ビル・グロース,ギリシャ問題,CDS
(写真=PIXTA)

日々ニュースヘッドラインに踊るのは、ギリシャの債務交渉状況についての報道だ。金融相場は、これに一喜一憂する状況が続いている。

歳入に対して歳出超過状況であるギリシャから根本的な改革が提示されないだけに、デフォルトのリスクが今回かなり高まっていることは事実である。EU離脱までかなり時間はかかるものの、ドイツの腹づもり次第では、あっさりデフォルト(債務不履行)もありえるクリティカルな状況となっている。


日々乱高下するCDS

CDSとは、Credit default swapの略である。クレジット・デリバティブの一種で、社債や国債、貸付債権などの信用リスクに対して、保険の役割を果たすデリバティブ契約をさす。CDSの買い手は、債権者や投資家となる。

プレミアム(保証料)を支払う代わりに、契約の対象となる債権(融資・債券等)が契約期間中にデフォルトとなった場合、それによって生じる損失(元本・利息等)を保証してもらえるものだ。前回2011年には、ギリシャのみならず南欧諸国のCDSが軒並み上昇する危機的な状況を招いたが、今回もギリシャのCDSは日々乱高下を続けている。

2015年4月21日に5年もののCDSは3637.98bpをつけたものの、その後は上下動を繰り返しており、直近では2700bpレベルで様子を伺う状況となっている。今回は国債のみならず銀行の破綻リスクも高まっているため、クレジット周りを扱うヘッジファンドも大きな影響を受ける可能性が見込まれている。

今回ばかりは、2011年のようにこのCDSを買い上げて儲けを狙うヘッジファンド勢の存在も少なそうな状況だ。


ドラギ発言で再度上昇したドイツ国債金利

6月3日(現地時間)のECB政策決定会合の後の記者会見で、ドラギ総裁は「資産価格のボラティリティは高まる傾向がある。市場はボラティリティの高い時期に順応する必要がある」と警告を発した上で、記者の質問に対して上昇する債券金利に介入の意思がないことを明確にしたことから、ドイツ金利はまたも上昇に転じることとなった。

ドイツの債券利回りを、10年ものでもマイナスになると読み違えていた債券投資家は、結果として巨額の損失を抱え込むことになっている。株と違って債券金利の原資は巨大なだけに、1%以下の金利の上下動でも大きく損失を抱えることになるのだ。

6月に入ってから、先進主要国の株価は低迷している。これも、金融機関の債券関連の損害に対する穴埋めで株式が売られた結果と見る向きがある。実際、東京株式市場の日経平均も小幅ながら下押しする局面が見られた。


欧州株式市場で潤沢な儲けを出していたファンド勢も戦々恐々

ECBのQE実施で、セオリーどおり年初来12%上昇を果たした欧州株式市場で大きな利益を享受したファンド勢だが、4月の後半からまさかの債券金利暴騰と株価の大幅下落という状況に、追い討ちをかけるようにギリシャ問題で足元がぐらつき始めている。

各投機筋も状況に対応した戦略変更を余儀なくされていることは事実だ。米国の利上げ時期の後ずれ感が高まるなかで、焦点はユーロ圏のギリシャ債務問題に絞られる形となってきており、4月の後半以降儲からない投機筋が急激に増えている。

ビルグロースが退場したことで話題となった債券売買大手のPIMCOが、5月に保有米国債券の実に3分の2をすでに売却していたことがわかり、業界の注目を浴びている。

株、為替、債券ともに、市場がこれまでと異なる動きになっていることは間違いがなく、ギリシャの件がその大きな引き金になることを警戒する向きは多くなっている。ギリシャとEUの交渉に前進が見られない状況が続いているが、最終的には決着することを期待する楽観的な市場の動きもある。

しかしその一方で、ネガティブな決着の際に、市場が予想と異なる方向に動き出すリスクの発生も否定できない。現在は、多くのプレーヤーが固唾を呑んで見守っている状況といえそうだ。

(ZUU online)

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