この記事は2026年1月23日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「中立金利に近づくなか、BOEの利下げ判断はより困難に」を一部編集し、転載したものです。


中立金利に近づくなか、BOEの利下げ判断はより困難に
(画像=Ksu_Sha/stock.adobe.com)

2025年12月に行われた金融政策委員会で、イングランド銀行(BOE)は3会合ぶりに0.25%ポイントの利下げを実施した(図表)。声明文には「現状のエビデンスに基づくと、政策金利は緩やかな低下傾向を続ける可能性が高い」と明記され、現行の利下げサイクルを継続していく意向が示唆された。

英国経済の足元までの状況を見ると、景気拡大ペースに陰りが見られる。25年7~9月期の実質GDP成長率は、前期比0.1%増とわずかなプラスにとどまった。月次GDPは10月以降も横ばい圏で推移し、成長は頭打ちとなっている。

労働市場は悪化が進み、25年8~10月の失業率は5.1%と21年以来の高さに達した。消費者物価指数(CPI)は依然としてBOEが目標とする前年比2%増を上回っている。しかし、景気拡大ペースの鈍化や労働市場の軟調さによりインフレ圧力は和らいでおり、これが利下げ継続の根拠になっている。

英国政府が11月に発表した秋季予算も、BOEの追加利下げを後押しするとみられる。秋季予算には生活費高騰対策として光熱費抑制策などが盛り込まれ、予算責任局の試算によれば、26年度のインフレ率は0.4%ポイント押し下げられる。

ただし、BOEの内部では引き続き、インフレ率の高止まりに対する一定の警戒感が残る。金融市場では事前にほぼ確実視されていた12月の利下げにおいても、9人中4人の委員が、金利を据え置くべきとして反対票を投じた。

労働市場の悪化により、賃金やサービス価格の上昇圧力が和らいでいることは、BOE内部でおおむねコンセンサスが得られている。しかし、利下げに慎重な委員は、労働需給が緩和しても、賃金上昇率やサービス価格の伸びが想定どおりに低下しないことを懸念する。実際、賃金・サービス価格の伸びはピークアウトしつつも、依然として前年比4%台の高い伸びが続く。タカ派的なスタンスの委員が追加利下げに賛同するためには、賃金やサービス価格のさらなる減速が確認される必要がある。

加えて、利下げで政策金利の水準が低下したことで、追加利下げの判断はより難しくなっている。12月の金融政策委員会で一部の委員は「現在の金利水準がすでに引き締め的ではない可能性がある」との見方を示し、金利の据え置きを主張した。こうした主張を踏まえ、声明文には「さらなる政策緩和の判断は、より際どいものになることが予想される」との表現が追加された。

以上から、BOEは26年も利下げサイクルを続ける可能性は高いが、利下げは慎重なペースで進められよう。今後、政策金利が中立金利へと近づくなか、利下げ終了に向けて市場とどのようにコミュニケーションを取っていくのかが注目される。

中立金利に近づくなか、BOEの利下げ判断はより困難に
(画像=きんざいOnline)

大和総研 ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト/橋本 政彦
週刊金融財政事情 2026年1月27日号