AIは人間を超えるのか?
湯川鶴章: 今回は、AI・ロボットを中心に話します。一番多くの方に聞かれるのは「AIは人間を超えるんですか」という質問です。それでは、まずは、堀江さんにこの質問を尋ねたいのですが、AIは人間を超えるんでしょうか?
堀江貴文:
「何を基準にして(AIが人間を)超えるか」という話で、記憶量の大きさとか消さなくていいといった特徴を考えると、その性能ではすでに人間を超えていますよね。だから、そういう意味では超えているともいえるし、超えてないとも言えます。
ちょうど、ディズニー/ピクサーの映画『インサイド・ヘッド』を見たのですが、すごくわかりやすいですよね。脳や感情、記憶の仕組みをアニメーションにしており、記憶が消えていく姿も描いています。記憶が壊れていく様子の描き方とかはすごい上手いな、と。脳の仕組みをよく分かりやすく描いていて、主人公が幼いころに頭の中につくり出したキャラクターが消えていくシーンとか、まさにこんな感じだろうな、と。
(写真=ディズニーHPより)
中野: 映画『インサイド・ヘッド』はすごくよく出来ていますよね。感情をキャラクターにした「カナシミ」とか「ヨロコビ」とか…
堀江貴文:
そうそう「子どものころにいた空想の生き物がいつの間にか、いなくなってしまう」感じとかよくできているなと思いました。
そして、今のAIって「クラウド(コンピューティング)」みたいな言葉と一緒なんです。「クラウド」は昔からあるんですよ。クラウドっていう言葉が発明されたり、最近みんながみんなが言うようになったりしただけで、昔からあるんです。ただ、ここ10年でAIの分野で、音声認識だったり翻訳だったりとかいう世界が進化しはじめたのも「クラウド」なんですよ。
「グーグルが見つけた」と言えばいいでしょうか。グーグルの検索結果で、間違いのデータベースとか失敗をものすごく蓄積した結果、音声認識でも大事なことは、正解を見つけることではありません。膨大な間違いをすることによって、何が間違っているかわかることです。「失敗していないこと」がどうやら正解に近いらしいということです。
ただ、その正解を見つけるためには膨大な失敗をしなければなりません。例えば、人間だったら成長の過程での言語の習得です。言葉を覚えていくときには、「赤ちゃんがお父さんにパパ、といったらパパがその言葉にすごく反応した、これが正解に近いかも、でもその意味はわかんない」というような、学習していく過程をなぞっています。音声認識とか人工知能って昔から研究されてきましたが、ここ10年くらいでようやくアプローチの仕方がわかってきています。
10年前の、カーナビに搭載されたりしていた音声認識は全然正解を見つけ出せていませんでしたが、今の「Siri」はすごいじゃないですか。あれは「膨大な失敗のデータベースから正解っぽいものを見つけ出すということが正解なんじゃないか」ということがわかってきたからです。黎明期ではあるのですが、なんとなく糸口が見つかってきてるみたいです。
中野信子: 私が面白いと思ったのは、アンラーニングしたほうが次の学習が早いんです。いろんなデータベースを重ねていって知識を膨大にしていけば正解に近づくということプラス、実は前に学習したものをちょっと忘れたほうが実は、システムとしてはよりよくなります。
堀江貴文:
『インサイド・ヘッド』にも出てきますよね。掃除屋さんが出てきて(一つひとつの記憶の玉を)「これはいらない、あれはいらない」とか…