この記事は2026年3月9日に「CAR and DRIVER」で公開された「【岡崎宏司カーズCARS/CD名車100選】超キュート! 2人のためのFFライトウェイトスポーツを標榜した「1983年ホンダ・バラードスポーツCR-X(E-AF型)」の鮮烈造形」を一部編集し、転載したものです。


【岡崎宏司カーズCARS/CD名車100選】超キュート! 2人のためのFFライトウェイトスポーツを標榜した「1983年ホンダ・バラードスポーツCR-X(E-AF型)」の鮮烈造形
初代バラードスポーツCR-X(2代目以降はCR-X)は、主要メカニズムを共用する3代目シビックより2カ月早い1983年7月に登場。鮮烈スタイリングと剽悍な走りが魅力の「FFライトウェイトスポーツ」だった。ボディサイズはコンパクトな3675×1625×1290㎜。車重は800kg(1.5i)と超軽量。カタログでは「ホンダの次世代設計フィロソフィーと先進テクノロジーがつくりあげた、まさにスポーティな走る生き物」と表現した

まさにデュエットクルーザー、運動性能もビビッド

ホンダがいよいよヤル気を出してきた。シティ、プレリュードと光るクルマを次々送り出している。そこに新たに加わったのがバラードスポーツCR-Xだ。「ホンダらしい強烈な個性」をふりまくクルマである。

サイズは3675×1625×1290㎜。シビック3ドアよりひと回り小さい。このコンパクトさとダイナミックなスタイリングのコンビは、いかにも「コレは走るな」と楽しい予感を抱かせる。CR-Xのスタイリングは大胆でユニークだ。Cd値は0.33。しかも前面投影面積が小さいから、空気の壁を切り裂く能力は超一級品である。

【岡崎宏司カーズCARS/CD名車100選】超キュート! 2人のためのFFライトウェイトスポーツを標榜した「1983年ホンダ・バラードスポーツCR-X(E-AF型)」の鮮烈造形
【岡崎宏司カーズCARS/CD名車100選】超キュート! 2人のためのFFライトウェイトスポーツを標榜した「1983年ホンダ・バラードスポーツCR-X(E-AF型)」の鮮烈造形

エンジンは1.3リッターのキャブレター仕様と、1.5リッターの電子制御燃料噴射仕様の2種を用意している。どちらも吸気2、排気1の3バルブ方式を採り入れ、燃焼効率を徹底的に引き上げた新世代ユニットだ。

コクピットに入ってみる。こちらも斬新なレイアウトだった。ドライビングポジションは素晴らしく、前席スペースは余裕十分。ただし後席は完全に補助席である。定員は4名だが、小さな子供でも座らせるのがかわいそうなスペースしかない。ホンダもその点は100%認めていて、カタログには「ワンマイルシート」と表記している。CR-Xは、「オレとあいつが乗れて、カッコいい。それで十分じゃないか」と割り切れる、爽やかなユーザーに向けたクルマである。

試乗車は1.5リッターモデルだ。走りはまさにゴキゲンだった。パワー/トルクは110ps/13.8kgm、パワーウェイトレシオは7.27kg/psだ。メーカー値では、ゼロヨンが16.2秒、0→100km/h加速は8.8秒だ。最高速度は性能曲線図から見て180km/hをゆうに超えそうだ。1.5リッターのSOHCエンジンNA車として、実力は抜群である。

テスト車は5速MT仕様。パワーは印象的だった。スタート時にエンジン回転数を3000rpmあたりまで上げてクラッチをミートすると、もうタイヤは空転をはじめる。したがって、速く、クリーンなスタートを切るには、かなり神経を使わされる。でもいったん走り出せば、ウエット路面でもない限り問題はない。十分な加速、減速、コーナリングスピードを披露する。

【岡崎宏司カーズCARS/CD名車100選】超キュート! 2人のためのFFライトウェイトスポーツを標榜した「1983年ホンダ・バラードスポーツCR-X(E-AF型)」の鮮烈造形
【岡崎宏司カーズCARS/CD名車100選】超キュート! 2人のためのFFライトウェイトスポーツを標榜した「1983年ホンダ・バラードスポーツCR-X(E-AF型)」の鮮烈造形

5速MTのギアリングは、走り指向。レッドゾーンは6500rpm。そこまで回す意味は十分にある。いや引っ張ったほうが速い。各ギアともレッドゾーンまで引っ張ると1速が52km/h、2速で約90km/h、3速は約130km/hまで伸びる。エンジン音も刺激的である。とくに4000rpmを超えたあたりからの音は力強い。空いた山岳路を走っていると、その音に包まれたいがために、ついつい高回転まで回してしまう。もちろん低速での使い勝手にも問題はない。キミが飛ばし屋ではなく、ゆったり、カッコよく街を流して走るファッション派でも、CR-Xは苦情をいわない。

足もいい。ポテンシャルはなかなかだ。とくにリアサスがしっかりとしているのがうれしい。強引なコーナリングにトライしても、タックインを駆使しても、コーナーでブレーキングにより無理やり姿勢を変えても、ドライバーの激しいトライについてきてくれる。コーナリングスピードはもちろん、ワインディングロードでのアベレージスピードも高い。少なくともドライ路面では文句なしのスピードをたたき出す。

【岡崎宏司カーズCARS/CD名車100選】超キュート! 2人のためのFFライトウェイトスポーツを標榜した「1983年ホンダ・バラードスポーツCR-X(E-AF型)」の鮮烈造形
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ステアリング特性は、タイトターンを追い込むとアンダーが強めに出るが、限界は低くない。限界を超えてもいきなりフロントがアウトに流れ出すようなこともない。ジワリとしたアウトへの流れは、余裕たっぷりにコントロールできる、ブレーキも悪くない。

気に入らないのは、高速で不意にステアリングを切って戻したとき、姿勢がスムーズに収まらないことだ。戻りの挙動が強く早すぎるので、コントロールしにくい。ハイウェイで突差に危険を避ける場合などには注意が必要だ。

このところ楽しいクルマが続々と登場し、選ぶのが大変だが、こんな苦労ならいくらしてもいい。そこで結論。「スタイリングがサイコーに好き」と思うなら、すぐにCR-Xをオーダーすればいい。走りを含め大満足すると保証する。
※CD誌1983年9月号掲載

【岡崎宏司カーズCARS/CD名車100選】超キュート! 2人のためのFFライトウェイトスポーツを標榜した「1983年ホンダ・バラードスポーツCR-X(E-AF型)」の鮮烈造形
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【プロフィール】
おかざき こうじ
/モータージャーナリスト、1940年、東京都生まれ。日本大学芸術学部在学中から国内ラリーに参戦し、卒業後、雑誌編集者を経てフリーランスに。本誌では創刊時からメインライターとして活躍。その的確な評価とドライビングスキルには定評がある。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員

Writer:岡崎宏司、Photo:HONDA


(提供:CAR and DRIVER