“今、売却しない方”をあたため、大事にする

storie:御社の媒体の出稿先として取り引きされている不動産会社は何社くらいですか。

山田氏:約550社です。大手から地場の中小企業まで、すべて開拓してきました。

storie:収益は、売却相談の依頼のあったお客様を不動産事業者に紹介することでの紹介料が主になるということでしょうか。

山田氏:はい。概ね、毎月1,000件ほど一般ユーザーから売却相談があり、お問い合わせフォームにマンション面積や築年数など詳細情報が入力されます。それらを不動産会社に提供しています。

storie:不動産会社に提供する情報の質によって紹介料は変わるのでしょうか。

山田氏:やはりウェブの特性で、悪意のある依頼者情報というのも少なからずあります。そのような場合は弊社のほうで調査し、明らかに怪しいと判断した場合は不動産会社から課金対象外の申請をしてもらいます。このあたりは、けっこうまじめに取り組んでいます。(笑)

storie:広告宣伝はどのようにされていますか。

山田氏:Yahoo!なども使いますが、どちらかというと、一般ユーザーはご自身の“マンション名”“売却・相場”といったキーワードで検索し、弊社のホームページに来ていただく場合が多いようです。

storie:集客のためどのようなことを重視されていますか。

山田氏:ブログやニュースリリース、メルマガ等は発信しています。これは私のポリシーなのですが、一般ユーザーがどこで売主様になるかというと、すでに購入した瞬間から売主様候補であるという考え方なのです。もちろん、購入したばかりの方が売却を考えるなんて、何年先になるかはわかりません。ですから、ニュースやブログといったコンテンツで“今、売却しない方”をあたため、大事にしています。

そして、大事に育ててきた皆さんが、いざ売却をしようというときに、役立ててもらいたくて「マンションナビ」があるのです。たとえば株を購入したら、株価指数の動向をチェックするために毎日新聞を見ますよね。ですが、不動産の場合は毎日確認することができなかった。そこで「マンションナビ」を見ていただき、必要な情報を得て、納得いく売却のお手伝いができれば。他社は、あまり気の長い戦略はしないところが多いですよね。

storie:「マンションナビ」のようなサービスを開始して、不動産会社さんから反発のようなものはありませんでしたか。

山田氏:サービス開始当初はありました。ただ、自身が不動産会社でプレイヤーの立場として長年携わってきて、プレイヤーの大変なところを理解しています。ですから、今後はプレイヤーの方々をサポートできる立場になりたいという気持ちからサービス提供を継続しています。その思いが実って、今、利用者は毎日1万人以上、メンバー会員は約4万人になりました。


今後は買主向けサービスも。自社メディアにさらなる厚み

storie:今後の事業の方向性を教えてください。

山田氏:まずは自社メディアのユーザーメリットを増やし、会員数の増加を図ること。そして不動産会社の開拓です。この2つは繰り返していかなければいけません。そして大きなところでは、買主様に向けたサービス展開を考えています。今は、売主様に向けたサービスが色濃いので、買主層を網羅することで自社メディア全体に厚みが出ると思います。

storie:毎月1,000件という売却情報の獲得はすごいですね。

山田氏:ありがとうございます。全国のマンションデータをいちからコツコツ集めるなど、面倒なことは誰もやりたがらないですよ。収益を上げるために、もっと即物的なことをされるところが多いですし、それは正しいことでもあります。ですが私は起業当初より、“今、売却しない方”、別の言い方をすれば、どこの不動産会社にも染まっていないオーガニックユーザーを大事にしたいと思ってきました。そういう意味では、今のメンバー会員は新規のリスティング広告をおこなわなくても、ある一定の売却相談は途切れることがなく、安定していると思います。皆さんと一緒に売却の暗いイメージを変えていきたいですね(笑)

マンションリサーチ株式会社 代表取締役 山田敏碁氏 プロフィール
不動産ディベロッパー及びフランチャイズ系不動産仲介会社での勤務経験を経て、2011年4月マンションリサーチ株式会社を設立。同年8月より分譲マンション専門サイト「マンションナビ」運営開始。全国の分譲マンションについて独自に収集した流通事例をもとに、売買・賃貸相場を公開している。

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