日本株 10連騰 堅調さの背景
日本株が堅調である。日経平均は今日で10連騰。80年代後半のバブル相場真っ只中の88年2月以来、27年ぶりの記録である。つい先日は東証1部の時価総額が89年末のバブル期の水準を超えて過去最高を更新した。株式市場は「バブル期」超えが続いている。ここまで来ると、ITバブルの2000年4月につけた高値、2万833円を超えるのも時間の問題だろう。
よく指摘される通り、足元の相場は過熱感があまりない。相場の柱が頻繁に入れ替わる循環物色がうまく効いているからだ。しばらく内需株主導の展開が続いたかと思うと、割安株物色や出遅れ修正の動きが顕著になった。と、思ったらここにきて膠着していた為替が動き出し、ドル円相場も124円台前半まで下落、12年半ぶりの円安水準をつけたことで外需株が買われた。
日経平均が10連騰を達成した本日の業種別上昇率ランキングの上位は、「保険」「銀行」といった金融株、「輸送用機器」「電機」「機械」などグローバル製造業の外需株、そして材料性の強い電力株。あらゆるテーマが混在一体となった相場つきであった。
この相場上昇のいちばんの理由は企業の業績拡大期待である。それも、ただの拡大期待ではなく、ひねりが効いているところがミソである。喩えるなら、一度腰を沈めてしゃがんだところからバネを効かせてジャンプしたようなものだ。どういうことかというと、一旦はダメだと思われたのがダメじゃなかった…ということだ。
先般の決算発表で企業側が出してくる16年3月期の業績見通しが保守的なものにとどまり、15%増益を中心に2ケタ台半ばの伸びを見込んでいる市場予想との大きなギャップが株価の下押し要因となる - こんな懸念がまことしやかに市場で語られていた。
ところが決算発表が終わり、締めてみれば今期予想は9%増益(日経新聞集計)。保守的に見込んだはずの期初の予想が9%増益なら、今期2ケタ台半ばの増益率はじゅうぶんあり得る。そんな印象の出来上がりとなったわけである。
日経平均の予想EPSは現在1243円(日経予想)。PER17倍で2万1000円を超える。ここまでは現状の予想利益をベースとして達成可能。中期的な展望としてはQUICKコンセンサスの予想EPS1300円を織り込んでいけるかがカギとなる。これを織り込めればPER17倍で2万2000円に届く計算だ。
基本的に株価は業績の伸びを反映して決まる。米国株相場のように(グラフ1)。
ところが日本株はそうではなかった(グラフ2)。これは過去四半世紀にわたってバリュエーション調整が行われていたからである。日本株は長い年月をかけて80年代バブルで膨張させたバリュエーション調整を終えた。80年代バブルが始まる前の80年代前半は、上場企業の経常利益の10倍が東証1部の時価総額に一致していた(グラフ3)。経常利益ベースのPERが10倍だったとも言える。
しかしバブル相場で株価が膨らんで、はじけた後も、もとに戻らない期間が長く続いた。それだけバリュエーション調整に時間がかかったということだ。ところが昨今は、<経常利益の10倍=東証1部の時価総額>という関係が復活、定着してきた。バッファーやのりしろ、あそび、無駄、ぜい肉、そういう余計なものが一切ない状況だけに、ここからは業績の伸びと株価の伸びがほぼパラレルに推移していくだろう。
広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券
チーフ・ストラテジスト
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