常に最新のアイデアや話題性を求めてアンテナを張り巡らしているのは、たとえ世界的超高級ブランド、ルイ・ヴィトンであろうと同じこと。アップルが2013年、当時サン ローランの最高経営責任者(CEO)だったポール・ドヌーヴ氏を、そして昨年バーバリーCEOのアンジェラ・アーレンツ氏を経営幹部として迎え入れてたのに対抗してか、今度はLVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)が元アップルのシニアディレクター、イアン・ロジャース氏をチーフデジタルオフィサーに抜擢して話題になっている。

ロジャース氏は音楽業界歴20年の経験を活かし、最近ではアップル・ミュージックの立ち上げを含める様々な活動に携わってきたベテラン音楽家だが、今回のヴィトンとの共同作業には、まったく新しいアプローチが要求されそうだ。

なぜなら一部の一流デザイナー達は、超高級ブランドのデジタル化を好ましく思っていないからだ。たとえばセリーヌはオンライン販売を一切行っていないし、シャネルの専属デザイナー、カール・ラガーフェルド氏にいたっては「インターネット上では高級感は出せない」とまで発言している。

それを証明するかのように、これだけインターネットショッピングが普及した現在でも、超高級ブランドのオンラインセールスは、ブランド売上げ全体の僅か6%と驚く程微々たるものだ。しかしながら、2010年以降のセールスの伸びだけに焦点を当ててみると、店頭販売などのオフラインセールスが7%増で頭打ちしている一方で、オンラインは27%増と急成長を遂げている。

そうした傾向を踏まえた上で、LVMHは今年4月にも、アップルのクリエイティブディレクターを務めていたヘクター・ミュラス氏をチーフ・イメージ・オフィサーのポジションに起用しており、当分の間はファッション界VS音楽界の引き抜き合戦は続きそうだ。

ちなみに移籍の理由を聞かれたロジャース氏は「アップル・ミュージックの記者会見の日、妻に質問してみたんだ。『これからもう一頑張りしてみるか、これで打ち止めにしとくか?』って。それで『じゃあ次に行ってみよう!』って答えが出たわけさ」とコメントしている。

最高デジタル責任者に任命されたロジャース氏が今後どのような形でファッション界をわかせるのか。LVMHの取締役会長兼CEO、ベルナール・アルノー氏は「これまでの一流のデジタルベンチャーに携わってきた経験と、持ち前の革命的精神で、LVMHがデジタル高級ブランド産業の先駆けとなれるように、盛り立ててくれるだろう」と期待を大きく膨らませている。(ZUU online 編集部)

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