この記事は2026年3月19日に配信されたメールマガジン「アンダースロー:付利のある利上げは意図せざる引き締め効果が加わってしまう」を一部編集し、転載したものです。
シンカー
米国:所得の伸びがコストプッシュに追いつかないリスク
3月FOMCでは、政策金利の誘導目標が2会合連続で据え置かれた(3.50~3.75%)。マイラン理事は25bpの利下げを主張し、反対票を投じた。雇用は明確に減速している一方、地政学リスクに伴う原油価格の上昇が物価見通しの不透明感を高めており、様子見姿勢が維持された。記者会見でパウエル議長は、不透明な環境下では明確な政策の方向性を示すことが困難であると繰り返し強調した。
四半期ごとの経済見通し(SEP)では、インフレ率とGDP成長率の中央値が上方修正された一方、FF金利見通しには変化がなかった。原油は、農業生産や流通における投入要素(農機、肥料生産、輸送、冷蔵など)を通じて、食料価格にも影響を与えると一般に考えられる。現在の原油価格水準が継続することを前提に、過去の関係性から試算すると、PCEデフレーターの食料・エネルギー項目は前年比で10%程度押し上げられる可能性がある。米国は原油の純輸出国であっても、コストプッシュ圧力は高まるとみられる。
2022年に始まったロシア・ウクライナ戦争時の価格高騰局面では、前年の新型コロナ対応としての現金給付など大規模な財政拡大により所得が大きく押し上げられ、家計はコストプッシュインフレに一定程度耐えることができたとみられる。所得の伸びを大きく上回るコストプッシュ圧力は、過去には急激な景気減速とセットで起きている。
今回は2022年ほどのコストプッシュ圧力に至らない場合でも、雇用需要の鈍化に伴う賃金上昇圧力の低下により、家計の負担感は高まりやすい。減税に伴う還付金の増加だけでは十分に補えない可能性がある。コストプッシュ圧力は、企業が吸収するか、転嫁されて消費者が負うかの問題であり、いずれも需要減少要因である。当面はインフレへの警戒から金融政策は様子見姿勢が続くとしても、その後の景気減速の強まりには十分な注意が必要とみられる。(松本賢)
付利のある利上げは意図せざる引き締め効果が加わってしまう
日銀の利上げが遅れる原因として、日銀当座預金残高に付利があるときの利上げが、付利がない時の利上げと比較して、引き締め効果が強くなるリスクが挙げられる。付利がない場合、リターンが0%の日銀当座預金より、金利上昇局面でもイールド・カーブの形状を活用したプラスのリターンを求める動きが強まる。国債への投資が継続することで、イールド・カーブのスティープ化が抑制され、利上げの金融引き締め効果が緩和されることになる。日銀当座預金に付利がある場合、金利上昇局面でイールド・カーブの形状を活用して付利を上回るリターンをあげることは困難となる。国債への投資が抑制され、イールド・カーブのスティープ化が促進され、利上げの金融引き締め効果が大きくなってしまう。
日銀当座預金に資金が滞留し、意図せざるQT(量的引き締め)の効果となってしまう。イールド・カーブのスティープ化が、設備投資に求めるリターンのハードルを上げ、企業の設備投資の動きを抑制してしまうかもしれない。日銀法第四条は、日銀の金融政策は、政府の経済政策の基本方針と整合的になることを求めている。政府の経済政策の基本方針は、高圧経済による強い経済成長である。1%台の強い経済成長で、民間の投資を拡大し、資本蓄積と全要素生産性の上昇で、潜在成長率も1%程度まで引き上げる。付利がある場合の意図せざる引き締め効果もあり、官民連携の成長投資の拡大を目指す政府との連携の必要性を考えれば、日銀は利上げに慎重にならざるを得ないだろう。
3月の金融政策決定会合で、日銀は政策金利(無担保コールレートオーバーナイト物)を0.75%に据え置いた(8対1、反対:高田審議委員)。原油価格の大幅な上昇がもたらす交易条件の悪化によって、日本の景気の先行き不安が高まっている。50%の原油価格の上昇は、日本の実質GDP成長率を0.6%程度も下押すことになる。高市政権の積極財政の方針によって、通常国会の後半に経済対策の補正予算を組み、景気の下支えをすれば、2026年度の実質GDP成長率は+0.5%程度の潜在成長率なみの水準を保てるだろう。しかし、潜在成長率なみにとどまることは、「強い経済成長」とは言えない状況だ。中東情勢の緊迫化が続くなどして景気動向が弱ければ、秋の臨時国会でも経済対策を実施する可能性がある。政府が経済対策を実施している間は、日銀は利上げがしにくくなる。日銀の+1.0%の成長見通しは下方修正含みだろう。日銀も「中東情勢の緊迫化を受けて、国債金融資本市場では不安定な動きがみられるほか、原油価格も大幅に上昇しており、今後の動向には注意が必要である」と警戒感を示した。リスク要因に、「中東情勢の展開や原油価格の動向」を加えた。
11月12日の高市政権で初の経済財政諮問会議では、高市首相は植田日銀総裁の前で、「今後の「強い経済成長」と「安定的な物価上昇」の両立の実現に向けて、適切な金融政策運営が行われることは非常に重要である」と発言し、日銀に事実上のデュアル・マンデートを課している。景気の不透明感が低下し、潜在成長率の倍である1%程度の実質GDP成長率の強いトレンドに戻る見込みが生まれるまで、日銀の利上げができない状態が続くとみられる。2027年度の実質GDP成長率は1.25%程度となるだろう。日銀の+0.8%の成長見通しが上方修正されるほどのモメンタムの回復が必要だろう。次の利上げは、昨年12月の利上げの1年後となる今年12月とみている。
日銀の利上げが遅れる原因として、日銀当座預金残高に付利があるときの利上げが、付利がない時の利上げと比較して、引き締め効果が強くなるリスクが挙げられる。付利がない場合、リターンが0%の日銀当座預金より、金利上昇局面でもイールド・カーブの形状を活用したプラスのリターンを求める動きが強まる。国債への投資が継続することで、イールド・カーブのスティープ化が抑制され、利上げの金融引き締め効果が緩和されることになる。日銀当座預金に付利がある場合、金利上昇局面でイールド・カーブの形状を活用して付利を上回るリターンをあげることは困難となる。国債への投資が抑制され、イールド・カーブのスティープ化が促進され、利上げの金融引き締め効果が大きくなってしまう。
日銀当座預金に資金が滞留し、意図せざるQT(量的引き締め)の効果となってしまう。イールド・カーブのスティープ化が、設備投資に求めるリターンのハードルを上げ、企業の設備投資の動きを抑制してしまうかもしれない。日銀法第四条は、日銀の金融政策は、政府の経済政策の基本方針と整合的になることを求めている。政府の経済政策の基本方針は、高圧経済による強い経済成長である。1%台の強い経済成長で、民間の投資を拡大し、資本蓄積と全要素生産性の上昇で、潜在成長率も1%程度まで引き上げる。付利がある場合の意図せざる引き締め効果もあり、官民連携の成長投資の拡大を目指す政府との連携の必要性を考えれば、日銀は利上げに慎重にならざるを得ないだろう。
図1:日銀の見通し
図2:CACIBの見通し
図3:米国食料・エネルギー価格と名目所得
図4:米国求人率と雇用コスト指数
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