューは4.1%となる。現状はこの間にあり、財政不安によって上昇したとは言えず、経済の「正常化」を織り込んだ水準であると言える。


日銀は、2%の物価安定目標が持続的に達成される経済の「正常化」が見通せるからこそ、利上げによる金融政策の「正常化」を進めている。金融政策に続いて、イールドカーブの「正常化」の動きが起きている。日銀の政策金利の影響が小さい超長期金利(国債30年金利)に先行して動きが出てきた。昨年、超長期金利が大きく上昇した。この上昇は、将来的な名目GDP成長率の期待が、これまでの0-1%から3%台に上昇したことを反映する動きであった。超長期金利は、名目GDP成長率の12四半期移動平均を追っているように見える。石破ディスカウントで下押しされていた株式市場が、石破首相の退陣への動きによって上昇し、超長期金利の上昇に追随した。結果として、超長期金利の上昇は、財政不安ではなく、経済の「正常化」を織り込む「良い金利上昇」であったことが明らかとなった。2%の物価目標対比で実質長期金利がマイナスを脱するように、長期金利(国債10年金利)が2%超となったのも自然な動きだ。

衆議院の解散を決断した高市首相は、これまでの「行き過ぎた緊縮財政の呪縛を乗り越え」、「責任ある積極財政」として、「経済政策を大転換する」ことを示した。「行き過ぎた緊縮志向」を抵抗勢力とした。6月の骨太の方針に向けて、高市政権の積極財政への大転換の動きは全くブレておらず、衰えていない。この財政政策の「大転換」を、超長期金利は織り込み始め、更に上昇している。「行き過ぎた緊縮財政の呪縛」は、ネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)が消滅し、日本経済が膨らめなくなるものだった。財政政策の「大転換」の積極財政によって、官民連携の成長投資で、ネットの資金需要を十分なマイナスとする期待が生まれれば、超長期金利が更に上昇してきたのは自然な動きだ。昨年の上昇は、超長期金利が先、株価が後であったが、今年の上昇は、積極財政を既に織り込んできた株価が先、超長期金利が後となったと言える。

超長期金利(国債30年金利)のマクロ・フェアバリューは、名目GDP(前年比、12QMA)、企業貯蓄率と財政収支を合わせたネットの資金需要(対GDP比%、マイナスが強い)、日銀の長期国債買入れ額(対GDP比%)、米国債10年金利、緩和的金融政策のコミットメントの強さを表すダミー変数(2016年4-6月期から2024年10-12月期まで1、2025年1-3月期から7-9月期まで0.75、他は0とする)で推計できる。「行き過ぎた緊縮財政の呪縛」によってネットの資金需要が消滅した0%であれば、超長期金利のマクロ・フェアバリューは3.7%となる。財政政策の「大転換」の積極財政によってネットの資金需要が-2.5%となった場合、超長期金利のマクロ・フェアバリューは4.1%となる。現状はこの間にあり、財政不安によって上昇したとは言えず、経済の「正常化」を織り込んだ水準であると言える。

図1:名目GDP成長率と国債30年金利

名目GDP成長率と国債30年金利
(出所:ブルームバーグ、内閣府、クレディ・アグリコル証券)

図2:日経平均株価と国債30年金利

日経平均株価と国債30年金利
(出所:ブルームバーグ、クレディ・アグリコル証券)

図3:ネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)

ネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)
(出所:日銀、内閣府、クレディ・アグリコル証券)

図4:国債30年金利のマクロ・フェアバリュー

国債30年金利のマクロ・フェアバリュー
(出所:日銀、内閣府、ブルームバーグ、クレディ・アグリコル証券)

会田 卓司
クレディ・アグリコル証券 東京支店 チーフエコノミスト
松本 賢
クレディ・アグリコル証券 マクロストラテジスト

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