この記事は2026年4月13日に配信されたメールマガジン「アンダースロー(ウィークリー):グローバルな経済政策の潮流の変化は決定的」を一部編集し、転載したものです。

アンダースロー
(画像=years/stock.adobe.com)

目次

  1. シンカー
    1. 米国: インフレ期待の高まりを過度に懸念する必要性は乏しい
  2. グローバルな経済政策の潮流の変化は決定的
  3. 日本経済見通しのメインポイント(経済)(3月31日)
  4. 日本経済見通しのメインポイント(政策)(4月1日)
  5. 「高市総理の『積極財政』を海外識者が支持」(4月3日)
    1. 海外識者の財政運営に関する主張についてはどう受け止めていますか?
    2. 債務の安定と投資拡大の両立することは可能なのでしょうか?
    3. マーケットの懸念についてはどうご覧になっていますか?
    4. 食料品の消費税減税への異論についてはいかがですか?
    5. ガソリン補助金への異論についてはどう受け止めていますか?
    6. 消費減税の課題についてはどうみていますか?

シンカー

米国: インフレ期待の高まりを過度に懸念する必要性は乏しい

米国の3月CPIは、コアが前月比+0.2%(2月同+0.2%)、前月比年率+2.38%(同+2.62%)へと鈍化した。一方、ヘッドラインはエネルギー価格の高騰を受け、前月比年率+10.89%(2月同+3.25%)へと急上昇した。コアの伸びの鈍化は、主にサービス価格の上昇率の低下によるものである。2月に前月比+0.3%サービス価格は、同+0.2%に鈍化した。原油価格の影響を受けた航空運賃の上昇などから今後上振れる可能性はあるものの、ウェイトの大きい住居費の伸び鈍化に吸収され、全体としては抑制された伸びにとどまるとみられる。

財価格については、関税引き上げの転嫁とみられる小幅な上昇が引き続き確認されている。また、輸入物価・生産者物価ともに半導体価格が急騰している。半導体価格は、2月にアジアからの輸入物価は前年比+14.4%、生産者物価は+16.9%だった。これが転嫁されれば、ウェイト自体は大きくないものの、家電製品など消費者物価への波及が見込まれる状況である。エネルギー価格上昇によりインフレ期待が上振れたとしても、それを前提に消費や投資が拡大するには、十分な所得や企業収益の増加が不可欠である。政府による所得移転は新型コロナ後のような規模になく、労働需要の減退により賃金上昇圧力も弱まっている現状を踏まえると、FRBはインフレ期待の高まりを過度に懸念する必要性は乏しいと考えられる。

むしろ、所得の伸びを上回るエネルギーや食料価格上昇の長期化は、時間差で需要を下押しし、ディスインフレ要因となる。個人所得と雇用者報酬の差を、利息・配当や給付金などの所得移転の合計と捉えれば、給与以外の所得(非労働所得)による消費余力とみなすことができる。新型コロナ後の現金給付などによりこれが大きく増加したことが、供給制約のもとでインフレ圧力を高めた要因である。足元では賃金の伸び自体も鈍化しているなかで、非労働所得にも顕著な増加はみられない。インフレ期待の高まりを起点とした消費の拡大や、それに伴うインフレ圧力の強まりが生じる可能性は低い状況である。(松本賢)

グローバルな経済政策の潮流の変化は決定的

  • 世界共通の課題解決に資する、先手を打った官民連携の大規模な戦略投資を促進するため、日本経済再生のマクロ経済戦略の設定が不可欠となっている。マクロ戦略なき効率化の追求は、市場原理に過度に依存する新自由主義的発想に基づく「デフレ・コストカット型経済」の継続となってしまう。世界の経済政策の新しい潮流は、官民連携の強化による戦略的な国内投資の拡大を通じた国力の増大である。この潮流の変化を政府のマクロ戦略に組み込むことが重要だ。日本経済の停滞の原因は、人口動態の悪化ではなく、官民の国内投資の不足だからだ。

  • 世界の経済政策の潮流の変化は、歴史的に産業政策に批判的であった国際機関の産業政策支持への方針転換からも明らかである。3月17日に公表された世界銀行のレポート「Industrial Policy for Development」では、「産業政策の効果を否定した約30年前のレポートは、経済環境の変化によっていまでは有効性が失われている」ことが指摘された。従前の新自由主義的政策の下では、市場に対する方向付けや貿易障壁を設けずに市場メカニズムに委ねること、インフレ率を低く抑え、財政赤字を小さく維持することが各国政府に奨励されていた。しかし、様々な分析の積み重ねの結果、「産業政策は従来考えられていたよりもはるかに再現可能性が高く、すべての国にとって政策手段の一つとして検討されるべきである」と記されている。

  • 高市政権下の日本成長戦略会議では、17の戦略分野を中心に、官民連携の戦略投資の拡大のグランド・デザインを策定する。経済・社会の課題解決のため「危機管理投資」と「成長投資」など官民連携で投資を拡大していくことを明確にしており、中長期的なスパンでの投資戦略を示すことで、企業の予見可能性と成長期待を高める。既に有望な産業や分野にも「勝ち筋」として支援を怠らず、強い産業をさらに強くし、成長を促すとみられる。企業の国内支出の拡大で、貯蓄超過から投資超過に回復させ、日本経済を「コストカット型経済」から「成長型経済」へ移行することを目指す。高市政権は、国内投資の増加による生産性の向上、そして実質所得の押し上げなどによって、景気回復の果実が国民にしっかり届くまで満足しない。

  • プライマリーバランスの黒字化目標など財政健全化路線は、政府の関与を小さくするため、新自由主義と親和性があった。プライマリーバランスの黒字化目標は、将来の成長や所得を生む戦略投資であっても、税収の範囲内で行う制約となる。財政収支を一定の赤字に収めるという柔軟性があれば、経常的な支出は税収の範囲内に収めても、戦略投資のための国債の発行が可能となる。戦略投資の可否は、財源の有無ではなく、国債の利払い負担を上回る便益を将来世代に残せるのかが判断基準となる。グローバルでの官民連携の戦略投資の激しい競争の中、日本だけ、無用な足かせをはめて戦えば、競争に敗れ、国力の衰退の原因となってしまう。日本が構造改革の手本としてきた米国は、これまで単純な新自由主義的政策を推し進めてきたわけではなく、防衛需要という官民連携の強固な形があったことへの認識が不足していた。

  • 高市政権では、プライマリーバランスの黒字化目標から、より柔軟な財政目標に変え、官民連携の戦略投資の競争を勝ち抜き、国力の強化に取り組むとみられる。ネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)を-5%(GDP比)内に収めるなど、財政指標を確認しながらの適度な財政支出を実施すれば、野放図な財政拡大とは無縁だ。そして、日銀には「強い経済成長」と「物価安定」の両立のデュアル・マンデートを課しているため、日銀法第四条を基に政府の経済政策の基本方針(高圧経済と官民連携の成長投資の拡大)と整合的となるように、日銀の利上げは緩慢なペースとなるだろう。

図1:潜在成長率

潜在成長率
(出所:内閣府、クレディ・アグリコル証券)

図2:新自由主義・緊縮財政から産業政策・積極財政の支持に転じた世界銀行

新自由主義・緊縮財政から産業政策・積極財政の支持に転じた世界銀行
(出所:世界銀行、クレディ・アグリコル証券)

図3:ネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)

ネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)
(出所:日銀、内閣府、クレディ・アグリコル証券)

図4:米国非労働所得の伸び

米国非労働所得の伸び
(注:四半期データ、2026年1-3月期は1・2月の平均値
出所:BEA、クレディ・アグリコル証券)

以下は配信したアンダースローのまとめです

日本経済見通しのメインポイント(経済)(3月31日)

① 異常であるプラスの企業貯蓄率が示す構造的な経済停滞圧力が残っているため、内需はまだ弱い。トランプ関税と原油価格上昇などによるグローバルな景気減速の下押し圧力を受ける。まだ弱い内需によって、コアコア物価上昇率(除く生鮮食品・エネルギー)は一時的に減速する。実質賃金の上昇が、内需を徐々に拡大させる力となる。

図1:企業貯蓄率と消費者物価

企業貯蓄率と消費者物価
(出所:総務省、日銀、内閣府、クレディ・アグリコル証券)

② 積極財政と緩和的な金融政策の継続によるリフレの力が、名目GDPを大きく拡大させてきた。日銀のこれまでの拙速な利上げに加え、グローバルな景気減速で、名目GDPの拡大は一時的に減速する。

図2:名目GDP

名目GDP
(出所:内閣府、クレディ・アグリコル証券)

③ ネットの国内資金需要(企業貯蓄率+財政収支)が回復し、リフレの力で、名目GDPを拡大させた。高市政権の官民連携の戦略投資と需要の拡大による積極財政の推進が内需を回復させ、グローバルな循環的景気回復も見込まれる。企業の国内支出の増加によって、企業貯蓄率が低下を始め、積極財政の動きと合わせ、消滅してしまっているネットの資金需要が再回復し、構造的な経済停滞の完全脱却に向かう力になる。

図3:ネットの資金需要

ネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)
(出所:日銀、内閣府、クレディ・アグリコル証券)

④ 設備投資サイクルの上振れが企業貯蓄率を正常なマイナスに戻す力となる。設備投資サイクルが上向いている限り、将来の供給能力の拡大の期待があるため、円安の更なる強い圧力はかかりにくい。企業貯蓄率の低下が設備投資サイクルに追い付いていく局面で、実質賃金の上昇が強くなる。経済・政策・企業・マーケットの重点が外需から内需にシフトする。

図4:設備投資サイクル

設備投資サイクル

日本経済見通しのメインポイント(政策)(4月1日)

目先は地政学上のリスクが残るが、グローバルな循環的景気回復の局面と高市政権の官民連携の成長投資と需要の拡大による内需拡大で、設備投資サイクルの上昇が牽引役となり企業貯蓄率は低下の動きとなる。コアコア物価上昇率(除く生鮮食品・エネルギー)は景気停滞による減速の後、2%の物価目標に向かって再拡大。2027年には、設備投資サイクルの上振れと実質賃金の上昇による内需の強い拡大。2028年には企業貯蓄率は正常なマイナスに戻り、構造的デフレ圧力を払拭し、経済停滞を完全に脱却する。

図1:日銀とCACIBのGDP、CPI見通し

日銀とCACIBのGDP、CPI見通し
(出所:日銀、クレディ・アグリコル証券)

高市政権の高圧経済の方針の下、利上げは1年間止まる。中立金利に向けた利上げの本格的サイクルに入れるのは、地政学上のリスクが緩和し、内需のしっかりとした回復が見込めるようになる2026年末からとなる。2%の物価目標に向けた物価上昇率の再拡大で、ゼロ%程度の実質金利に合わせた利上げを継続。実質金利ゼロの維持が、経済活動を促進。2028年には政策金利は2%強となり、実質政策金利は物価目標対比でマイナスを脱する。

図2:日銀の政策金利

日銀の政策金利
(出所:総務省、日銀、クレディ・アグリコル証券)

高市政権は、衆議院選挙での大勝を背景に、骨太の方針で、経済・財政政策の大転換を試みることになる。高市政権では、需給ギャップが十分に大きくなるまで、積極財政と緩和的金融政策、官民連携の投資・需要の拡大によって、「高圧経済」の方針で、経済規模の持続的な拡大にコミットする。企業の国内支出の増加によって、企業貯蓄率が低下を始め、積極財政の動きと合わせ、消滅してしまっているネットの資金需要が再回復し、構造的経済停滞の完全脱却に向かう力になる。実質賃金上昇までの家計の負担は、消費税率引き下げなどの家計支援の財政政策で軽減することになる。

図3:政府の経済政策の方針

政府の経済政策の方針
(出所:クレディ・アグリコル証券)

地政学上のリスクが高まる中でのグローバルな景気減速の下、金融・財政政策の後押しが不十分で、信用サイクルと設備投資サイクルが腰折れれば、内需の鈍化で企業貯蓄率は上昇し、構造的デフレ不況に戻るリスクに。日銀の拙速な利上げによって、雇用・賃金・消費を含む内需の回復が遅れ、コアコア消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)の前年同月比は1%台前半まで減速する。政府の追加経済対策と、物価上昇率の減速が実質賃金を上昇させることで、内需の回復が促進される。

図4:信用サイクルと失業率

信用サイクルと失業率
(出所:日銀、内閣府、クレディ・アグリコル証券)

「高市総理の『積極財政』を海外識者が支持」(4月3日)

  • 海外識者の財政運営に関する主張についてはどう受け止めていますか?
  • 債務の安定と投資拡大の両立することは可能なのでしょうか?
  • マーケットの懸念についてはどうご覧になっていますか?
  • 食料品の消費税減税への異論についてはいかがですか?
  • ガソリン補助金への異論についてはどう受け止めていますか?
  • 消費減税の課題についてはどうみていますか?

以下は会田がコメンテーターとして出演している文化放送の「おはよう寺ちゃん」の内容の一部をまとめ、加筆・修正したものです。

海外識者の財政運営に関する主張についてはどう受け止めていますか?

問(寺島):政府は先週開いた経済財政諮問会議に、海外の著名な経済学者を招き、日本の経済財政運営について意見交換をしました。高市政権の「責任ある積極財政」に専門家のお墨付きを得て、市場からの信認につなげる狙いがあったとみられます。しかし、招かれた学者からは、先行きの金利上昇を念頭においた財政運営を促す指摘が相次ぎました。両氏ともノーベル経済学賞候補にも名が挙がると同時に、IMF=国際通貨基金でチーフエコノミストを務めた経験もあるブランシャール氏は日本の現在の債務水準が高いとして、「プライマリーバランス=基礎的財政収支の黒字を視野に入れるべきだ」と提言しました。また、ロゴフ氏は足元で金利が上昇局面にあることから、プライマリーバランスの赤字をゼロに近い水準に保つべきだと主張しました。日本の政府債務残高のGDP比は直近で240%に上り、主要7カ国で突出しているわけですが、海外識者の注文についてはどう受け止めていますか?

答(会田):「高市総理の積極財政に海外識者が注文」というのはミスリーディングな見解です。日本経済の停滞の原因は投資不足であり、官民連携の戦略投資の拡大によって日本経済を再生するという高市政権の経済政策の方針に、両氏は賛成しているからです。総論は賛成で、財政規律を維持しつつ、政府の戦略投資を拡大する各論について、両氏は様々な意見を述べたことになります。

債務の安定と投資拡大の両立することは可能なのでしょうか?

問(寺島):招かれた学者からは、先行きの金利上昇を念頭においた財政運営を促す指摘が相次いだわけですが、債務の安定と投資拡大の両立することは可能なのでしょうか?

答(会田):両氏は、債務残高GDP比を長期的に安定させることが重要であることを指摘しています。ただ、債務残高GDP比を唯一の財政指標とすることには反対しています。金融資産を控除したネットの残高や、金利と成長率の関係など、総合的に判断することを推奨しています。そして、間違ってはいけないのは、現在の投資拡大を否定してはいないことです。投資不足が日本経済停滞の原因であることは賛同されています。日本経済再生には、財政再建ではなく、投資拡大による経済成長が必要であることも賛同されています。財政再建は、経済成長の結果でしかないということです。経済再生によって財政再建まで成し遂げるという高市政権の責任ある積極財政の方針は、両氏は深く理解しています。日本経済再生と、結果的に財政再建につながる投資拡大が必要であれば、プライマリーバランスの赤字が解消する動きが遅れることも問題はないということです。

マーケットの懸念についてはどうご覧になっていますか?

問(寺島):高市総理がかかげる積極財政は、財政悪化の懸念から市場関係者の間での警戒感が強くあります。中東情勢悪化の影響もあって、今週、外国為替市場では円相場が一時1ドル=160円台半ばとおよそ1年8カ月ぶりの安値をつけました。マーケットの懸念についてはどうご覧になっていますか?

答(会田):原油価格の上昇は、交易条件の悪化として、日本からの所得の流出につながる動きであることが円安の原因です。財政悪化による円安ではありません。国内の供給能力の棄損が懸念される時に、極度の通貨売りが起きるリスクが高まります。海外からの供給に依存することになるからです。現在、円安の水準にありますが、国内の設備投資のサイクルは上向いています。官民連携で投資を拡大して、供給能力を拡大しようとしています。将来の日本の供給能力が拡大する期待があるわけですから、極度の円売りが起きるリスクは大きくありません。原油価格の上昇による景気後退や日銀の拙速な利上げで、設備投資サイクルが腰折れてしまうと、円安の勢いが強くなってしまうリスクが高まります。

食料品の消費税減税への異論についてはいかがですか?

問(寺島):また、経済財政諮問会議に有識者として出席したブランシャール氏は、高市政権の責任ある積極財政の基本姿勢に賛同する一方、食料品の消費税減税やガソリンへの補助金には異論を唱えています。高市政権は食料品の消費税率を2年限定で0%にする検討をしています。しかし、ブランシャール氏は「私が必需品の減税を検討するなら、他の品目の税率を引き上げるだろう。そうでなければ財政赤字を増やすことになる」と日経新聞のインタビューで答えました。また、「なぜたった2年間なのかも論点だ。低所得層を真剣に支援するならそれは恒久的措置であるべきだ」と述べました。食料品の消費税減税への異論についてはいかがですか?

答(会田):両氏は、日本経済の専門家ではありませんから、日本経済への理解が不足している部分もあります。企業が借入部門で、貯蓄率がマイナスという投資超過であり、企業部門に純債務が存在している米国のような経済の姿を基準に、財政政策を考えているからです。日本では、企業貯蓄率が長期間にわたってプラスという貯蓄超過で、企業部門の純債務は既に消滅してしまっています。この問題が投資不足につながっていることは意識されているようですが、家計に所得が回る力が弱くなり、家計が困窮していることにまでは理解が深くなっていないようです。官民連携の戦略投資の拡大が、実質所得の増加として、家計に果実を回すまでには時間がかかり、その間は財政政策で家計を支えるという戦略も、まだ理解されていないようです。ただ、低所得層への支援でありば、消費減税は恒久的であるべきだというのは、正しい指摘だと考えます。

ガソリン補助金への異論についてはどう受け止めていますか?

問(寺島):一方、政府はイラン情勢で高騰するガソリン価格を一定水準に抑えるため、補助を始めています。このガソリンへの補助金についてもブランシャール氏は「恒久的に高騰が続くなら、私たちはそれを受け入れて適応する必要がある。政府は全ての価格を低く保つために存在しているわけではない」と否定しました。補助金への異論についてはどう受け止めていますか?

答(会田):補助金は一時的な施策であることは当然です。エネルギー価格の上昇に脆弱な経済であれば、投資を拡大したり、エネルギーの調達先を多角化することによって、強靭な経済にしていかなければいけません。だからこそ、強靭な経済をつくりあげるための、官民連携の戦略投資の拡大に賛成しているとみられます。特に、政府の投資を強化することが重要で、プライマリーバランスへの言及も成長率や金利の変化も見据えた中期的な財政計画の文脈でのものであることを、ブランシャール氏は強調しています。そして、公的な投資が必要かつ急務の場合には、最終的な債務安定化が保たれる限り、一時的なプライマリーバランスの赤字拡大が適切となることもあり得るとしています。

消費減税の課題についてはどうみていますか?

問(寺島):消費減税については、超党派で協議する「社会保障国民会議」の実務者会議が先週、開かれています。食料品に限定した2年間の消費税率ゼロについて、出席した経済団体から慎重な意見が相次ぎました。消費減税の課題については、「企業の事務負担の軽減」、「減税しても値下げされない可能性」などが挙がりました。これらの課題についてはどうみていますか?

答(会田):5兆円程度と言われる財源が課題となっているとみられます。しかし、2026年度の政府予算では、税収は2025年度の当初予算比で、6兆円も増加することになっています。一般歳出は2兆円しか増加していません。名目GDPが拡大を続ければ、2027年度以降の税収はそこから更に上振れます。更に、2024年度と2025年度では、当初予算から補正予算までに、歳入は7兆円程度も上振れています。財務省は、当初予算で7兆円程度、歳入を過小に見積もる癖をもっていることになります。政府の経済見通しと、財務省の控えめな税収弾性値の前提でも、消費減税が実施されるとみられる2028年度の税収は、減税が実施されていない2026年度の税収を上回ることが見込まれています。名目GDPが持続的に拡大する普通の経済の状態では、成長による税収増も恒久財源となります。消費減税はこの成長による恒久財源でできることになります。名目GDPが拡大しなかった時の成長による税収増は恒久財源とはならないという考え方が、高市首相が批判する、緊縮志向の呪縛というものです。

図:企業貯蓄率と国内設備投資サイクル

企業貯蓄率と国内設備投資サイクル
(出所:内閣府、日銀、クレディ・アグリコル証券)

日本経済見通し

日本経済見通し
日銀とCACIBのGDP、CPI見通し
(出所:日銀、内閣府、総務省、Bloomberg、クレディ・アグリコル証券)

会田 卓司
クレディ・アグリコル証券 東京支店 チーフエコノミスト
松本 賢
クレディ・アグリコル証券 マクロストラテジスト

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