昭和シェル

12月20日、報道各社より出光興産 <5019> が昭和シェル石油 <5002> を買収するというニュースが流れた。両社とも「決定事項ではない」と報道を否定しているが、買収に向けた交渉に入っているとみられ、早ければ2015年前半には大規模な業界再編が行われそうだ。

買収金額は現段階で不明だが、約5,000億円~6,000億円程度と試算されているという。仮に昭和シェル石油が出光興産の傘下に入った場合、石油元売りトップのJXホールディングの連結売上12兆円に迫る約8兆円の連結売上となり、3位のコスモ石油の売上高約3兆5千億円を大きく引き離し、2強体制が構築される。


出光興産による買収の背景は

今回の発表は出光興産が突然買収をしかけたかにみえるが、そうではない。石油業界は、恒常的な省エネやエコカーの利用促進、石油価格の高騰の影響を受け、石油の供給能力が重要を大幅に上回る過剰供給に陥っている。業界のプレーヤーも多いため、競争が激化し歯止めが効かなくなっている。そこへ来て、2013年12月に成立した産業競争力強化法が効いてきている。

産業競争力強化法とは、アベノミクスの第三の矢である日本再興戦略に盛り込まれた施策を着実に実行するのを支援するため、「過剰規制」、「過小投資」、「過当競争」を是正していくのが目的となっている。この法律を活用し、経済産業省が石油元売り各社の過剰供給を是正し、業界再編を迫った結果、出光興産が昭和シェル石油の買収を検討している、というのが実態だ。

2010年にJXホールディングス <5020> が成立したぐらいで、石油業界では本格的な再編は起きていない。そこで経済産業省は産業競争力強化法を適用し、2017年までに元売り各社の原油精製能力を現状の9割にまで削減を進める方針だ。企業としても再編を受け入れることで税制上の優遇措置もあるため、反発一辺倒ではなくなっている。