株式会社フライトソリューションズ

株式会社フライトソリューションズの代表取締役社長・片山圭一朗氏は、技術者としての視点を持つ経営者だ。

電気通信大学を卒業後、日本初のコンピューターグラフィックマシンの開発に携わり、1988年に前身となる会社を創業。2004年には上場を果たし、現在は社長兼CTOとして技術開発の最前線に立ち続けている。

その片山氏が一貫して掲げてきたのが、「技術を、役に立つ形で社会に実装する」という信念である。大学の研究とは違い、世の中の役に立たなければ意味がない——。その哲学が、同社の歴史そのものを形づくってきた。

いま同社が向き合うのは、BtoB取引の約57%がいまだ電話やファックスで行われているという現実だ。BtoCではネット購入が当たり前になった一方、企業間取引は「一物多価」や特殊な発注単位といった商習慣に阻まれ、デジタル化が大きく遅れている。

片山氏は、中小企業でもスモールスタートで始められるBtoB EC「EC-Rider Primo」でこの壁に挑む。さらに、2027年4月の犯罪収益移転防止法の改正を追い風に、デジタル本人確認という領域にも大きな成長機会を見いだしている。

決済・EC・本人確認という3つの事業を、長年培ったSIの技術で束ねようとする片山氏に、その狙いと見据える社会像をじっくり聞いた。

片山 圭一朗(かたやま けいいちろう)──株式会社フライトソリューションズ 代表取締役社長
1962年、東京都生まれ。1984年、電気通信大学を卒業後、大学発ベンチャーに開発責任者として参画し、日本最初のコンピューターグラフィックマシンの開発に従事。1988年、前身となる株式会社フライト(現:株式会社フライトソリューションズ)を創業、代表取締役社長に就任。2004年東証マザーズ(現:東証スタンダード)への上場を果たし、現在も代表取締役社長兼CTOとして技術開発に携わる。現在は経営の舵取りを担いつつ、技術の社会実装を信念に、決済・EC・本人確認の各領域で革新的なソリューションを展開している。
株式会社フライトソリューションズ
1988年創業の、「Technology Change the World」を掲げるITソリューション企業。BtoB向けECサイト構築パッケージ「EC-Rider」シリーズや、マルチ決済端末、デジタル本人確認ソリューション「myVerifist」などを提供。高度なSI技術を強みに、企業のDX推進を支援している。
企業サイト:https://www.flight.co.jp/

目次

  1. 技術を社会に役立つ形で実装することへのこだわり
  2. BtoB取引の57%がアナログという現状を打破する新サービス
  3. SIとしての豊富な知見が他社パッケージとの差別化を生む
  4. 2027年4月の法改正がデジタル本人確認市場の追い風となる
  5. 決済・EC・本人確認の3事業をSIの技術で統合する
  6. あらゆる情報がスマートフォンに集約される未来を見据えて

技術を社会に役立つ形で実装することへのこだわり

── 創業以来、どのような考えで事業を展開してきましたか。

片山氏(以下、敬称略) 当社の原点は技術にあります。私自身が技術者であり、数年前まで現場でソフトウェアを書いていました。最近は優秀な若手が育ち、私の出番はなくなりましたが、2022年ごろまでは現場を見ていました。

ITビジネスには価格競争やアイデア勝負などさまざまな側面がありますが、私たちは一貫してテクノロジーで世界を変えることを目指しています。

こだわっているのは、技術を役に立つ形で実装することです。大学の研究とは異なり、世の中の役に立たなければ意味がありません。

たとえば、マイナンバー関連のソリューション「myVerifist」(マイベリフィスト)では複数の特許を取得していますが、私たちが重視しているのは、特許の保有数ではなく、偽造身分証による不正など、現場が抱える課題の解決に技術を役立てることです。実用的な技術で社会に貢献することが、創業以来変わらない当社の姿勢です。

── 4月に中小企業向けBtoB EC構築・受発注システムの新ラインアップ「EC-Rider Primo」(イーシーライダープリモ)をリリースしています。なぜ今、BtoB EC市場に着目したのですか。

片山 BtoCの世界では、楽天やAmazonなどの利用が当たり前となり、対面でしか買い物をしない人はほとんどいません。

一方でBtoBの世界では、経済産業省のデータによると、大手メーカーと街の小売店との取引の約57%が非電子化、つまり電話やファックスなど、アナログな手段で行われています。この現状には、私自身も非常に驚きました。

BtoB ECの導入が進まない理由は、取引の複雑さにあります。BtoCのように「1個いくら」の商品をポチッと押すだけでは済みません。

たとえば園芸店の砂利なら「1キロ単位で2.5キロ分」、粘着テープなら「幅と長さ」で注文します。また、取引先ごとに価格が異なる「一物多価」も一般的です。こうしたBtoB特有の商習慣が、システム化の大きなハードルとなっていました。

BtoB取引の57%がアナログという現状を打破する新サービス

── 既存のBtoB ECパッケージがある中で、新サービスを開発したきっかけは何ですか。

片山 従来のパッケージは大型で、導入に数千万円のコストと長い期間を要するものが主流でした。同業他社も同様の価格帯であり、これが中小企業の導入を阻むボトルネックとなっていました。

一方で、安価なBtoC向けパッケージをカスタマイズしても、BtoB特有の発注単位や商習慣には十分に対応できません。また、同じく安価なBtoB向けパッケージでは、そもそもカスタマイズに対応していないなどの理由で、結局うまくいかないケースが多く見られました。

必要とされているのは、BtoB特有の商習慣に対応していて、かつ手軽に始められて効果を実感できる中間層向けのパッケージです。

スモールスタートで始め、事業が拡大した際に上位パッケージへ移行できる流れを作るべきだと考えました。大手メーカーの新規事業や、予算の限られた中小企業でも導入しやすい選択肢を提供することで、アナログな取引を変えていきたいという思いがあります。

── システムに業務を合わせるASP型の難しさについてはどう考えますか。

片山 すべての業務をシステムに合わせるのは確かに困難です。

しかし、私たちは最大公約数的な効率のよいフローを設計しています。ERPの世界でも、業務フローをシステムに合わせて改革するほうが効率は上がると言われます。当社のパッケージも、これまでの膨大なカスタマイズ経験をもとに、多くの業種で共通して使えるフローを設計し、そのフロー上で動作する必要な機能を標準で備えています。

現在は、さまざまなお客様の声を直接うかがっている段階です。私たちの想定と市場のニーズに乖離がないかを確認し、必要であれば迅速にバージョンアップを行います。

無理に売り上げを追うのではなく、上半期はお客様からの「ここが合わない、この機能がほしい」という声も貴重な材料として蓄積し、より市場の需要に合った製品へと磨き上げる時期だととらえています。

SIとしての豊富な知見が他社パッケージとの差別化を生む

── 他社のECサービスとの決定的な違いはどこにありますか。

片山 当社の強みは、BtoBに特化した専門家が作ったパッケージであることです。

他社の多くはBtoC向けを改造してBtoBに対応させていますが、私たちはこれまで、主にエンタープライズ向けのBtoB ECパッケージ「EC-Rider B2BⅡ」を展開してきました。「EC-Rider B2BⅡ」をベースに機能の最適化し、標準機能とオプション機能に分けることで、お客様が導入しやすい価格でサービスを展開したのが「EC-Rider Primo」です。BtoB特有の複雑な業務を知り尽くしているからこそ、痒いところに手が届く設計が可能です。

── 長年BtoB領域で培ってきた知見について詳しく教えてください。

片山 当社のルーツは、2004年に上場したSI(システムインテグレーション)企業にあります。

長年、大手メーカーの基幹システムや物流システムの開発に携わってきました。特に物流系には強く、日本最大手の物流会社のシステムなども手がけています。メーカーがどのように在庫を管理し、どのように配送するのかという裏側の仕組みを熟知している点は、大きなアドバンテージです。

たとえば、カタログギフト最大手の基幹システムも当社が担当しています。調達から申し込み、在庫管理、倉庫管理、配送までの一連の流れをすべて把握しています。BtoCのパッケージ会社とは異なり、私たちは「モノが動く仕組み」を深く理解している。このSIとしての経験値が、ECサイトを構築するうえでの強力な武器となっているわけです。

他社の多くはパッケージソフトの専業メーカーですが、私たちはリーマンショック前までSI専業でした。

あらゆる業種の基幹システムを構築してきた経験があるからこそ、業種ごとの細かな商習慣にも柔軟に対応できるのです。技術集団として、単なるソフトウェアの提供にとどまらない深い知見を製品に注ぎ込んできたつもりです。

2027年4月の法改正がデジタル本人確認市場の追い風となる

── 「技術の社会実装」という考え方は、製品にどう反映されていますか。

片山 お客様が手軽に使い続けられる環境を整えることが、私たちの考える社会実装です。「EC-Rider Primo」では、1ヵ月間の無料トライアルや、必要な機能だけを選べるオプション形式を採用しています。

最初からすべての機能を盛り込むと高額になりますが、スモールスタートを可能にすることで導入のハードルを下げています。

── 市場環境の変化を見据え、EC以外に注目している領域はありますか。

片山 デジタル本人確認の領域には非常に大きな可能性を感じています。

当社は「myVerifist」というマイナンバーカード読み取りソリューションを展開しています。現在、マイナンバーカードを用いた公的個人認証サービスを提供するには、プラットフォーム事業者として主務大臣の認定を受ける必要があります。当社もこの認定を取得しており、およそ20社ある認定事業者の中で、対面でカードの読み取り認可を得ているのは当社だけです。

この領域が注目される背景には、2027年4月に予定されている「犯罪収益移転防止法」の改正があります。指定された45業種において、ICチップを用いたデジタルな本人確認が義務化される見込みです。

これにより、これまで目視で行われていた本人確認が、一気にデジタル化へと舵を切ることになります。私たちはこの変化を、大きな成長の機会ととらえています。

本日(7月15日)も、フェリカネットワークス様から発表された「デジタル学生証」への対応を公表しました。スマートフォン内のセキュアな領域に学生証情報を格納し、かざすだけで出席確認や図書の貸出ができる仕組みです。

これもデジタルIDの一種です。

決済・EC・本人確認の3事業をSIの技術で統合する

── 本人確認市場は今後どのように変化すると予測していますか。

片山 これまでは、法令上の明確な義務がないこともあり、本人確認のデジタル化に向けた企業の対応は十分に広がっていませんでした。

しかし、来年4月からは法令による義務化が進み、状況は変わり始めると考えています。まずは本人確認の厳格化が求められる携帯キャリアや金融機関で導入が進み、徐々に他の業種へ広がっていくと考えています。

たとえば、高級貴金属店では転売目的の不正購入を防ぐために、すでに当社のシステムを活用して厳格な本人確認を行っている事例もあります。

不動産業界なども、将来的にはデジタル本人確認が広がっていくはずです。 私は2030年ごろには指定された幅広い業種でデジタル対応が一般的になっていくと考えています。偽造身分証の利用やマネーロンダリングなどの不正を防ぎ、誰もが安心して取引できる社会をつくる。そのために技術で貢献することに私たちの存在価値があると考えています。

── 決済、EC、本人確認の3事業はどのようにつながっていくのでしょうか。

片山 これら3つの事業は、SIの技術を「のりしろ」にして密接につながっています。

たとえば、当社の決済端末はクレジットカード決済だけでなく、マイナンバーカードの読み取りも可能です。決済端末を導入している携帯キャリア様などで、そのまま本人確認ソリューションを展開できる強みがあります。

また、ECサイトの裏側では銀行の審査部門などとのシステム連携が必要です。ここで私たちのSIとしての開発力が生きてきます。

お客様の取引フロー全体を技術で下支えし、セキュアな環境でモノが買える仕組みを提供する。決済、EC、本人確認をバラバラに提供するのではなく、一つのソリューションとして統合できるのが当社の特徴的な点です。

あらゆる情報がスマートフォンに集約される未来を見据えて

── 10年後の社会において、どのような価値を提供していたいですか。

片山 10年後には、専用端末に物理的なクレジットカードを差し込む現在の形だけでなく、スマートフォンや生体認証を活用するなど、決済や本人確認方法はより進化・多様になっているでしょう。

私たちは、技術をコアにする会社として、社会や技術の変化を捉えながら、その時代に必要とされるサービスを生み出していきたいと考えています。

今後はあらゆる情報がデジタル化され、マイナンバーカードや運転免許証、学生証などがスマートフォンで利用する場面が増えていくでしょう。利便性が飛躍的に向上する一方で、本人の情報を安全に扱い、必要な場面で正確に確認する仕組みが、これまで以上に重要になります。

スマートフォンに情報が集約されればされるほど、私たちの出番は増えます。当社は長年、iOSやAndroidを活用した決済・本人確認サービスの開発に取り組んできました。デジタルIDの国際標準規格であるmdocへの対応や、パスポートのICチップ読み取りなどもその延長線上にあります。

技術の進化をしっかりとウォッチし、次の時代のビジネスを創造し続けることが私たちの使命です。

── これから5年、10年で、私たちの生活環境はどう変わるのでしょうか。その変化のなかで、フライトソリューションズはどんな役割を担いますか。

片山 私たちの生活環境は、これから5年、10年で劇的に変化します。マイナンバーカードの普及を阻んでいた「紛失し悪用される恐れから持ち歩きたくない」という心理的ハードルも、スマートフォンへの集約によって解消されます。

デジタルとリアルの境界が薄れていくなかで、安全性と利便性を両立した仕組みはますます重要になります。フライトソリューションズとしても、技術を社会で役立つ形にするという創業以来の姿勢を大切にしながら、これからのインフラを支えていくサービスを生み出していきたいと考えています。その成長の過程を、ぜひ期待して見守ってください。

※本記事は2026年7月に実施した取材に基づくものです。発言内容は取材当時の状況に基づいており、現在の状況とは異なる場合があります。

氏名
片山 圭一朗(かたやま けいいちろう)
社名
株式会社フライトソリューションズ
役職
代表取締役社長

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