中野信子: そうそう、仕分けるんです。映画『インサイドヘッド』はすごくよく出来ていて、監修にいろんな人が入ってきてると思います。記憶のメカニズムについての実験をしている人が東大にもいたりします。
ほかにも、いろいろな取材を受ける中で「記憶力をよくするにはどうすればいいのですか」「暗記ができなくて困っています」とかすごくいろんな質問を受けます。
しかし、「なぜ集中力や記憶力をよくしたいと思うのだろう」と思いました。本当は忘れたほうがいいから忘れる機能があるのに、忘れる機能を皆さんは非常に自分の怠惰さとか、自分の脳の性能が悪いからだと思っているんですよね。
本当はそうじゃなくて、忘れることが適切だから忘れるようにできています。適切でないところを補完するためにコンピューターがあるわけですよね。その開発してきたものを人間を超える、というのは発想として変なような気がしています。多くの人がコンピューターが人間を超える日というのを恐怖に感じているようですが「なぜ恐怖に思うのだろうか」と。非常に疑問に思っています。

湯川鶴章: AIに関する本を書くために、日米の研究者20人近くに取材をしましたが、AIが人間を超えるだろうと言った人は一人もいませんでした。「超えないんじゃない?」というのが全員の意見でしたね。 とはいえ、有名な英国人物理学者であるスティーヴン・ホーキング博士がAIを脅威と感じるべきだと発言していたり、電気自動車メーカー・テスラやロケット開発などを推進するスペースXを創業した起業家イーロン・マスク氏も「脅威だ」と言っていたり、AIの危険性を指摘する人もいたりするんです。 それではここで、少し質問を変えて「全部ロボットと人工知能に仕事任せて、人間は楽していけるような時代がくる」時点で「AIが人間を超えた」と言えるのであれば、どうでしょうか。あるいは、人間よりも全ての面で賢くなって、AIにまかせてしまって我々は遊んでるだけの生活をするような、ユートピアは来ると思いますか。

堀江貴文 (写真=ZUU online編集部)



堀江貴文: もうきてるんじゃないですか?今僕たちは遊んでますから(笑)仕事をしている気はしていません。一部の人たちにはすでにそういう時代はきていて、ロボットって単純に人間の労働コストとトレードオフなんですよ。
実は最近、バンコクに行っていたのですが、経済発展してるので今はそうでもないのですが、10年前って大体自動ドアじゃなくて手動ドアでドアマンがいたんですね。なぜ自動ドアにしないんだというと、「ドアマンのほうが給料が安いから」でした。ただそれだけの話です。
今でもスーパーのレジうちとか、アマゾンの倉庫は人がいますよね。なぜかというと人間が安いから。みんながオレたちこんな安い労働したくねえよ、って言ったらロボットが売れていくっていう(笑)

ロボットの「越えられない壁」は人間の身体性か?

林要: 堀江さんがおっしゃったように、人工知能は繰り返しの作業をうまくやるようになってきました。なので、教育分野だと、公文がカバーしているような範囲は人工知能がすぐできるようになっちゃうんですよね。
ただ、僕たちが問題しているのはそこを超えた部分です。利害関係の一致していない人達の間をどのように仲裁していくかというところなんですよね。頭のよさじゃないですよね。
人工知能はツールとしてはいいと思いますが、利害関係の信頼を得て何をどこへもっていくというような話は多数と物との信頼関係になってくると思うんです。
そうなってきたときに、人工知能は身体をもっていないがゆえに、人間と全く同じには発達していかない。役割が違うと思うんです。そこで人間を超えるとか超えないということではなく、新しいツールが出てくるんじゃないかと。

堀江貴文: 僕も身体性の話を今しようと思っていました。ロボットも 身体性を 持ちはじめてくるのではないかという気がしています。脳神経ってずっと繋がっているわけです。ただ、脳から手の先まで神経があるわけで、実はそこまで考えなくてはいけないと思います。それは、僕たちがイメージしているロボットの身体ではなく、コンピューターネットワークで繋がるものです。例えばイギリスのロンドンにある監視カメラの映像だったりとか、ハリウッド映画で描かれたような監視ネットワークで犯人を追跡できるとか、全地球にはりめぐらされていて、それが一つの神経の役割を果たすことも十分にありえます。
もうひとつはコンピューターが人間の意志、「自分が自分である」というような認識をつくりだすことができる気がしています。自分が自分であるということは、人間の意識が自分が自分であることを信じていて、それが脳の中でループしてできています。精神病になると統合失調症になったりしてしまいますが。