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化粧品・健康食品の研究開発をはじめ、レストランや宿泊事業などを手がける株式会社アルソア慧央グループは、山梨県・小淵沢の自然のなかに本社を構え、研究所も工場も農園も自社で持つという道を選んできた。1972年の創立以来、企業理念に基づいた製品づくりを続け、人から人へというつながりを大切にした販売を選んでいる。

取締役社長の滝口玲子氏は、創立10周年にあたる1982年に入社し、営業やインストラクターとして現場を歩んだのち、CI開発や長期ビジョンの策定に携わってきた。2021年に化粧品・食品・レストラン宿泊事業の3社を統合し、2026年には、55年以上続くスキンケアシリーズの大幅な刷新にも踏み切っている。次の100年に向けて変えないものは何かを、滝口氏に聞いた。

滝口玲子(たきぐちれいこ)/取締役社長
1982年 株式会社央粧(現:株式会社アルソア慧央グループ)入社。全国のビューティーカウンセラーの教育育成部門の責任者として長年に渡り多くの女性たちに美しく健康に幸福(しあわせ)に輝く生き方を提唱。山梨県・小淵沢より、自然と調和したライフスタイルを発信している。
株式会社アルソア慧央グループ
1972年創立。化粧品、健康食品、浄活水器の研究開発・製造・販売を主たる事業とし、その他、プラントベースの食事業や、小淵沢でのカフェ、レストラン・宿泊事業(女神の森)など幅広く展開。「人と自然との調和の中に、真の健康と幸福を創ります」という企業理念のもと、その理念を具現化するため、1998年に山梨県北杜市小淵沢の自然豊かな地へ本社を移転。「心・体・肌」のすべてが健康であることで真の美しさが生まれるという「三健の精神」を永遠不変のテーマに、企業活動を展開している。人生100年時代、人と地球の健康と幸福を目指した新たなブランドメッセージ『Syn-Life(シン-ライフ)』のもと、自然と調和したウェルネスの実現を目指すライフスタイルを提案し、一人ひとりの幸福な人生に寄り添い続ける活動を展開している。
企業サイト:https://www.arsoa-keio-group.co.jp/

目次

  1. イベントで交わされた「ありがとう」が入社の決め手に
  2. 東京・渋谷から山梨・小淵沢への移転が社長就任の転機に
  3. 自然発生的に生まれた3事業を統合した理由
  4. 自社の研究所と工場が支える理念に基づく一貫性
  5. 基本思想を変えずに刷新した55年目を迎えるスキンケア

イベントで交わされた「ありがとう」が入社の決め手に

── 現在は取締役社長を務めていますが、入社のきっかけを教えてください。

滝口氏(以下、敬称略) 1982年、会社の創立10周年にあたる年に入社しました。当時はまだ20代で、それまでは編集の仕事や弁護士事務所で法律関係の仕事を経験してきましたが、自分が一生続けられるライフワークになる仕事は何だろうと、ずっと考えていました。

編集の仕事では夜中まで原稿に追われていましたし、法律事務所では一件ずつ家を訪ねて書類を受け取るような仕事もしていました。どれだけ懸命に働いても、「ありがとう」と言われる機会はほとんどありませんでした。

美容の勉強をしていたので、入社前に、お手伝いで広島のイベントに行かせてもらったことがあります。100人ほどのお客様が集まる場でしたが、そこで初めて出会ったお客様が最後に私の手を握って、「あなたに会えてよかった、ありがとう」と言ってくださいました。こんなふうに人に喜んでもらえる仕事ができたらいい。そのときの感動が、入社の決め手になりました。

── 入社後はどのような仕事を担当したのですか?

滝口 まずは営業やインストラクターとして全国を回りました。皮膚生理学に基づいた肌の仕組みやアルソアの黒い石けん、クイーンシルバーをはじめとした肌のチカラを引き出すスキンケア、腸内環境の重要性をはじめとした健康な体づくりや予防医療、食のあり方など、アルソアが理想とするライフスタイルをお伝えしてきました。こうした現場でお客様と接した経験が、今も私の一番の土台になっています。

現場にいると、お客様がこういうものを求めているとか、こう伝えればもっと届くのに、ということが見えてきます。当時は会社がまだ小さく、提案すればどんどんやってみなさいという雰囲気がありました。自分で動ける余地が大きい、創立期ならではの環境だったと思います。そこから企画やPRなど、部署を問わずさまざまな仕事に携わるようになりました。

── 社名を「アルソア」に変更した経緯を教えてください。

滝口 当時の社名は「株式会社央粧」でした。これからの21世紀にふさわしい会社になろうという流れのなかでCI(コーポレート・アイデンティティ)の導入が決まり、私も勉強しながらそのプロジェクトに加わりました。デザインやブランドイメージの仕事に携わるようになったのも、このときからです。創立17年目にあたる1989年に社名が変わりました。

創立20周年を前に、今度はどういう会社に成長していくかという議論が始まりました。創立当初から、「人と自然との調和の中に、真の健康と幸福を創ります」という企業理念とともに、「心・体・肌」すべてが健康であることで真の美しさが生まれるという「三健の精神」を掲げています。この考えを具現化する為、中長期事業計画「アルソア・オデッセイ」を策定。神話の勇者が旅をしながら故郷に戻る物語になぞらえ、私たちも未来へ向けての舵を切りました。このビジョンには、自然のなかでライフスタイルを体験できる滞在型施設という構想も入っていました。それが後の本社移転につながります。

東京・渋谷から山梨・小淵沢への移転が社長就任の転機に

── 本社を東京・渋谷から山梨県・小淵沢に移転しています。当時の状況を教えてください。

滝口 移転までの3年間、そして1998年に移転してから28年間、本当に新しいことの連続でした。苦労というより、毎日が冒険のようで、つらいと考えるより前へ前へと進むことのほうが大きかったと思います。

気がかりだったのは、社員がどれだけ一緒に来てくれるかということでした。みんな東京・渋谷の化粧品会社に就職したはずなのに、行き先は八ヶ岳と南アルプスに囲まれた大自然の森の中です。それでも当時の社員が理念の実現に賛同して一緒に移転を果たしてくれました。今はリーダーの立場にいる人たちです。

当時は、まわりに飲食店やスーパーなどもない場所でしたので、社員食堂を開設し社員が食から健康になる取組みを始めました。同時に、農業体験などを通して自然と共生する暮らしのあり方の実践が、業務とともに遂行されるようになりました。

── 移転から数年後に社長に就任しています。きっかけを教えてください。

滝口 会長や副会長、そして多くの社員と一緒に、会社のビジョンや夢を描いてきた積み重ねがありました。大きな会社ではないので、みんなで意見を出し合いながらプロジェクトを進めるうちに、責任を引き受ける時期が来たのだろう、という感覚だったと思います。

── 会長との役割分担はどう築いたのでしょうか?

滝口 会長は理念や経営の哲学もビジョンも、大きな視野で先見性を持って判断されています。ですから、私たちはそれを具体的な形にして実現する実践部隊だと考えました。もともと営業も企画も自分でやってきた立場ですし、会社の方針と自分の夢がずっと重なってきたので、一貫性のあるなかで仕事ができたと思っています。

自然発生的に生まれた3事業を統合した理由

── 2021年に化粧品・食品・レストラン宿泊事業の3社を統合しています。最も重視したことを教えてください。

滝口 もともとは化粧品に軸足を置いていましたが、本当に美しくなるには体の中から健康であることが大事で、そのためには生活そのものが重要だという考えがありました。

東京ではできなかったことが、小淵沢に来てできるようになりました。それが食の分野です。水やミネラル、健康のための食については実践してお見せする場ができ、その発展型として、食のブランド「ビオクラ」が生まれています。

全国から販売に関わる方やお客様がたくさん来てくださるようになり、宿泊施設やレストラン、コンサートや演劇など地域と交流しながら文化発信ができる「アルソア女神の森」が誕生しました。ただ、それぞれが独立していたので、相乗効果までは生まれにくい状態でした。お互いを生かし合って社会に大きく発信するための準備ができたと感じたので、統合に踏み切りました。

── 組織文化の統合はスムーズに進んだのでしょうか?

滝口 最初のころは、それぞれの事業のやり方があり、すり合わせに時間がかかった面はあります。それが少しずつ、お互いに気軽に相談できる関係に変わってきました。どうしたらいいだろう、こうしてほしい、ということを社内で素直に言い合えるようになっています。

その象徴が、毎年夏に開催する「アルソア ファミリーフェス」です。以前は販売に関わる方やお客様が来てくださることが多かったのですが、まだアルソアを知らない方や地域の方にも知ってもらおうと、会社を開放して、美と健康の様々な体験やアルソアが長年継続している地域や社会貢献活動にもふれていただく催しです。

社員それぞれが、自分にはこれができる、協力すればこんなことができる、と自分たちで考えて持ち寄ってくれます。こちらが指示しているわけではありません。その姿を見て、認め合い、活かし合う会社になったのだと感じました。

自社の研究所と工場が支える理念に基づく一貫性

── 自社で研究所と工場を持つ体制を築いています。この体制の意味を教えてください。

滝口 最大の強みは、理念に基づいた一貫性です。私たちの価値判断そのものが理念から生まれているので、判断の軸がぶれません。そこから生み出される製品も発信も含めて一貫している点が、一番の強みだと考えています。

化粧品の会社は数多くありますが、研究所と工場の両方を自社で持つ会社はそれほど多くありません。研究開発から製造までを自分たちで担うことで、独自性のある高品質の製品を作り込むことができます。

私たちは、肌が本来持っているチカラを生かすという考え方を大切にしています。創始者が、肌の悩みを抱えた方の力になりたいという気持ちから始めた会社なので、自社で定めた基準がとても高い。その基準に基づいて、安全性・機能性・専門性の3つの観点から責任をもって開発製造しています。

── 技術面での特徴を、専門用語を使わずに教えてください。

滝口 処方設計において、水は非常に重要な役割を果たしています。アルソアでは、肌内部のミネラルバランスに近い、肌なじみのよい水を自社で開発製造しています。また、日本全国の自然素材を探求し、その力を製品に活かしてきました。植物性温泉水(モール水)もそのひとつです。自然の恵みである素材は非常に繊細なため、それを効果的に化粧品へ配合するには高度な技術が欠かせません。

健康食品では自然調和型農法の自社農園を持ち、農薬を使わずに野菜を生産し発酵飲料をつくっています。菌を加えて発酵させるのではなく、野菜についている微生物の力で自然発酵させることで、18種もの植物性の乳酸菌を含んだ発酵飲料ができあがります。その過程で免疫力の高い新種の乳酸菌を発見し、当社で命名、国際的な機関で登録・認証も受けました。

工場には「清潔こそ最高の防腐剤」という合い言葉があり、製薬会社レベルの環境で化粧品をつくっています。いち早く環境への取組みも行い、2000年にはISO14001を取得、2021年にはゼロエミッションも達成しています。研究・生産・製造と三位一体ですべてが循環していることが強みであり特徴だと考えています。

── 創立時の思いを、今どのように受け止めていますか?

滝口 創始者は、当時の化粧品公害などで肌トラブルを抱えた日本の女性たちに、美しい肌を取り戻してほしいと願い、アルソア クイーンシルバーを開発し会社を始めました。その思いを真摯に受け止め、小淵沢から世界に向けて発信していきます。

人生100年時代のなかで、年齢を重ねても元気で美しく輝いていられること。そこに貢献したいと思っています。肌だけでなく心から健康であることを、日常のライフスタイルとして実践できる製品やサービスをお届けしていきたいと考えています。

── 美しさへの向き合い方として、大切にしていることは何でしょうか?

滝口 美しくなるための選択肢は人それぞれで、どれが正しいというものではないと思っています。そのうえで私たちがお伝えしたいのは、自分自身が美しく変化する過程にある歓びや充実感です。

本来備わっている自分の素晴らしさに気づき、自分が変わったと感じられたとき、その歓びには波及性があります。自分だけでなく、家族も友人も、地域や社会まで幸福感が広がります。アルソアという社名の由来「歓喜」にも、そうした幸福への願いが込められています。

その一環として、小淵沢でのファスティングといった、日頃のライフスタイルを見直し改善する独自のプログラムを開催してきました。参加された皆さまが前向きに変わる姿に接すると、内面から変わることの意味をあらためて感じます。

── 販売は今も対面にこだわっています。その理由を教えてください。

滝口 真の美しさのためには、単に製品をお届けするのではなく、ライフスタイルまで関わりたいという思いがあるからです。お客さまに最適なスキンケア製品を選択して頂くためには、肌状態を知ることや悩みを共有することが大切です。それにはお会いして話を聞き、一緒にサポートすることが欠かせません。肌や環境は人それぞれ違いますから、カウンセリングとともに、その方に最適な使用方法をお伝えしたい。人が介在しなければ伝わらない部分は、やはり大きいと感じています。通販などでは正しくお使いいただけない場合があることも事実なので、アルソア ビューティーカウンセラーの知識や経験、コミュニケーションを大切に、サロンなどの体験の場を増やしていくことを目標にしています。人から人へ、心から心へ、お客様に寄り添い続け、共に喜びのある関係づくりを目指しています。

基本思想を変えずに刷新した55年目を迎えるスキンケア

── 55年近く続くスキンケアシリーズを今夏、大幅に刷新しています。その考えを教えてください。

滝口 基本は変えていません。洗う、除く、潤す、というスキンケアの考え方はそのままに、これまでのものにさらに磨きをかけたバージョンアップです。肌を清潔にして、汚れや古い角質を取り除いて潤す。そのステップは変わりませんが、つくった当初より環境がずいぶん変わりました。気候変動や空調も含めて、乾燥しやすい暮らしになっています。お客様の関心も世代ごとに多様化していますので、それらに応えることを考えました。

自社農園も15年が経過し、オーガニックで野菜をつくるノウハウから発展して、今回のリニューアルでは、農薬を使わないと栽培は不可能と言われてきたブルーローズを無農薬で栽培することができ、化粧品の原料化が可能になりました。長年かけてきたことが形になりました。

── 特定の世代に向けた刷新だったのでしょうか?

滝口 創立55年を迎えるブランドですから、三世代、四世代で使ってくださっている方もいます。母から娘に、そして孫にまでアルソア クイーンシルバーの使い方を教えて、小さな子どもたちがきちんと泡立てて洗っている。そんなうれしい継承が起きています。

今回は、乳幼児テストをクリアして赤ちゃんから使える製品も登場しています。赤ちゃんからシニアの方まで生涯お使い頂ける製品設計にしています。

アルソア本社がある、山梨県・北杜市のスーパーサイエンスハイスクール指定校の授業に取り上げてもらうなど、若い世代との出会いも増えました。社員が1年間授業を担当しています。

── 今後、新しい製品の展開も考えていますか?

滝口 素材を自分たちで見つけて栽培し、化粧品の独自原料にするところまで自社でできるようになりました。数年のうちには、また新たな素材や製品をお披露目できるかと思います。

研究所がありますので、素材は研究員が常に探索して提案してくれます。希少性が高い種や植物をていねいに育て、製品の素材、化粧品の原料にする。新たな開発を常に進めているので、次に発表できると思うと本当に楽しみです。社員の力に感心しています。

── 次の100年に向けて、変えてはいけないものと変えるべきものを教えてください。

滝口 企業理念は変わらず、これからも追求していきます。「人と自然との調和の中に、真の健康と幸福を創ります」という考え方です。自分だけでなく、家族の健康から地域や社会との健康へと拡げていく。健康と幸福の循環は、永遠のテーマだと考えています。

この「人と自然との調和」から、少し視座をあげて、プラネタリーヘルスという考え方も取り入れた新たなブランドメッセージが「Syn-Life(シンライフ)」です。2015年に世界で最も影響力のある医学雑誌「ランセット」で発表された、人と地球がどう共存して健康に過ごせるかという視点です。私たちは人と地球をひとつの大きな命だと考えていますから、この視点はこれからさらに重要です。

小淵沢という自然のなかで続けてきた意味と価値。創立時の志や使命は変えずに、時代に合わせて最適化していくことが必要です。「Syn-Life」というブランドメッセージには、新たな時代にあわせてアップデートした私たちが進むべき指針とお客様とともに実現したいメッセージが含まれています。

── 同じくらいの社歴の会社を率いる経営者に、伝えたいことはありますか?

滝口 恐れ多いことですが、自分たちの理念や使命、志を中心に置いたうえで、変化を恐れないでほしいと思います。中心の軸がぶれなければ、変化することは成長でもあります。もうひとつは、個の力は小さいということです。皆の力を一つに合わせることで、大きな推進力へと変わります。一人ひとりのスキルや個性を信頼し、その力を発揮することで、ひとりでは成しえないことも見えてきます。

さらに、同じ価値観や志を持つ方が集うことで、社会を変化させていく原動力ともなります。

── 化粧品業界は今後どうなると考えていますか?

滝口 グローバル化が進みます。日本の化粧品という枠ではなく、世界のなかでどういう立ち位置を持つのかという話になります。海外ブランドとの競争も、以前とは比べものにならないほど活発になりました。

化粧品の基準についても、国際的な基準との調和が業界全体の課題になっています。来年ごろから勉強会や基準づくりの動きが本格化する見通しです。

日本の化粧品は、安全性などについて緻密に取り組んできました。良い水も土壌もあり、これだけ自然の恵みに囲まれた国は世界を探してもなかなかありません。自然の力を生かして美しくなることは、人の基本的なあり方だと思っています。私たちアルソアも日本の化粧品会社として、安心安全、製品の確かさといった日本らしい強みと、アルソアにしかできない魅力を通して、世界に負けない製品力をしっかり打ち出していきたいと考えています。

氏名
滝口玲子(たきぐちれいこ)
社名
株式会社アルソア慧央グループ
役職
取締役社長

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