雇用環境は若年層を中心に改善が続き、対前年で就業者数が伸びて失業者数が減るという好ましい状況にある。今後外需だけでなく、消費増税の影響から抜け出し内需も伸びていけば、企業業績はさらに向上し、労働市場も一層拡大していくだろう。


デフレ突入前の雇用水準を維持

総務省発表の4月労働力調査によると(以下原数値)、就業者数は6,342万人で0.1%増、5カ月連続で前年超えとなった。横ばいの時期も含めれば、2年4カ月間マイナスを免れており、労働市場の拡大ぶりが伺える。

25~44歳の会社の中核となる層は減少傾向にあり、その点では気になる。ただ15~24歳の次代を担う若年層、45~54歳の経営陣になりうる年代は概ね増加基調にあり、良い流れが見える。

一方の完全失業者数も、234万人で7.9%改善し、4年11カ月減り続けている。こちらは年齢層を問わず全般的に減少傾向にある。また離職理由を見ると、「勤め先や事業の都合」は2年4カ月縮小しており、「学卒未就職者」も横ばいを含めれば1年4カ月増えていない。

つまり、企業の人材確保のニーズが強いため、リストラで解雇される労働者や就職できない新卒者が少なくなっており、環境は着実に好転しているのだ。

このように、若年層を中心に就業者が増える一方で、全般的に失業者が減っていることから、完全失業率は前年から0.3ポイント下がって3.6%と低水準を維持。これは97年の3.4%に近いレベルであり、雇用に限ればデフレ突入前の水準に戻ったといえよう。


企業業績と株価、雇用の関係を数値で検証

企業は業績が良くなると人を雇う余裕が生じ、また他社との競争からその必要も出て来る。そうして雇用が増えると、多くの人は生活が安定して購買能力が高まり、その結果企業の売上も伸び、さらに雇用を増やせる。この好循環の中で、実態を反映する形で株価も上昇して行く。こうした理論通りになっているのか、実際のデータで確認してみよう。

13年度前半の平均を見ると、売上DI(日本政策金融公庫・中小企業景況調査)は前月より0.8ポイント上昇し、それに伴い前年比で就業者数は0.6%増え、完全失業者数は7.2%減少。

それにより同後半では対前年で、2人以上の世帯の実質消費支出が1.3%、新設住宅着工戸数が8.3%各々増大し、売上DIも前月から1.7ポイント伸び、日経平均株価は44.1%の前年超え。
つまり、企業業績が向上して人材採用の動きが強まり、雇用環境が改善し、生活に余裕が出てきた多くの人が消費や投資を増やしたことで、さらに企業業績と株価の上昇につながっている。

逆に14年度前半は、売上DIが1.7ポイント低下し、就業者数は前年度後半の0.9%から0.7%、完全失業者数も-10.3%から-9.8%にペースダウン。そのため同後半では、実質消費支出が-4.8%に押し下げられ、住宅着工戸数も-9.5%に底割れ。売上DIは0.3ポイント、株価は18.0%アップしてはいるが、これは輸出が9.2%伸びたことが原因だろう。

消費増税の影響で家計の購買マインドが冷え込み、企業業績がやや減速し、採用意欲が若干下がり、雇用環境に陰りが見えて内需も落ち込んだ。それでも企業業績と株価が良かったのは、追加金融緩和とそれに基づく円安・輸出増が主因とみられる。

このように、概ね理論通りの結果となっている。もちろん、企業経営や市場は短期的には様々な要因で動き、特に株価はマネー増減の影響も強い。それでも中長期的には国民の安定した雇用と、それに基づく力強い内需に支えられるといえよう。


雇用拡大につながる内需好転の兆し

4月について、売上DIは低下しており、就業者数も0.1%増と前月より減速してはいる。それでも完全失業者数は7.9%減と改善基調を維持。また実質消費支出は3月の-10.6%から4月が-1.6%と下げ幅が縮小しており、増税前の駆け込み需要の反動減とその後の影響から抜け出す兆候が見られる。住宅着工戸数も3月からプラスに転じており、増税の影響から先に脱却しつつあるようだ。

雇用環境が悪くないことに加え、今後内需が戻る気配も見えることから、再び企業業績が上向き、労働市場も一層拡張する可能性がある。そうなれば、株価も実体経済をより反映した形で上昇して行くのではないか。(ZUU online 編集部)

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