この記事は2026年2月9日に配信されたメールマガジン「アンダースロー(ウィークリー):高市政権の衆院選大勝で積極財政に強い推進力」を一部編集し、転載したものです。

アンダースロー
(画像=years/stock.adobe.com)

目次

  1. アンダースロー(ウィークリー): 高市政権の衆院選大勝で積極財政に強い推進力
  2. 高市政権は景気回復の果実が国民に十分に届くまで満足しない(2月3日)
  3. シンカー
    1. ECB2月理事会プレビュー: ECBは「良い状況にある(in a good place)」
  4. 消費税減税の財源は十分にある(2月6日)
    1. 外為特会は、何に対応するために設けられたものなのでしょうか?
    2. 消費減税に外為特会の含み益は活用できるのでしょうか?
    3. 外為特会を活用するにあたり課題はあるのでしょうか?
    4. 消費税減税を巡る海外メディアの批判についてはどのように考えますか?
    5. 安定財源の一つとして消費税を維持する必要があるとの見方についてはどのように考えますか?
    6. 消費税減税を元に戻すとき実質的な増税だとして世論からの反発が予想されることについてはどう考えますか?
  5. シンカー
    1. ECB2月理事会: 見通しに変更なしでユーロ高についても懸念を示さず

アンダースロー(ウィークリー): 高市政権の衆院選大勝で積極財政に強い推進力

  • 衆議院選挙では、自民党と日本維新の会の連立与党系は354議席を獲得した。参議院の議決を覆せる三分の二の310議席を上回る、大勝となった。自民党単独でも316議席となった。衆議院解散の記者会見で、高市首相は、「これまでの行き過ぎた緊縮財政の呪縛を乗り越えて、経済・財政政策を大転換する」ことを、国民に信を問うとした。衆議院選挙の期間中に、高市政権の積極財政の方針に対して、厳しい批判が多くみられたことは、国民の信を問うべき争点を立てることに成功したことになる。厳しい批判を乗り越え、衆議院選挙に大勝したことによって、国民の信任を背景に、高市政権の積極財政へ大転換する推進力がより強くなったとみられる。30年間の経済停滞をもたらした緊縮財政から変化し、新たな経済・財政政策を試みることを国民は望んだ。極めて高い内閣支持率に対して、自民党の支持率は高くなく、国民の高市支持に支えられた勝利であり、緊縮財政の抵抗勢力を乗り越えることができるだろう。参議院では連立与党は過半数の議席はないが、衆議院での三分の二を上回る議席を背景とした強力な推進力で、経済・財政政策を大転換し、積極財政による投資で強い経済を作ることを目指していくことになるだろう。経済政策の大転換で経済を再生するまでに時間がかかることによる家計の負担は、食料品の消費税率を0%とすることで緩和することになるだろう。財源は十分にあるため、野党を含めた国民会議の議論を経て、実施に高市政権は躊躇しないだろう(2月6日のアンダースロー「消費税減税の財源は十分にある」を参照)。

  • 高市政権は、衆議院の予算委員会のポストを野党から与党に奪還し、2026年度の政府予算を通常国会でできるだけ早く成立させることに集中することになる。しかし、2026年度の政府予算は、石破政権下での骨太の方針を反映した石破型予算である。予算上でプライマリーバランスが黒字化してしまったことは、高市政権が目指す成長投資・危機管理投資の拡大が不十分であることを意味する。高市政権は、これまでの投資不足が、日本経済の停滞と国力の衰退を招いたと考えている。通常国会の後半では、追加経済対策の補正予算で、2026年度の政府予算から成長投資を拡大する高市型に変えることを試みるだろう。高圧経済による一時的な物価上昇率の高止まりがもたらす家計の負担を軽減するため、食料品の消費税率を時限的に0%に引き下げるなど、物価高対応を追加するとみられる。家計に対する物価高対応は、実質賃金がしっかり上昇し、家計に景気回復の果実がしっかり届くまで継続するだろう。2028年の参議院選挙までに、家計の景気回復の実感を高め、参議院での連立与党の過半数の議席の奪還を目指す。

  • 6月の骨太の方針では、経済・財政政策の大転換を試みることになるだろう。これまでの主流派の考え方は、財政健全化に拘るあまり、経済規模の持続的な拡大という責務を政府は果たさなかった。需給ギャップが0%でちょうどよいという考えで、経済政策が引き締められ、景気回復の果実は国民に届かなかったからだ。高市政権では、需給ギャップが十分に大きくなるまで、積極財政と緩和的金融政策、官民連携の投資・需要の拡大によって、「高圧経済」の方針で、経済規模の持続的な拡大にコミットする。成長戦略会議では、17の戦略分野を中心に、官民連携の成長投資の拡大のグランド・デザインを策定する。経済・社会の課題解決のため「危機管理投資」と「成長投資」など官民連携で投資を拡大していくことを明確にしており、中長期的なスパンでの投資戦略を示すことで、企業の予見可能性と成長期待を高める。企業の国内支出の拡大で、貯蓄超過から投資超過に回復させ、日本経済を「コストカット型経済」から「成長型経済」へ移行することを目指す。高市政権は、実質所得の増加などによって、景気回復の果実が国民にしっかり届くまで満足しない。日銀に「強い経済成長」と「物価安定」の両立のデュアル・マンデートを課しているため、日銀法第四条を基に政府の経済政策の基本方針(高圧経済と官民連携の成長投資の拡大)と整合的となるように、日銀の利上げは緩慢なペースとなるだろう。

  • これまでの新自由主義的な思想は、政府の関与を小さくするため、プライマリーバランスの黒字化目標は、財政健全化路線と親和性があった。しかし、現在のグローバルな経済政策の潮流は、多様化する中長期の経済・社会の課題を解決するための官民連携の投資と需要の拡大に変化している。そして、官民連携の成長投資のグローバルな激しい競争になってきている。プライマリーバランスの黒字化目標は、将来の成長や所得を生む成長投資であっても、税収の範囲内で行う制約となる。財政収支を一定の赤字に収めるのであれば、経常的な支出は税収の範囲内に収めても、成長投資は国債の発行でできることになる。成長投資のグローバルな激しい競争の中、日本だけ、無用な足かせをはめて戦えば、競争に敗れ、国力の衰退の原因となってしまう。高市政権では、積極財政でグローバルな経済政策の潮流の変化に乗るため、プライマリーバランスの黒字化目標から、より柔軟な財政目標に変え、官民連携の成長投資の競争を勝ち抜き、国力の強化に取り組むとみられる。ネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)などの財政指標を確認しながらの適度な財政支出を実施することで、野放図な財政拡大とは無縁だ。経済規模の拡大と国力の強化で、純債務残高GDP比を過去に国債格付けがAAAだった頃の水準まで引き下げ、経済再生の先には財政健全化まで成し遂げることになるだろう。

以下は配信したアンダースローのまとめです

高市政権は景気回復の果実が国民に十分に届くまで満足しない(2月3日)

高市政権は、足元の景気は十分に強くなく、需給ギャップ0%近傍では地方や中小企業まで景気回復の実感が広がらないという現状認識に立っている。「依然として『コストカット型経済』から脱し切れておらず、成長に向けた投資拡大と生産性向上を伴う『成長型経済』への移行が道半ばにある」と、12月21日に閣議決定された総合経済対策の基本的枠組みで記している。「需給ギャップは0%近傍となったが、景気は十分に強くなく、地方や中小企業まで景気回復の実感はまだ広がっていない」との認識で、景気回復の果実が国民に十分に届くまで満足しない。高市政権は、需給ギャップが十分に大きくなるまで、積極財政と緩和的金融政策、官民連携の投資・需要の拡大によって、「高圧経済」を目指していくとみられる。需給ギャップの上振れによる「高圧経済」は、単純な総需要の追加ではなく、投資が短期的には需要であることによる上振れ余地の確保だ。需給ギャップの上振れ余地がなければ、官民連携の投資の拡大はできないことになる。投資による需要の拡大によって需給ギャップが上振れても、投資がいずれ供給能力を拡大するため、インフレ圧力が持続的に高騰することはない。供給能力の拡大が、インフレと為替相場を安定化させ、国力の源となる。高市政権が目指す「高圧経済」では、社会課題解決のため「危機管理投資」と「成長投資」など官民連携で投資を拡大していくことを明確にしており、中長期的なスパンでの投資戦略を示すことで、企業の予見可能性と成長期待を高めることが期待される。企業の国内支出の拡大で、貯蓄超過から投資超過に回復させ、日本経済を「コストカット型経済」から「成長型経済」へ移行する。

これまでの主流派の考え方は、日本の財政状況が悪いということを前提とした、財政健全化優先であった。日本の財政状況が悪いため、企業は将来の金利の上昇を懸念して、投資が拡大できないという現状認識であった。企業の国内支出の拡大には、税と社会保障の一体改革によって、増税をしても、財政状況を改善させれば、企業は安心して国内支出を拡大するだろうと考えてきた。その軸となってきたのは、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化の目標であった。しかし、企業が「コストカット型」で縮小の力をかけている間に、政府まで財政健全化で縮小の力をかけてしまったことで、総需要は縮小し、経済の規模が拡大できないデフレ型の経済に陥ってしまった。投資は更に減退し、供給能力は弱い需要に合わせて弱体化し、国力は低下していった。名目GDPは平均525兆円から拡大できなくなった。経済規模が拡大しなければ、企業はリストラ・コストカットによって安い製品・サービスで、競合他社からシェアを奪うしか戦略がなくなる。これまでの主流派の考え方は、財政健全化に拘るあまり、経済規模の持続的な拡大という責務を政府は果たさなかった。需給ギャップが0%でちょうどよいという考えで、経済政策が引き締められ、景気回復の果実は国民に届かなかったからだ。高市政権では、「高圧経済」の方針で、経済規模の持続的な拡大にコミットする。経済規模が持続的に拡大すれば、企業の競争はリストラ・コストカットから投資に変化することができる。成長する新しいパイを獲得するには、投資をしなければならなくなる。競合他社が投資で魅力的な商品・サービスを提供しているのであれば、新しいパイだけではなく、既存のパイまで奪われていくからだ。

これまでは新自由主義的な思想で、経済政策の運営がなされてきた。小泉・竹中路線または構造改革路線と言われる。政府の関与をできるだけ小さくして、効率的な民間経済の自由度を高める思想だ。政府の関与を小さくするため、プライマリーバランスの黒字化目標という財政健全化路線と親和性があった。しかし、現在のグローバルな経済政策の潮流は、多様化する中長期の社会・課題を解決するための官民連携の投資と需要の拡大に変化している。そして、官民連携の成長投資のグローバルな激しい競争になってきている。成長産業や新技術への政府の投資が拡大していることが、グローバルに財政赤字が減らない理由でもある。先進国でプライマリーバランスの黒字化目標という硬直化した財政運営をしているのは日本だけだ。一般的には、財政収支を一定の赤字に収めようとする柔軟なものである。プライマリーバランスの黒字化目標は、将来の成長や所得を生む成長投資であっても、税収の範囲内で行う制約となる。財政収支が一定の赤字に収めるのであれば、経常的な支出は税収の範囲内に収めても、成長投資は国債の発行でできることになる。成長投資のグローバルな激しい競争の中、日本だけ、無用な足かせをはめて戦えば、競争に敗れ、国力の低下の原因となってしまう。高市政権では、積極財政でグローバルな経済政策の潮流の変化に乗るため、プライマリーバランスの黒字化目標から、より柔軟な財政目標に変え、官民連携の成長投資の競争を勝ち抜き、国力の強化に取り組むとみられる。衆議院選挙で積極財政への批判も多くみられることは、高市政権は、国民の信を問うべき争点を立てることに成功したと言える。選挙の勝利によって、国民の支持を背景に、これまでの「行き過ぎた緊縮政策の呪縛を乗り越え」、積極財政へ大転換する推進力を得るとみられる。

図表1:企業貯蓄率と需給ギャップ

企業貯蓄率と需給ギャップ
注:バブル期を含む1995年以前の需給ギャップは+5を上乗せ
出所:内閣府、日銀、クレディ・アグリコル証券)

図表2:世界的潮流を踏まえた経済政策の転換=「経済産業政策の新機軸」(経産省)

図表2:世界的潮流を踏まえた経済政策の転換=「経済産業政策の新機軸」(経産省)
(出所:経済産業省、クレディ・アグリコル証券)

シンカー

ECB2月理事会プレビュー: ECBは「良い状況にある(in a good place)」

今回のECB理事会では、サプライズのある展開は期待すべきではないだろう。ラガルド総裁は、ECBは「良い状況にある(in a good place)」という表現をおそらく何度も繰り返すはずだ。これは単に正しいだけでなく、繰り返し強調すること自体にも意味がある。足元の経済情勢は、ECBが現在置かれている立ち位置を大きく変えるものではない。成長率は予想をわずかに上回っている一方、インフレ率は概ねこれまでの予測に沿った推移となっている。

「地政学的な動向」ついては議論される可能性が高いが、ECBはこれらを「下振れリスク」と位置づけ、引き続き非常に注意深くモニタリングしていることを確認するにとどまるだろう。 ユーロ高についても同様である。ECBにできる最善の対応は為替レートのボラティリティを監視することに限られ、この点について投げかけられる数多くの質問に対しても、同様の回答が繰り返される公算が大きい。最後に、過去3週間、シュナーベル理事から極端にタカ派的な発言が聞かれていない一方で、ヴィルロワ・ド・ガロー仏中銀総裁も直近で連続利下げを求める発言をしていないことから、ラガルド総裁が市場の期待を再調整する必要はないだろう。その結果、記者会見は落ち着いた(そしておそらく退屈な)ものになると見込まれる。(松本賢)

消費税減税の財源は十分にある(2月6日)

以下は会田がコメンテーターとして出演している文化放送の「おはよう寺ちゃん」の内容の一部をまとめ、加筆・修正したものです。

外為特会は、何に対応するために設けられたものなのでしょうか?

問(寺島):あさって日曜に投開票される衆院選で各党が消費税減税を公約に掲げる中、その財源として政府の外為特会=外国為替資金特別会計が注目されています。過去の円売り・ドル買い介入で積み上がった外貨準備の運用益や円安で膨らんだ含み益はこれまでもたびたび、「埋蔵金」として熱い視線が注がれてきました。この外為特会は、元々、何に対応するために設けられたものなのでしょうか?

答(会田):外為特会は、為替相場の急激な変動の際の為替介入などのために設けられたものです。歴史的に、日本経済は円高圧力に苦しめられてきました。財務省は、政府短期証券の発行によって資金を調達して、外貨資産を買うことによる為替介入で、円高圧力を緩和してきました。その結果、外貨準備が大きく膨らんできました。日本の外貨準備はGDP比30%程度もあります。ユーロ圏の10%程度と比較すると膨大な量になっています。現在は、円高ではなく、円安が懸念される局面です。過剰な外貨準備を使って、外貨売り、円買いの為替介入を積極的に行う余地があります。

消費減税に外為特会の含み益は活用できるのでしょうか?

問(寺島):資産に当たる外貨準備高は去年末の時点で1兆3697億ドル、日本円でおよそ210兆円に上り、大半は米国債で保有されています。近年は円安などの影響で運用益が膨らみ、24年度は過去最大の5兆3603億円の剰余金が生じました。今回の衆院選では、国民民主党が積極財政の財源として外為特会を例示しています。円安効果で外為特会には資金的余裕が生じています。食料品の消費税をゼロにすると、税収は年間およそ5兆円減りますが、その穴埋めとして、外為特会の含み益を活用できるのでしょうか?

答(会田):外為特会では、外貨資産から得た金利が収入となり、政府短期証券の金利が費用となります。海外の金利の方が高い状態ですから、金利差が剰余金となります。2025年度の一般会計には3兆円程度を既に繰り入れています。すべての剰余金を繰り入れれば、追加で2兆円程度となります。更に、円安などにより、外貨資産には含み益が存在します。外貨資産を売ることによって、含み益を実現し、外貨を円に換えれば、更なる財源を生み出すことは、テクニカルには可能です。

外為特会を活用するにあたり課題はあるのでしょうか?

問(寺島):実際に活用するには課題が多く、現実的でないと指摘されてきた経緯があります。剰余金は、現行ルールでは最大7割を一般会計に繰り入れ可能とされています。ただ、既に毎年度の歳入穴埋めに使われていて、新たな財源確保の余地は乏しいとの指摘もあります。経済官庁幹部は「減税を続けるなら財源を確保しないといけない。それをせずに外為特会でというのは倫理の欠如だ」と苦言を呈しています。また、活用するには外国債などの保有資産を売却して、得た外貨を円に交換する必要があります。これは事実上の為替介入であり、外国債の売却で債券市場の混乱も招きかねません。アメリカ政府の反発は必至で、同意を取り付けるのは容易ではありません。この辺りの難しさについてはどうご覧になっていますか?

答(会田):剰余金をすべて繰り入れるには、ルールの変更が必要になります。しかし、法律で定められたものでないため、財務省の独自のルールの変更は容易です。外貨資産を売ることによって、含み益を実現し、外貨を円に換えることは、事実上の為替介入となり、対外関係の問題があります。しかし、日本の過剰な外貨準備を、他の先進国なみに戻すことを目的に、年間で一定の額を恒常的に売ることは可能だと考えられます。目的の明確化と恣意性の排除があれば、対外関係の問題にはならないとみられます。日銀が、保有ETFの一定の額を恒常的に売って、残高を減らしていることと同じです。全額繰り入れと合わせて、5兆円の財源を生み出すことは十分に可能です。

消費税減税を巡る海外メディアの批判についてはどのように考えますか?

問(寺島):8日投開票の衆院選では主要政党が消費税減税を公約に掲げているわけですが、消費税減税をめぐって、海外メディアが相次いで批判的に報じています。日本の社会保障費が膨らむ中で、巨額の税収を失って財政が悪化すると問題視しています。2022年、当時のトラス首相がイギリスで大規模減税を打ち出し、国債・株・通貨のトリプル安を招きました。「トラスショック」になぞらえる論評も目立ちます。アメリカのブルームバーグ通信は、自民党と日本維新の会が2年間限定で食料品を消費税の対象としないことについて検討を加速すると公約したのに対し、「食料品の消費税を一時的にゼロにする計画は間違いなく悪い考えで、露骨に政治的だ」と論評しました。この批判についてはどうご覧になっていますか?

答(会田):2026年度の政府予算では、税収が保守的な見積もりで6兆円程度、2025年度の当初予算から増加することになっています。名目GDPが拡大を続ける中、2026年度に上振れた税収の水準から、2027年度は更に増加することになります。この6兆円程度は恒久的な財源となります。2024年度と2025年度は、当初予算から補正予算までに、歳入が7兆円程度も上振れました。当初予算では歳入を過小に見積もることで、7兆円程度の財政余地が恒常的に生まれています。この恒常的な上振れを前もって、苦しんでいる家計に還元することは可能です。年金の社会保険料の額は、今後100年間、実質GDP成長率がずっとマイナスであることを前提としています。成長率の前提を上げれば、国の社会保障費の負担は軽減するため、消費税の減税に充てることは可能です。2014年度の消費税率の引き上げ以降、2026年度まで、消費税収は16兆円程度も増加しています。一方、国の社会保障費は10兆円程度しか増加してしません。差額は6兆円程度あり、取り過ぎているとも言えます。外為特会と合わせて、財源は豊富にあり、批判は日本の財政の実情を理解していないものです。

安定財源の一つとして消費税を維持する必要があるとの見方についてはどのように考えますか?

問(寺島):またフランス紙は、日本の債務残高がGDP比で230%に膨らんでいることから、安定財源の一つとして消費税を維持する必要があると報じています。自民の公約通りに減税しても「GDPの押し上げは2年目にはおそらくゼロになる」と言及したことについてはどう受け止めていますか?

答(会田):まず間違いなのは、消費税率の引き下げは、GDPの押し上げを目的とするものではなく、家計の負担を軽減するものだということです。GDPの押し上げは、官民連携の成長投資によって行うのが、高市政権の方針です。ただ、投資は短期的には需要であるため、高圧経済となり、物価上昇率が高止まることによる家計の負担を軽減するためのものです。投資はいずれ供給能力となり、インフレを安定化し、労働生産性の向上によって実質所得の増加にもつながります。債務残高が大きいからと投資をしなければ、将来に所得と成長を生まない弱い経済を残すことで、将来世代にツケを回すことになります。国債の利払い負担を上回る便益を将来世代に残せれば、国債による投資の拡大は、将来世代へのツケ回しにはなりません。

消費税減税を元に戻すとき実質的な増税だとして世論からの反発が予想されることについてはどう考えますか?

問(寺島):さらに海外メディアは、消費税減税を元に戻すとき、実質的な増税だとして世論から反発されることが予想され、実際に戻せるかが危惧されると報じています。「どの政権も食品への消費税を復活させる勇気はないだろう」との観測を伝えたことについてはどうみていますか?

答(会田):毎年、消費税率の引き下げ分の5兆円を上回る税収増があることが忘れられています。結果として、家計が苦しむ中、2025年度の当初予算では、プライマリーバランスが黒字化してしまいました。景気が十分に強くなり、家計にしっかり所得が回れば、景気の過熱を抑制するため、消費税率を元に戻すことが可能になります。期待リターンを上げて投資を活性化し、家計にしっかり所得を回すためだけではなく、財政健全化のためにも高圧経済が求められます。その他の財源として、租税特別措置の整理・重点化、補助金・基金の整理・成果検証、資産の売却など、税外収入によって5兆円程度の財源を捻出することは困難ではないだろう。日銀のETF売却の方針を見直し、一部を家計への還元と成長投資の財源とすることも可能だ。

シンカー

ECB2月理事会: 見通しに変更なしでユーロ高についても懸念を示さず

ECBは政策金利を据え置いた。経済およびインフレ見通しに関するコミュニケーションも変更せず、リスク要因についてはバランスの取れたトーンを維持した。我々は、ドイツの財政パッケージに支えられたユーロ圏経済見通しの改善が、中期的には賃金とインフレ圧力をもたらし、市場や現在のコンセンサスが想定するよりも早い段階で、ECBが金融スタンスを引き締める可能性があるとの見方を引き続き維持している。

進行しているユーロ高について、ラガルド総裁は「ECBは為替レートを注意深く注視している」と回答し、さらに理事会で「本日、このテーマについて議論した」と強調した。ユーロは依然としてここ数カ月の平均的なレンジ内にあり、主な上昇は2025年3月から4月にかけて生じたものであると説明した。そのため、比較的高いユーロ水準はすでに12月のマクロ経済見通しに織り込まれており、12月以降の上昇は限定的で、コアインフレ見通しに影響を与えるものではないとした。(松本賢)

図1:ECB政策金利見通し

図4:ECB政策金利見通し
(出所:ECB、Bloomberg、クレディ・アグリコル証券)

図2:ユーロ高が進行も懸念すべき水準ではない

ユーロ高が進行も懸念すべき水準ではない
(出所:ECB、Bloomberg、クレディ・アグリコル証券)

日本経済見通し

日本経済見通し
CACIBの見通し
(出所:日銀、内閣府、総務省、Bloomberg、クレディ・アグリコル証券)

会田 卓司
クレディ・アグリコル証券 東京支店 チーフエコノミスト
松本 賢
クレディ・アグリコル証券 マクロストラテジスト

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