この記事は2026年6月19日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「26年度以降も高水準の賃上げ率が個人消費を下支え」を一部編集し、転載したものです。
(厚生労働省「毎月勤労統計調査」)
2026年度以降も高水準の賃金上昇率が続いている。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、4月(速報)の「名目賃金」の増加率は前年同月比3.5%で、3月(確報)の3.1%から加速し、3カ月連続で3%台の伸びとなった(図表)。ボーナスなどを含む特別給与が7.4%とプラスに転じたことや、残業代などの所定外給与の伸びが4.2%と前月比で高まったことが全体を押し上げた。基本給に当たる所定内給与の増加率は3.4%と高水準を維持している。
毎月勤労統計調査では、毎年1月に調査対象の3分の1が入れ替わるサンプル替えが行われ、その要因による変動が大きい。こうした点を踏まえ、厚労省は参考資料として、当月と前年同月に共通する集計対象(サンプル全体の3分の2が対象)のみで比較した「共通事業所」ベースでの前年同月比データも公表している。この共通事業所ベースでも、4月の現金給与総額は3.1%増と3月(同2.8%増)から伸びている。
個人消費の動向を見通す上でより重要とされるのが、名目賃金から物価上昇分を除いた「実質賃金」である。こちらも前年同月比1.9%増と前月(同1.4%増)から改善し、4カ月連続でプラスとなった。名目賃金の伸びが高まったことに加え、消費者物価(持ち家の帰属家賃を除く総合)上昇率が小幅に鈍化したことが押し上げ要因となった。
なお、厚生労働省は25年から、帰属家賃を含んだ総合の消費者物価で計算される実質賃金を公表している。これを見ると前年同月比2.1%増と、従来の実質賃金よりも0.2%ポイント高くなっている。国際比較をする上で、この帰属家賃を含む物価ベースの実質賃金は比較が容易で有用だ。ただ、消費者の生活実感により近いのは帰属家賃を除いた物価上昇率であり、実際の個人消費の動向に影響を与えるのも帰属家賃を除く物価ベースでの実質賃金の方だろう。
今年の春闘の結果(賃上げ率)については、公表されている直近4月時点では十分に反映されていないとみられる。厚生労働省が25年10月に公表した「賃金引上げ等の実態に関する調査」によれば、同年4月15日までに改定後の賃金を支給し始めた企業の割合はわずか5.2%、5月15日まででも45.9%と半分以下であったことから、給与改定から実際の賃上げまでにはタイムラグがある。
もっとも、今年の春闘でも3年連続で5%台の賃上げ率が実現しており、春闘の結果が徐々に反映される5月以降も、名目賃金は堅調な伸びを維持すると見込まれる。中東情勢の悪化を受け、原油価格の高騰やサプライチェーンの乱れによるインフレ率の上振れが懸念されるものの、高水準の賃上げ率が先行きも個人消費を下支えするだろう。
伊藤忠総研 副主任研究員/高野 蒼太
週刊金融財政事情 2026年6月23日号