この記事は2026年1月30日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「所得格差は拡大傾向も、社会保障や税の再分配機能に一定の効果」を一部編集し、転載したものです。


所得格差は拡大傾向も、社会保障や税の再分配機能に一定の効果
(画像=takasu/stock.adobe.com)

(厚生労働省「令和5年 所得再分配調査報告書」)

2025年12月に厚生労働省が公表した「令和5年所得再分配調査」。この調査は、社会保障制度における給付と負担および租税制度における負担が、所得の分配にどのような影響を与えているかを明らかにしたもので、今後の政策立案の基礎資料にされる。おおむね3年ごとに実施されるが、前回調査(23年)はコロナ禍の影響により1年遅れたため、今回は2年ぶりの調査となる。

雇用者所得や事業所得、財産所得、雑収入、私的給付(仕送り、企業年金、生命保険金などの合計額)等の合計額が「当初所得」と定義され、この当初所得から税金や社会保険料を控除して社会保障給付(公的年金などの現金給付、医療・介護・保育の現物給付)を加えたものが「再分配所得」とされる。また、所得の均等度は「ジニ係数」(所得格差係数)で示される。ジニ係数は0から1までの値を取り、0に近いほど所得格差が小さく、1に近いほど所得格差が大きいことを表す。

23年の世帯平均年当初所得額は385万円(前回比9.1%減)、社会保障や税による所得再分配を考慮した世帯平均再分配年所得は468万円(同7.2%減)となった。再分配額の大きい高齢者世帯(65歳以上の者のみで構成するか、またはこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯)では、再分配額の約7割が年金、約2割が医療、約1割が介護となっている。

世帯主の年齢階級別所得再分配状況を見ると、平均当初所得が最も高いのは50~54歳(779万円)で、40~44歳(693万円)が続く。平均再分配所得でも50~54歳(624万円)が最も高い。ただし、再分配額は現役世代である65歳未満ではマイナスとなり、65~69歳でプラスに転じ、75歳以上では大幅なプラスとなる(図表)。

世帯数の累積比率と当初所得額の累積比率から算出されたジニ係数は、過去最大の0.5855(前回比0.0155ポイント増)となって格差は拡大している。高齢化が進んだことで当初所得が低い世帯が増えていることが、近年ジニ係数が上昇傾向を示す要因となっている。

一方で、再分配所得の累積比率から算出されたジニ係数は0.3825(同0.0012ポイント増)とほぼ横ばいで推移。所得再分配による改善度は34.7%(同1.6ポイント増)と社会保障と税の再分配機能に一定の効果があることが示唆された。

現在、再分配額の大部分を社会保障が占めている。将来的に高齢化率は上昇を続けていくことが予想されるなか、再分配機能をどこまで効かせることができるのかは今後の社会保障政策のカギとなる。

所得格差は拡大傾向も、社会保障や税の再分配機能に一定の効果
(画像=きんざいOnline)

アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所 主席研究員/花村 泰廣
週刊金融財政事情 2026年2月3日号