ビル
(写真=PIXTA)

大学4年生の内定式もようやく終了したばかりだが、リンクモンスターが大学1年、2年生を対象とした就職したいと思う企業・業種ランキング調査の結果が公表された。トップ3が地方公務員、国家公務員、日本赤十字社など堅実な思考がうかがえる一方、6位にいきなりソニー・ミュージックエンターテインメント入ったり、9位に日本テレビと集英社などのオールドメディアがランクインしたりと、就職に現実感がないことが浮き彫りになった結果といえそうだ。

調査は7月から8月にかけて、一部地域除く全国の大学1、2年生365人を対象に行われた。


意外な企業が顔を並べる状況

あらためてベスト20企業を見てみよう。

1位 地方公務員
2位 国家公務員
3位 日本赤十字社
4位 日本郵便
5位 みずほ銀行
6位 ソニー・ミュージックエンターテインメント
7位 三菱東京UFJ銀行
8位 全国農業共同組合連合会
9位 日本テレビ
9位 集英社
11位 電通
11位 味の素
11位 大塚製薬
14位 キユーピー
15位 三井住友銀行
15位 フジテレビジョン
15位 エイベックス
15位 資生堂
19位 三菱UFJ信託銀行
19位 トヨタ自動車
19位 TBS
19位 東宝
19位 武田薬品
19位 全日本空輸(ANA)

バブルが崩壊してから誕生した世代だけに、安定や堅実といったキーワードが当てはまる地方、国家公務員に高い人気が集まるのは理解できる。また災害が多くボランティアや人助けの精神が広がっているためか、日本赤十字社が入ったあたりから、人の役に立ちたいという気持ちを持った学生が多いことがうかがえる。

また上場で話題となっている日本郵政が早速ランクインされているところも若者らしい選択といえるし、メガバンクに入行して安定した生活を送りたいという発想も理解はできる。

ところが、堅実な思考だけかというとそうでもない。厳しい状況にあるはずの音楽業界を志望する学生は多く、ソニー・ミュージックエンターテインメントが6位、エイベックスが15位にランキングされている。

また日本テレビや集英社といったレガシーメディアがしっかりベストテンにランキングされているところもかなり違和感を覚える。テレビ局については20位までのフジテレビやTBSもランキングされている。

2000年をピークにテレビ広告費は2兆円から既に2割近くその売り上げを漸減しており、ほとんどのテレビ局がテレビ放送では利益が出なくなってきる中、安定志向の強い若者が定年まで存続しているかどうかわからないテレビ業界に依然として興味を持っているあたりは、就職というものが現実感をともなっていない証拠だろう。

テレビ業界よりもさらに厳しい状況に置かれている出版社の大手である集英社がベストテンに入っていることや、その他ランクインしている企業から類推するに、「知っている企業」「日常生活で利用する商品やサービスを出している企業」など“BtoC”の企業しかまだ思い浮かばないのだろう。