この記事は2026年4月17日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「『金融政策の理論と実践』」を一部編集し、転載したものです。


『金融政策の理論と実践』

仲田泰祐 著/日本評論社 刊/3,000円+税

『金融政策の理論と実践』
(画像=きんざいOnline)

 東京大学大学院で教壇に立つ著者は、日本では新型コロナの政策分析の第一人者として有名である。同時に、世界的には金融政策研究、特にゼロ金利政策とそれがマクロ経済に与える影響の研究で第一人者として知られる。同じ分野の研究者として、最新の研究成果が取りまとめられた名著を本誌で紹介できるのは、研究者冥利に尽きる。

 本書はニューケインジアン・モデルの基礎から始まり、最適金融政策の導出、流動性のわなの下での金融政策に至るまで、金融政策の最新理論を分かりやすく、体系立てて解説する。本書で解説した分析を再現できるシミュレーションのコードをウェブサイトで提供している。

 一方で、金融政策理論の書籍というと、難解な数式や専門用語が盛りだくさんと誤解されるかもしれない。しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)でエコノミストを務めた著者の経験を交えて展開される理論と実践の掛け合いは、幅広い読者を楽しませてくれるはずだ。

 例えば、将来の金融政策を約束することで政策効果を高めるフォワードガイダンス政策は、本書の方程式を追いかけていけば、確かに正しい政策だと分かる。ただし政策当局者は、中央銀行への信頼や金融市場の安定化への懸念から思い悩みながら導入していた。こうした背景も詳しく解説されている。

 本書は米国の2010年代のゼロ金利政策や低金利・低インフレ時代、高インフレ時代の金融政策に焦点を当てているが、ゼロ金利政策は、日本はいうに及ばず、欧州などでも実施されてきた。つまり本書を読めば、過去10年分の世界の金融政策の大部分を知ることができる。世界中の政策当局者が駆使したモデルやデータを眺めながら、各国の金融政策に思いを巡らせていただければ幸いである。

(慶應義塾大学 商学部 教授 寺西勇生)

週刊金融財政事情 2026年4月28日号