定年退職後,年金生活

(この記事は「マイアドバイザー」に掲載されたものです。提供: My-Adviser.jp 写真=PIXTA)

57歳のA子さんは早目の退職も考えています。 仕事にやりがいを感じていますが、親の介護もあり少し疲れぎみとなっているのです。ところが 定年を前に早期退職した先輩から「退職して3年で1000万円の貯金がなくなった」との話を聴きました。定年後は年金だけでは生活できないのでしょうか。

共働きのA子さんは、給料を夫婦それぞれが使うというスタイルですので、このままでやっていけるのかしらと、定年後の生活が急に心配になってきました。

定年後の生活は2つの財布に分けてみる

定年後の生活を考えるとき、2つの財布に分けてみるとわかりやすいです。

◆「日常の生活費を出し入れする」 財布

1つめの財布は日常生活費を出し入れする財布です。

現役時代は毎月、給料が入ってきます。その給料のなかでやりくりしていれば財布の中にお金は残るはず。お金が残っている人は、やりくりができている人で、不足してどこかからお金を足している人は、給料の範囲内でやりくりできなかったということになります。

定年退職後は、この給料に当たるものが年金です。年金額は「ねんきん定期便」などで見込額がわかります。

自分の見込額で毎日の生活をやりくりできますか?また、年金の支給開始はいつからですか?60歳から年金を受け取れない人が60歳で仕事を辞めてしまうと、収入がなくなるので、1つ目の財布は機能しなくなります。

A子さんの先輩のように、年金受給開始前に退職し、まったく収入が入らなくなれば3年で1000万円の貯金がなくなるということも起こるでしょう。

◆「大きな出費に備える」 財布

2つ目の財布は大きな出費に備える財布です。住宅の修繕やリフォーム、冠婚葬祭、大型家電の買い替え、旅行、病気や介護など、臨時にまとまったお金が必要になることがあります。1つ目の財布でまかなえない大きな出費は2つ目の財布から出します。

2つ目の財布(貯蓄や保険など)にどのくらいのお金があるでしょうか。2つ目の財布が大きな出費をカバーしてくれれば、1つ目の財布に影響はありません。

現役時代は、ボーナスが2つ目の財布の役割を果たしていました。教育費がかかるときは子どもの授業料をボーナスで支払ったり、家電や家具はボーナス時で購入したり、旅行にいったり、貯蓄にまわしたり、いろいろと活用できたでしょう。退職後はこのボーナスがなくなります。定年前にしっかり2つ目の財布を用意しておくことが必要です。

気をつけておきたいのは毎月の不足分です。1つ目の財布に毎月不足が生じれば、2つ目の財布から補充していくことになりますので、しだいに2つ目の財布も危うくなっていきます。

◆2つの財布に入ってくるお金の整理を

定年後の暮らしを考えるときには、1つ目の財布に入ってくるお金(=年金)、2つ目の財布に入ってくるお金(貯蓄など)をしっかり把握しましょう。

まずは、年金の範囲内で生活していけるかどうかです。共働き家庭、会社員と専業主婦の家庭、シングルの人など、それぞれで環境は違いますが、入ってくる年金を確認しましょう。

公的年金については、今後、年金の水準が大幅に伸びていくことはないと思われます。なぜなら、平成27年度から「マクロ経済スライド」が導入されて、平均余命が伸び、保険料を負担する若い世代が減少すると、年金額が下がる仕組みになっているからです。

当分の間、物価の上昇に合わせての年金額増は期待できないと思います。年金以外に、1つ目の財布に補充できるものを検討し、2つ目の財布に、安心できるような金額を確保しておくことが必要です。

「老後の生活が心配」と言われる人も多いですが、どこから考えてよいのかわからないということもあるようです。こんなふうに整理して、退職後の準備をはじめませんか。もうすぐ60歳でまにあわないと思う人も、働く期間を延ばせばかなり改善できるはずです。

菅野 美和子(すがの・みわこ)
マイアドバイザー登録ファイナンシャル・プランナー。社会保険労務士すがのみわこコンサルティングオフィス/代表 会社URL http://homepage2.nifty.com/miming2/

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