この記事は2026年1月23日に配信されたメールマガジン「アンダースロー:政府の強い経済成長と日銀の息の長い成長の差」を一部編集し、転載したものです。
政府の強い経済成長と日銀の息の長い成長の差
2026年は、日銀の政府との連携が試される年になると考えられる。高市政権は、政府の経済政策の基本方針と整合的な金融政策を求める日銀法第4条を重要視しているからだ。政府の経済政策の基本方針は、「高圧経済」と「官民連携の成長投資」である。11月12日の高市政権で初の経済財政諮問会議では、高市首相は植田日銀総裁の前で、「今後の「強い経済成長」と「安定的な物価上昇」の両立の実現に向けて、適切な金融政策運営が行われることは非常に重要である」と発言し、日銀に事実上のデュアル・マンデートを課した。
植田日銀総裁の発言にも、政府との連携を意識した変化がみられる。植田総裁は、2%の物価安定目標の実現とともに、「息の長い成長」につなげる金融政策運営に言及をし始めているからだ。物価だけを見るシングル・マンデートから、物価と成長の両方を見るデュアル・マンデートへの変化の動きだろう。1月の展望レポートでは、政府の経済対策の効果も織り込み、2026年度の実質GDP成長率の見通しを、+0.7%から+1.0%へ、引き上げた。2027年度の見通しは+1.0%から+0.8%と下方修正した。+0.5%の潜在成長率を上回る動きが続く予想となっている。
政府の2026年度の実質GDP成長率の見通しは+1.3%となっていて、1%を超える成長を「強い」と考えているとみられる。日銀の予想は「緩やかな成長」で、2026年度と2027年度の平均で+0.9%と低い。衆議院選挙に勝利をすれば、政治的求心力が高まり、高市政権は6月の骨太の方針で、これまでの財政再建優先から、責任ある積極財政と官民連携の成長投資の拡大へ、経済政策の方針を大胆に転換することができ、経済成長率を押し上げようとしている。高市首相の「強い経済成長」と植田総裁の「息の長い成長」の認識に差があることが両者の発言に表れている。
昨年12月の利上げの後、1年間は利上げが止まり、「高圧経済」と「官民連携の成長投資」の政府の経済政策の基本方針を、日銀は支援していくことになる見通しに変更はない。家計のファンダメンタルズの悪化によって、需要の価格弾力性が高まり、値上げには防衛的な購入数量の減少で反応するようになってきている。2026年は、インフレ率は減速する局面にあり、利上げを遅らせるコストは小さいと判断するだろう。次の利上げは2026年12月となるだろう。
利上げをしなくても、インフレ率が減速するのであれば、利上げを焦る意義は小さい。2025年までの、インフレ率が加速して、高止まった局面で、日銀が利上げに前のめりになったのとは大きく違う状況だ。インフレ率が減速すれば、実質政策金利は、日銀の利上げがなくても、マイナス幅が縮小していく。日米の実質金利差は縮小していく動きとなり、過剰な円安圧力も減退していくとみられる。
1月の金融政策決定会合で、日銀は政策金利(無担保コールレートオーバーナイト物)を0.75%に据え置いた(8対1、反対:高田審議委員)。2026年は、日銀の政府との連携が試される年になると考えられる。高市政権は、政府の経済政策の基本方針と整合的な金融政策を求める日銀法第4条を重要視しているからだ。政府の経済政策の基本方針は、「高圧経済」と「官民連携の成長投資」である。11月12日の高市政権で初の経済財政諮問会議では、高市首相は植田日銀総裁の前で、「今後の「強い経済成長」と「安定的な物価上昇」の両立の実現に向けて、適切な金融政策運営が行われることは非常に重要である」と発言し、日銀に事実上のデュアル・マンデートを課した。
植田日銀総裁の発言にも、政府との連携を意識した変化がみられる。植田総裁は、2%の物価安定目標の実現とともに、「息の長い成長」につなげる金融政策運営に言及をし始めているからだ。物価だけを見るシングル・マンデートから、物価と成長の両方を見るデュアル・マンデートへの変化の動きだろう。1月の展望レポートでは、政府の経済対策の効果も織り込み、2026年度の実質GDP成長率の見通しを、+0.7%から+1.0%へ、引き上げた。2027年度の見通しは+1.0%から+0.8%と下方修正した。+0.5%の潜在成長率を上回る動きが続く予想となっている。
政府は、「需給ギャップは0%近傍となったが、景気は十分に強くなく、地方や中小企業まで景気回復の実感はまだ広がっていない」との認識で、景気を強くする経済対策を決定した。政府の考えの通りに、潜在成長率を上回る動きが続けば、政府の経済政策の方針の通りに、需給ギャップは0%から上の「高圧経済」の状況に変化していく。ただ、政府の2026年度の実質GDP成長率の見通しは+1.3%となっていて、1%を超える成長を「強い」と考えているとみられる。日銀の予想は「緩やかな成長」で、2026年度と2027年度の平均で+0.9%と低い。衆議院選挙に勝利をすれば、政治的求心力が高まり、高市政権は6月の骨太の方針で、これまでの財政再建優先から、責任ある積極財政と官民連携の成長投資の拡大へ、経済政策の方針を大胆に転換することができ、経済成長率を押し上げようとしている。高市首相の「強い経済成長」と植田総裁の「息の長い成長」の認識に差があることが両者の発言に表れている。この差は、日銀とのコミュニケーションに対して、政府の不安を生み、今年の2名の政策委員会審議委員の人事では、利上げに慎重な候補を政府は任命することにつながるだろう。
高市政権は、官民連携の成長投資と「高圧経済」で、企業の国内支出を拡大し、企業を異常な貯蓄超過(プラスの貯蓄率)から正常な投資超過(マイナスの貯蓄率)に回復させ、日本経済をコストカット型から投資・成長型に移行させるマクロ戦略をとっている。異常なプラスの企業貯蓄率が、企業の国内支出(投資・賃金)の不足として、日本経済の構造的な停滞・デフレ圧力となっている。企業の貯蓄率は、2023年7-9月期から+4%前後で硬直していて、企業の国内支出は十分に増えていない。2024年3月の日銀のマイナス金利政策の解除からの拙速な利上げで、企業が国内投資を抑制してしまっている結果とみられる。昨年12月の利上げの後、1年間は利上げが止まり、「高圧経済」と「官民連携の成長投資」の政府の経済政策の基本方針を、日銀は支援していくことになる見通しに変更はない。
家計のファンダメンタルズの悪化によって、需要の価格弾力性が高まり、値上げには防衛的な購入数量の減少で反応するようになってきている。これまでは、コロナ後の財政拡大で家計に回した資金があり、需要の価格弾力性は低く、大きな値上げが許容されてきた。2026年は、インフレ率は減速する局面にあり、利上げを遅らせるコストは小さいと判断するだろう。次の利上げは2026年12月となるだろう。12月のコアコア消費者物価指数(生鮮食品・エネルギー除く)は、前年同月比+2.9%と、7月の+3.4%のピークから既に減速してきている。2026年度の後半には1%台前半まで減速するだろう。利上げをしなくても、インフレ率が減速するのであれば、利上げを焦る意義は小さい。2025年までの、インフレ率が加速して、高止まった局面で、日銀が利上げに前のめりになったのとは大きく違う状況だ。インフレ率が減速すれば、実質政策金利は、日銀の利上げがなくても、マイナス幅が縮小していく。日米の実質金利差は縮小していく動きとなり、過剰な円安圧力も減退していくとみられる。
図1:企業貯蓄率と需給ギャップ
出所:内閣府、日銀、クレディ・アグリコル証券)
図2:企業貯蓄率と消費者物価
図3:日銀の政策金利
図4:日米の実質政策金利
出所:総務省、BLS、Bloomberg、クレディ・アグリコル証券)
図5:日銀の見通し
図6:CACIBの見通し(経済対策の効果を織り込む)
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