この記事は2026年8月6日に三菱UFJ信託銀行で公開された「不動産マーケットリサーチレポートvol.312『東京・大阪のオフィス市場予測(2026年8月)』」を一部編集し、転載したものです。


東京・大阪のオフィス市場予測(2026年8月)
(画像=no one/stock.adobe.com)

目次

  1. この記事の概要
  2. 東京では賃料上昇が続き、2030年までに約27%の上昇を予測
    1. 需要予測:短期的には堅調なオフィス需要が予想される一方、中期的には需要が増え難くなる
    2. 供給予測:今後5年間の供給ペースは低水準にとどまる
    3. 空室率予測:中期的には2%~2.5%程度のレンジで推移する見通し
    4. 賃料予測:需給ひっ迫と賃料負担力の改善を背景に、新規賃料は2030年にかけて約27%の上昇見込み
  3. 企業の賃料負担力の改善は賃料見通しの上振れ要因に
  4. 大阪は新規供給が極めて限定的であり、需給バランスの改善と賃料上昇が継続

この記事の概要

• 東京では賃料上昇が続き、2030年までに約27%の上昇を予測
• 企業の賃料負担力の改善は賃料見通しの上振れ要因に
• 大阪は新規供給が極めて限定的であり、需給バランスの改善と賃料上昇が継続

東京では賃料上昇が続き、2030年までに約27%の上昇を予測

東京オフィス市場<1>の空室率は直近で2%前後と、コロナ禍拡大前の水準に近付いている。市場の空室在庫は少なくなってきたものの、オフィス需要は堅調に増加しており、需給バランスの引き締まりと企業収益の改善を背景に、新規賃料の上昇ペースは加速している。中東情勢の緊迫化を背景に急上昇した原油価格は依然として不安定な推移が続いているものの、一時期に比べて先行きに対する過度な不透明感が後退する中、東京オフィス市場では2000年代後半のファンドバブル期を上回る賃料水準での募集が目立つようになっている。

こうした状況のもと、賃料の上昇基調はどこまで続くのか、先行きへの関心が高まっている。本稿では、今後5年間(2026年~2030年)の中期的なオフィス需給及び賃料動向について、マクロ経済予測や新築ビルの開発計画に基づき、統計モデルを用いた定量予測を更新した。

1:東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)にある基準階面積100坪以上の賃貸ビルが対象。

東京・大阪のオフィス市場予測(2026年8月)
(画像=三菱UFJ信託銀行)

需要予測:短期的には堅調なオフィス需要が予想される一方、中期的には需要が増え難くなる

企業収益の増加が設備投資や労働力の増加につながる好循環を通じて、短期的にはオフィス需要は堅調に推移する見通し(図表1)。中期的には労働力人口が減少に転じることが予想され、東京都心部のオフィス需要も次第に増え難くなる。

企業活動要因 国内景気の持ち直しにより、設備投資の増加が続くなど、企業活動の拡大はオフィス需要にプラスに寄与すると見込まれる。
雇用環境要因 当面は雇用環境の改善が見込まれる一方、中期的には少子高齢化に伴う労働力人口の頭打ちがオフィス需要を下押しすると懸念される。
賃料負担要因 賃料相場の上昇を受けて割高感が高まり、オフィス需要の抑制要因となる。
新規供給要因 2026年と2029年は新規供給が比較的大きいことにより、自社ビルや都心5区周辺部からの移転需要を喚起する効果が期待される。

供給予測:今後5年間の供給ペースは低水準にとどまる

新規供給は、今後5年間で均すと年平均12万坪程度と予測される。過去10年や過去20年の平均的な供給量は約16万坪であることと比べると、4分の3程度の供給ペースとなる。単年では2026年と2029年の供給量が比較的大きいが、20万坪を超える程の大量供給にはならず、新築ビルの供給がオフィス需給を大きく緩和させる要因にはならない。

空室率予測:中期的には2%~2.5%程度のレンジで推移する見通し

新規需要と新規供給の見通しに基づくと、空室率の低下基調が2027年まで続くと予測される。空室率は1%台に低下して需給のひっ迫感は一層強まると考えられる。その後、新規需要の伸びが減速することで空室率はやや上昇し、2030年にかけて2%~2.5%程度のレンジで推移すると見込まれる。

なお、前回(2026年1月)予測時から需給環境に大きな変化は生じておらず、先行き5年間の見通しは前回の予測結果と概ね変わらない(図表3)

賃料予測:需給ひっ迫と賃料負担力の改善を背景に、新規賃料は2030年にかけて約27%の上昇見込み

企業収益の改善が続く国内経済見通しの下、空室率の低下により需給バランスが一層ひっ迫することで、オフィス賃料相場の上昇が続く公算が大きい。

需給バランス要因 空室率が1%台に低下することで、賃料上昇ペースは強まりやすい。中期的には空室率が概ね横ばいで推移するため影響は弱まる。
賃料負担力要因 企業の一人当たり利益の増加等を背景にして賃料負担力が改善することにより、賃料上昇に寄与する。

新規賃料の見通しを過去の予測と比較した結果を図表4に示す。2026年に入って以降の賃料相場の上昇ペースが加速していること等を受けて、賃料見通しは上方修正となった。

東京・大阪のオフィス市場予測(2026年8月)
(画像=三菱UFJ信託銀行)

企業の賃料負担力の改善は賃料見通しの上振れ要因に

賃料相場の方向性は空室率の水準や変化に左右される面が大きいが、賃料水準そのものは企業の賃料負担力に依存すると考えられる。賃料負担力を定量的に把握するための代理指標として、国内の大手・中堅企業<2>の営業利益を人員数で除した一人当たり営業利益に着目すると、一人当たり利益のピークやボトムの水準は2~4年後のオフィス賃料のピーク及びボトム水準と相関が高いと言える(図表5)。

企業業績の変動がタイムラグを伴って賃料負担力、ひいては賃料相場に影響を及ぼすとみられる中、直近の一人当たり利益の水準は2000年代半ばや2010年代後半のピークを大きく上回っている。企業の賃料負担力は、既に今回の予測における2030年の賃料水準と整合的との見方もでき、先行きの企業収益の改善見通しを踏まえると、賃料見通しにはなお上振れ余地が残されている可能性もある。

2:金融業・保険業を除く全産業における資本金1億円以上の法人企業とした。

東京・大阪のオフィス市場予測(2026年8月)
(画像=三菱UFJ信託銀行)

大阪は新規供給が極めて限定的であり、需給バランスの改善と賃料上昇が継続

東京オフィス市場の予測モデルと同様の枠組みを用いて、大阪オフィス市場<3>の将来予測を行った結果を図表6・7に示す。大阪では2026年以降は新規供給が極めて限定的な上、まとまった空室も市場に少ない中、昨年竣工した大規模ビルも含めてオフィス需要は引き続き堅調である。

新規需要の大幅増加は想定しにくいが、景気の持ち直しを受けて需給バランスは改善基調を維持する見込みである。空室率の低下を受けて新規賃料の上昇傾向も途切れないと予想され、2030年までの5年間で20%程度の上昇を見込む。

3:主要6地区(梅田、淀屋橋・本町、船場、心斎橋・難波、南森町、新大阪)にある延床面積1,000坪以上の賃貸ビルが対象

東京・大阪のオフィス市場予測(2026年8月)
(画像=三菱UFJ信託銀行)
竹本遼太
MUFG 不動産研究所