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(写真=PIXTA)

◆先週金曜は、米ドルが米雇用統計発表直後に一時的に上昇した後に急反落したのが特徴的だった。ドル/円は124.70円近辺から一時125.07円へ上昇後に急反落し124.10円で安値をつけた。米ドルは対ユーロや対豪ドルでもほぼ同様に動いた。

◆米7月雇用統計では非農業部門雇用者数が+21.5万人と市場予想を1.0万人下回ったが、過去計数が+1.4万人分上方修正された部分が発表直後のドル上昇に繋がったとみられる一方、平均時給が前年比+2.1%と市場予想(+2.3%)を大きく下回った点が、その後のドル大幅反落の要因とみられる。

9月利上げの可能性が高まったとの見方が多いが、インフレ・賃金の伸びの弱さが重視され利上げ開始が先送りされるリスクも残っている。

◆本日は、比較的材料が少ない中で、米雇用統計後のドル反落が継続するかが注目される。ドル/円は、週末の住友生命による米国企業買収検討報道など、本邦企業の活発な対外M&Aに絡む円売りフローへの期待が下支えとなる一方で、米国の利上げ開始期待の高まりにも拘らず125円台で定着できない上値の重さも意識されており、124円台でもみ合いが続きそうだ。


昨日までの世界:米雇用統計でドル反落

ドル/円は、欧州時間にかけて124.70円前後で推移した後、米7月雇用統計発表直後に一時125.07円へ上昇し5日の高値(125.01円)を僅かに上回った。もっとも、その後に急反落し124.10円で安値をつけた。

米7月雇用統計では、非農業部門雇用者数が+21.5万人と市場予想を1.0万人下回ったが、過去計数が+1.4万人分上方修正された部分が好感され発表直後のドル上昇に繋がったとみられる一方、米経済のエンジンである個人消費の原動力となる所得上昇に関連する平均時給が前年比+2.1%と前月からは小幅加速したものの市場予想(+2.3%)を大きく下回った点が、その後のドル大幅反落の要因とみられる。

9月利上げの可能性が高まったとの見方が多いが、インフレ・賃金の伸びの弱さが重視され利上げ開始が先送りされるリスクも残っている。

因みに、米利回り動向をみると、FF金利予想の影響を強く受ける2年債利回りは発表後に0.70%から0.74%へ上昇後、0.72%へ反落したが一応上昇を維持した一方、より幅広い経済状況を反映する10年債利回りは発表後に3bps程度上昇した後むしろ原油安なども反映して大幅反落し、結局前日終値の2.23%から2.16%へ低下しており、敢えて解釈すれば今回の雇用統計で9月利上げの確度が高まった一方で先行きの利上げペースの鈍化を市場は織り込んでいるのかもしれない。

ユーロ/ドルも同様に、欧州時間までは概ね1.092ドル前後で推移した後、米雇用統計のドル高を受けて一時1.0856へ下落した。但し5日に付けた直近安値(1.0848ドル)には至らず、むしろその後のドル反落を受けて1.0978ドルへ大幅反発した。

ユーロ/円は、136.30円前後で推移した後、米雇用統計後のユーロ安の方が円安よりも大きかったことから下落し、一時135.56円の安値を付けた。但しその後のユーロ反発を受けて雇用統計発表前の水準をほぼ回復し、引けにかけては136.20円前後で推移した。

豪ドル/米ドルは、豪RBA四半期金融政策声明(SoMP)がタカ派的との受け止め方から、0.7350ドル程度から0.7380ドル程度へ上昇、その後米雇用統計発表に向けて0.74ドル丁度手前まで強含みとなった。米雇用統計後は米ドル高から0.7334ドルへ急反落したが、その後ほどなくして発表前の水準を回復、引けにかけて0.7420ドルへ急反発した。但し4日につけた高値である0.7429ドルには僅かに届かなかった。

RBAのSoMPでは、成長率見通しが前回5月分から引き下げられたものの、RBA政策金利と逆の連動性が高い失業率見通しが若干引き下げられ、かつ基調インフレ率見通しが上方修正されたことから、全体としては目先の利下げの可能性を後退させる内容と解釈されたようだ。

豪ドル/円も、豪ドル/米ドルとほぼ同様の動きとなり、SoMP発表後に91.60円程度から92円乗せへ上昇した後、米雇用統計に向けて92.21円の高値を付けた。その後、米雇用統計後は豪ドル安の方が円安よりも大きかったことから91.60円程度へ急反落したが、引けにかけては再び92円台を回復した。


きょうの高慢な偏見:漁夫(Fischer)の利(上げ示唆)?

ドル/円は、比較的材料が少ない中で、週末の住友生命による4,000-5,000億円規模の米国企業買収検討報道など、好調な業績を反映した本邦企業の活発な対外M&Aに絡む円売りフローへの期待が下支えとなる一方で、米国の利上げ開始期待の高まりにも拘らず125円台で定着できない上値の重さも意識されており、124円台でもみ合いが続きそうだ。

なお、米国ではFischer・FRB副議長(常に投票権あり)、Lockhartアトランタ連銀総裁(今年投票権あり)の発言が予定されている(各々20:15、22:00開始予定)。

Lockhart総裁は既に先週4日に米経済が大幅悪化しない限り9月利上げを支持するというタカ派的な発言を行いドル高に繋がっており、これ以上タカ派的なコメントは望めない一方、FOMCのコアメンバーの一人であるFischerが雇用統計を受けて米労働市場や賃金・インフレ情勢をどのように評価するか、9月利上げにどれだけ前向きかが注目される。

利上げ開始に慎重姿勢を見せれば124円丁度方向へ続落する一方、前向きな発言でも確定的なものとはならず125円乗せは難しそうだ(利上げに向けたFOMC各メンバーの発言の重要性については、6月10日付投資戦略テーマ「 FOMC:ナンバーの重要性 」を参照)。

なお、本邦では6月分経常収支が発表予定で、季節調整済みで前月の+1兆6,363億円から+1兆4,009億円と大幅黒字が継続する見込みで、どちらかといえば円高要因だが、最近は市場の本邦貿易収支・経常収支に対する反応は鈍い。

ユーロ/ドルは引き続き1.08-1.11ドルのレンジ内横ばいで、強い方向感がない。ドル反落基調が続けば1.10ドル乗せもありそうだが、ドイツ10年債利回りの低下基調が上値を抑えるかたちとなりそうだ。

豪ドル/米ドルは、原油や銅などコモディティ価格の下落基調にも拘らず、先週のRBAの利下げ見送り・ハト派度後退を受けて、7月31日に0.7235ドルの年初来安値を付けた後、反発基調が続いている。

こうした反発は鉄鉱石価格の反発基調とは整合的であり、市場の注目が再び鉄鉱石価格に戻り、豪ドル強含みが続くかもしれない。豪ドルが再び下落基調に戻るには、鉄鉱石価格の再下落、豪失業率の上昇継続とRBAの再ハト派化が必要となりそうだ。

山本雅文(やまもと・まさふみ)
マネックス証券 シニア・ストラテジスト

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