株式会社メイチュー

株式会社メイチューは、1956年創業の工業炉メーカーだ。主力製品のアルミ溶解炉「ホーメル炉」は、業界トップシェアを誇る製品として認知されている。

2026年4月、代表取締役社長に就任した中島久晶氏は、株式会社一条工務店での経験を経て家業であるメイチューに入社後、社内のIT化を推進した。これにより業務効率化と付加価値の高い提案を実現している。

同社の強みである顧客との信頼関係に基づく営業戦略から、カーボンニュートラル対応、AIやオートメーションを活用した今後の展望に至るまで、中島氏に話を聞いた。

中島久晶(なかしま ひさあき)──代表取締役社長
1988年、愛知県名古屋市生まれ。2012年、南山大学卒業後、株式会社一条工務店に新卒入社。2015年、株式会社メイチューに入社し、品質管理、営業企画、総務を経験。専務取締役を経て、2026年4月に代表取締役社長就任。
株式会社メイチュー
1956年、創業。工業炉や鋳造用機械装置を製造・販売。主力製品であるアルミ溶解炉「ホーメル炉」は、数多くの特許を取得。現在は、カーボンニュートラルの達成という世界的な課題に向けた研究開発に注力。 企業サイト:https://www.meichu.co.jp/

目次

  1. メイチューの主力製品である「ホーメル炉」とは?
  2. IT導入で付加価値の高い提案を実現
  3. 年間賞与は6ヵ月分支給を目指す
  4. IT以外で営業活動をどのように進化させているか?
  5. 工業炉をカーボンニュートラル社会に対応させる

メイチューの主力製品である「ホーメル炉」とは?

── 創業からこれまでの事業の変せんを教えてください。

中島氏(以下、敬称略) 当社の創業は1956年です。もともとは鋳物用の資材を仕入れて販売する、鋳鉄の卸し問屋としてスタートしました。そこから鋳造業界に深く入り込み、溶解炉という設備の補修なども手がけるようになります。

転換点は、お客様からの「溶解炉の品質が低く、製品不良が起きている」という相談でした。当時の社長である私の父が、世の中にない高品質な炉を作ろうと開発に乗り出したのです。そうして誕生したのが、現在の主力製品である「ホーメル炉」です。

── ホーメル炉は、業界でどのような立ち位置にあるのでしょうか。

中島 ホーメル炉は、約40年前に開発された小型溶解保持炉です。当時は存在しなかった新しいジャンルの製品として、特許も取得しました。現在では、アルミダイカスト製法における業界スタンダードとして広く認知されています。

業界内での認知度はきわめて高く、トップシェアを誇るリーディングカンパニーです。「溶解保持炉といえば株式会社メイチュー」という評価を多くのお客様からいただいています。現在は、このホーメル炉を主軸に、商社機能もあわせ持つメーカーとして事業を展開しています。

IT導入で付加価値の高い提案を実現

── 中島社長が家業に戻られたきっかけを教えてください。

中島 私は次男ということもあり、もともとは会社を継ぐ予定はありませんでした。新卒でハウスメーカーの株式会社一条工務店に入社し、営業職として勤務。そこで一定の評価を得て、自身のキャリアを築くことにやりがいを感じました。

しかし、長男が継がないことになり、父から「戻ってこないか」と声がかかりました。もし私が戻らなければ、会社をM&Aで売却する計画があったようです。売却先によっては、社員に迷惑がかかる可能性も否定できないと考えました。

── そのときの心境は、ポジティブなものだったのでしょうか?

中島 自分が必要とされる場所で挑戦したいという、前向きな気持ちでした。大企業の一員として働くことも魅力的でしたが、より大きな影響力を発揮したいと考えました。何もない状態から新しい領域にチャレンジすることに、面白さを感じたのです。

2015年に入社してから約10年、会社に足りない部分の補強に注力しました。ここ数年は実質的な経営を任されており、スムーズな承継が進んだと感じます。経営者として意思決定を行うことは、自身の哲学を磨き上げるような楽しさがあります。

── 入社後に取り組んだIT化やDX推進の経緯を教えてください。

中島 私が入社した当時の社内は、アナログな文化が非常に強く残っていました。情報の共有が不十分で、一人あたりの業務負荷が過大になっていることが課題でした。長時間残業が常態化し、社員が疲弊している状況を目の当たりにしたのです。

まずは社内の業務効率化を目指し、さまざまなITツールを導入しました。情報の検索性を高めるため、製品仕様や販売実績のデータベース構築が具体的な取り組みです。これにより、過去の事例を即座に見られる体制を整え、生産効率を大幅に向上させています。

── IT化は、どのような成果につながったのでしょうか?

中島 社内の生産性が上がったことで、お客様への提案品質が劇的に向上しました。以前は現場のファイルを確認しなければわからなかった情報が、瞬時に共有されるようになっています。過去の類似案件を参考に、最適なオプションを提案できる幅が広がりました。

結果として、製品1台あたりの単価はこの10年で約1.5倍に上昇しています。原材料費の高騰もありますが、付加価値の高い提案が受け入れられた成果です。IT化は単なる効率化にとどまらず、営業力の強化にも直結すると確信しています。

年間賞与は6ヵ月分支給を目指す

── 採用活動にも注力しているそうですね。

中島 人材採用は、IT化と並んで私が最も注力する領域の一つです。この10年間で約50名を採用し、現在の社員の半数以上が私の入社後に加わったメンバーです。主力となる層が新しい世代に移行したことで、事業承継も円滑に進みました。

採用においては、技術の定着と評価の透明性を重視しています。当社の製造現場では、職人としての高度なスキルが求められるからです。どのような技術を習得すれば給与が上がるのか、明確な指標を設けています。

── 社員の定着率や満足度についても教えてください。

中島 定着率は非常に高く、自己都合による退職者は年間で1名出るか出ないかです。給与面でも、4年後までに賞与を年間6ヵ月分まで引き上げる計画を進めています。現在は4.2ヵ月分まで到達しています。

社員が安心して技術を磨き、その成果が正当に還元される環境づくりを徹底したいです。私が社長としても採用担当としても共に働いてきた仲間だからこそ、信頼関係が築けていると感じます。「人を大切にする職場」こそが、当社の競争力の源泉です。

IT以外で営業活動をどのように進化させているか?

── 営業戦略において、大切にしている考え方を教えてください。

中島 当社の営業は、アフターケアに最大の重きを置いています。溶解炉は一度導入すると10年間使い続ける設備です。そのため、新規開拓も重要ですが既存のお客様との持続可能な関係性がより重要になります。

人間対人間の深い関わりを築くため、マネージャークラスには外部研修も推奨しています。お客様の困りごとに寄り添い、迅速に対応できる人間力を養うことが目的です。この業界では、プライベートを含めたウェットな人間関係が信頼の基盤となります。

── 競合他社との差別化は、どのように図っているのでしょうか?

中島 製品の圧倒的な耐久性と、データに基づいた提案力が強みです。そもそも溶解炉は高熱を扱うものであるため、故障やトラブルを起こしやすい特徴があります。当社の製品は過酷な環境に耐えうる設計であり、その信頼性が選ばれる理由です。

また、IT化によって蓄積されたデータを活用し、最適なメンテナンス時期を提案しています。「壊れる前に直す」という予防保全の徹底が、お客様の生産ラインを守ります。この積み重ねが、他社には真似できない強固な顧客基盤です。

工業炉をカーボンニュートラル社会に対応させる

── 環境対策やカーボンニュートラルへの取り組みについて教えてください。

中島 カーボンニュートラルは、お客様にとっても避けて通れない課題です。当社の設備はガスを大量に使用するため、エネルギー転換の期待が高まっています。現在は、水素を燃料とした溶解炉の共同開発を他社と進めています。

また、電気でアルミを保温する「電気保持炉」の提案も強化。ガスで溶かし、電気で保持するというハイブリッドな運用が次世代の潮流です。お客様のニーズに応えつつ、最小限のエネルギーで最大の成果を出す設備を追求します。

── 海外市場への展開については、どのような展望を持っていますか?

中島 日系企業の海外進出にあわせ、アジアを中心に輸出を拡大しています。最近ではメキシコや南米など、新たな投資先への関心も高まっていると感じます。設備を売って終わりではなく、現地でのメンテナンス体制の構築が不可欠です。

現地の協力会社とのネットワークを広げ、グローバルなサポート体制を整えます。ビジネスマッチングなどを通じて、信頼できるパートナーの開拓を継続します。

日本の優れた技術を世界に広め、現地のものづくりに貢献したいです。

── 今後の成長戦略として、どのような展望を描いていますか?

中島 「オートメーション」と「AI活用」が、今後の大きな伸びしろになると確信しています。深刻な人手不足に悩むお客様のため、自動投入装置などの省力化設備を提案します。自社での製造販売体制を整え、炉とセットでの導入を加速させたいです。

AIについては、溶解炉のコントロールや監視の自動化を目指します。まずは現場の見える化を進めるため、センサー類によるデータ蓄積を提案しています。蓄積したデータをAIに学習させ、状況に応じた最適な運転を可能にする計画です。

── 社長個人として思う事業の将来を教えてください。

中島 私には実現したい大きなテーマが二つあります。

一つは、最小限のエネルギーで最大限の成果を生み出し、地球環境を保全することです。物理法則に限りなく近い最高効率を実現する設備をつくり出し、社会に貢献します。

もう一つは、労働者を単純作業や危険作業から解放することです。オートメーション技術によって、人が望まない仕事を機械に任せる未来をつくります。

地球環境の保全と労働者の解放。この目標に共感いただける方と、ぜひつながりたいと願っています。