東京商工リサーチによると、2014年度に国内不動産を売却した東証1部、2部上場企業数は77社で、3年連続で前年を上回った。なぜ今、不動産売却が増えているのか?その背景を探ってみよう。
都心部を中心とした地価の上昇
国土交通省が3月18日に発表した2015年1月1日時点の公示地価は、全国の商業地が前年比0.0%と7年ぶりにマイナス圏を脱出した。また、三大都市圏においては、東京圏が前年比2.0%増、大阪圏が同1.5%増、名古屋圏が1.4%と、いずれもプラスに転じている。上場企業による不動産売却の増加も、価格の上昇をきっかけに不動産を売却し、財務体質の改善や利益の上積みを図る動きが、背景にあると考えられる。
不動産国内最大手の三菱地所 <8802> は、千代田区丸の内のみずほ銀行前本店ビルの信託受益権を、みずほフィナンシャルグループ <8411> に譲渡し、特別利益約365億円を計上した。また、ブラザー工業 <6448> は、新宿三丁目の賃貸ビルを売却し163億200万円の譲渡益を計上している。
上記の不動産はいずれも超都心物件である。これらの売却は、昨今の市況回復を契機に保有資産の見直しを図ってのことだろう。また、ソニー <6758> が御殿山テクノロジーセンターの土地及び建物の一部売却益148億円を営業利益に含める等、本業の事業環境が厳しい中、不動産の売却により営業利益を確保する動きもあったと考えられる。