この記事は2026年9月4日に配信されたメールマガジン「アンダースロー:長期金利が30年ぶりに3% アメリカが日銀の利上げに期待?」を一部編集し、転載したものです。
目次
長期金利が30年ぶりに3% アメリカが日銀の利上げに期待?
- 高市政権の積極財政による財政悪化懸念で長期金利を押し上げていることについてはどうご覧になっていますか?
- 日銀の利上げペースが加速するかもしれないことについてはどうみていますか?
- ベッセント財務長官が日銀に対して、対応を求めたことについてはどうご覧になっていますか?
- 日銀の独立性とは日本政府からだけ独立するという意味ではないのでしょうか?
以下は会田がコメンテーターとして出演している文化放送の「おはよう寺ちゃん」の内容の一部をまとめ、加筆・修正したものです。
高市政権の積極財政による財政悪化懸念で長期金利を押し上げていることについてはどうご覧になっていますか?
問(寺島):長期金利が節目となる3%を突破して、1996年9月以来の水準に切り上がりました。インフレ加速や財政拡大への懸念から世界で金利の先高観が強まっています。来年度予算の概算要求が今年度の122兆円を超えて143兆円前後となる見通しのなか、高市政権の積極財政による財政悪化懸念も広がり、長期金利を押し上げていることについてはどうご覧になっていますか?
答(会田):高市政権の積極財政のよる財政悪化懸念で、長期金利が大きく上昇しているとの認識は間違いです。2027年度の政府予算の新規国債発行額は、2026年度の30兆円程度から増加しますが、2025年度なみの40兆円程度になるとみられるからです。当時の長期金利は1.5%程度でした。よって、この間に大きく変化したものが、本当の原因であるはずです。原因はグローバルなトレンドと日銀の利上げです。グローバルに新自由主義のコスト削減によって長期投資が抑制される時代から、官民連携の戦略投資と産業政策、そしてAI投資の競争によって長期投資が拡大する時代に変化し、長期資金の需要が大きく増加していることがあります。日銀が前のめりの利上げの姿勢を示すことによって、将来的に政策金利が到達する水準のマーケットの予想が1%程度から2%台に大きく上昇したことがあります。
日銀の利上げペースが加速するかもしれないことについてはどうみていますか?
問(寺島):そんな中、従来、半年程度の間隔で決めてきた日銀の利上げが、加速しそうになってきました。そのワケは物価上昇圧力の強まりで、日銀の高田・審議委員は会見で、2024年3月以降およそ半年ごとに決めてきた利上げに関して、「連続になることも一般論としてあり得る」と述べました。そして、日銀の植田総裁は、17、18両日の次回金融政策決定会合で利上げを検討する意向を表明しました。日銀の利上げペースが加速するかもしれないことについてはどうみていますか?
答(会田):長期金利の大きな上昇は、日銀の利上げの遅れによる景気とインフレが過熱する懸念が原因であるという間違った認識が背景にあります。この間違った認識によって、日銀が利上げをすれば、過熱懸念がなくなり、長期金利は下がるという意見も多くみられます。しかし、日銀とマーケットの見通しは、実質GDP成長率0%台で、インフレ率は2%台と、全く過熱感はありません。実際に、日銀が前のめりの利上げの姿勢を示すに従って、長期金利は上がり続けています。日銀の利上げが景気を悪化させる見通しにつながらなければ、利上げで長期金利が下がる可能性は極めて小さくなります。政府と日銀ともに、景気を悪化させようとは考えていないはずです。
ベッセント財務長官が日銀に対して、対応を求めたことについてはどうご覧になっていますか?
問(寺島):日銀の利上げが加速しそうになってきた要因には、円安修正へ日銀の対応を望むアメリカの「外圧」の影響もあるとの指摘もあります。アメリカのベッセント財務長官は、「日本政府や日銀が円高につながる措置を講じると信じている」と述べ、日本側の判断に期待を示しました。アメリカは円安や日本の金利上昇がアメリカの金利を押し上げるリスクを警戒してきました。7月末に日米両政府が円買いの協調介入を実施したわけですが、ベッセント財務長官が日銀に対して、対応を求めたことについてはどうご覧になっていますか?
答(会田):ベッセント財務長官は、米国の長期金利の大きな上昇を懸念しているようです。円安が日本のインフレ懸念を高め、長期金利が大きく上昇することが、米国に波及することを恐れているとされます。しかし、円安は日銀の利上げの遅れが原因ではなく、日本の投資拡大が欧米より遅れていることが原因です。投資が強い国の通貨は金利先高感も生まれて買われ、弱い国の通貨は売られます。よって、官民連携の戦略投資と産業政策で投資を拡大し、円安の動きを止めようとしています。間違った認識によって、日銀の利上げが加速し、投資の動きが腰折れれば、意に反して、更に強い円安の力がかかってしまうリスクになります。「政府は金融政策に介入すべきではない」と繰り返し主張されてきたのに、米国の財務長官が同様の要求を日銀に向けても、「独立性を守れ」という声はほとんど上がらないことは大きな問題です。間違った認識による外圧で経済政策が歪められれば、国民経済の健全なる発展が妨げられます。
日銀の独立性とは日本政府からだけ独立するという意味ではないのでしょうか?
問(寺島):6月の「骨太ショック」では、経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」での記述を背景に、日銀の独立性や財政健全化が脅かされるのではとの思惑から金利が急騰して、政府は火消しに追われました。日銀の独立性とは日本政府からだけ独立するという意味ではないのでしょうか?
答(会田):6月の「骨太ショック」は、一部のメディアがマーケットのナラティブとして作り上げたもので、事実ではないと考えられます。政府が日銀に対して、「強い経済成長と安定的な物価上昇の両立」のデュアル・マンデートを求めていることは、昨年の高市政権の発足から何度も明らかになっていたからです。それにも関わらず、「ショック」を受ける素人のようなマーケットの参加者は多くないはずです。日銀法が定める政府との連携義務の枠内にある政策的選択であり、物価安定のみを単一の責務とするECB(欧州中央銀行)型から、物価安定と最大雇用の双方を責務とするFRB(米連邦準備制度)型への転換を試みるもので、独立性の毀損には当たりません。政府は、骨太の方針で「2%の物価安定目標の実現の下で、できるだけ早期に、実質で1%を上回る、名目で3%を上回る経済成長を定着させ、更に引き上げていく」ことを示しています。一方、仮に外国政府の介入によって日銀の利上げが事実上強制されたのであれば、日銀の独立性は深刻に毀損されたと言わざるを得ません。独立性を失った日銀への不信感が、円の信認低下を通じて更なる円安圧力を生み出すという逆説的なリスクを招きかねません。中央銀行の独立性は、それ自体が通貨の強さを支える根幹であることを、改めて認識する必要があります。
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