今後の展開

さて、今後の人民元(市場実勢)の動向だが、2月は1米国ドル=6.5元台で弱含みの展開が続くと予想している。中国では12月に続き1月の製造業PMI(予想指数)も悪化して景気先行き不安が高まっている(図表-5)。

従って、金融緩和で資金流出が加速するとの懸念を背景とした軟調地合いは今月も続きそうである。一方、中国当局は基準値を市場実勢より高めに設定、元買いドル売り介入で下落を阻止していることから、外貨準備の規模に照らせば下落余地は限られるだろう。

但し、1月に基準値を市場実勢より高めに設定したことが今後の波乱の芽となりかねない。1月末の基準値は、市場実勢(CNY)より約0.4%高く、オフショア市場(CNH)より約1%高く設定された(図表-6)。

"市場経済国"移行を目指す中国当局が、今後再び基準値を市場実勢に近付ける操作に出れば、"人民元切り下げ"と受け取られて、市場が再び混乱する恐れがあると思われる。

最近の人民元と今後の展開3

三尾幸吉郎
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 上席研究員

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