米国で「新債券王」と呼ばれる、ダブルライン・キャピタルの創業者で最高経営責任者(CEO)のジェフリー・ガンドラック氏。近年のファンド運用成績が他を大きく引き離し、予測が「不思議によく当たる」と、予言者に祭り上げられた。
直近では、9月17日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)の発表に先立ち、「米連邦準備制度理事会(FRB)は、利上げできる状況になく、引き締めを先送りする」と予想し、当てた。これだけなら、多くのFRBウォッチャーや市場関係者も事前に発言していたことであり、特段目立ったことではない。
ガンドラック氏が「すごい」のは、その日の米株式市場がどのように動くかをピタリと言い当てたところにある。発表前日の9月16日に米経済専門局CNBCに出演した同氏は、「利上げなしの場合、一時的な力強い上昇がある。
だが、市場参加者が冷静さを取り戻し、『いや、待て。世界経済の不確実性は変わってない。FRBに目を向けよう』と言い始め、市場は『占いモード』に戻る。だから、パブロフの条件反射的な当初の高騰が、急にしぼんでも驚かない」と述べた。
果たして、17日の米ダウ工業株30種平均は、東部時間午後2時のFOMCの利上げ先送り発表後、「株式市場に資金が流入しやすい金融緩和環境が続く」との見方が広がって買いが入り、一時100ドルあまり上げた。まさに、ガンドラック氏の言う「パブロフの条件反射」だ。
ところがその後、「金融政策の不透明感が続く」という失望感からダウ平均は値を消して、午後4時の終値は前日比65.21ドル安の16674.74ドルで引けたのである。ガンドラック氏のダブルライン・キャピタルがこの予測に合わせて相場を張り、大きな収益を得ていたとしても不思議ではない。
ロサンゼルスに本社を置くダブルライン・キャピタルは、運用成績が良好なことから顧客が増え、雪だるま式に成長し、6月30日現在で760億ドル(約9兆876億円)という巨額の資金を運用するまでになった。その原動力が、ガンドラック氏の、予想を当てる分析力にあることは言うまでもない。