国内事業者数の減少

また、国内の工場や店舗の集約による、遊休資産増加を背景とした不動産売買も増加していると考えられる。厚生労働省による「従業者規模別の民営事業者数の推移(平成13年~平成24年)」によると、平成13年時点で6,138,312あった民営の事業所は、平成24年時点で5,453,635と、減少傾向にある。事業所が減少傾向にあれば、持て余した国内不動産の売却も続くだろう。

日本研紙 <5398> は新工場建設予定として約30年前に取得した広島県尾道市の遊休地や、大阪市西区の事務所ビルを売却している。また、自動車部品メーカーの日信工業 <7230> は、長野県の83,648平方メートルもの工場用地を売却している。両社共に、新たな工場を建設することを前提に土地を取得したものの、新たな投資を避け土地を売却している。

円安により国内生産回帰の動きが一部見られるものの、国内の生産能力はまだまだ余剰が多いとされている。また、人口減少と高齢化により、国内需要に大きな伸びしろがあるとは考えにくい。日本企業は国内よりも大きな成長が見込める新興国への投資を優先し、国内拠点の縮小と、不動産市況の改善を契機とした国内不動産の売却が続くのではないか。


今後の展望

現在は日銀の金融緩和をきっかけに、より高い利回りを求める世界中のマネーが東京の不動産に流れ、不動産市況を上昇させている。

今後もしばらく不動産売買は活況が続くと考えられるが、米国の金融政策は注視しておきたい。FRBが長きにわたり続けてきた金融緩和策の見直しタイミングを伺っており、年内に利上げする可能性を表明している。金融政策を緩和一本槍から改め、引き締めに転じようとしているのだ。米国はリーマンショック以降、政策金利であるフェデラルファンドレートを0.25で推移させており、ECBの金利も過去最低水準だ。

この緩和から引き締めへの転換はタイミングや実施規模の塩梅が非常に難しく、一歩間違えると金融・不動産市況を一気に冷え込ませる可能性もある。そうすれば、大手不動産会社や長い歴史の中で不動産を取得してきた老舗企業等、都心部に多くの土地を持つ企業のバランスシートにダメージを与える。これら会社の株式を保有している人は、不動産市況の動向のみならず、米国や世界の金融政策も注視しておこう。(ZUU online 編集部)

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