(写真=PIXTA)
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2015年10-12月期の実質GDP成長率(*1)は前年同期比7.3%増と、前期(同7.7%増)から低下したものの、市場予想(*2)(同7.1%増)を上回る結果となった。

また4-6月期と7-9月期の成長率は、それぞれ同7.0%増から同7.6%増、同7.4%増から同7.7%増に上昇修正された。多くの新興国経済が減速するなか、同国は堅調な内需を背景に力強い成長が続いていることが明らかとなった。

需要項目別に見ると、4期連続で加速していた総固定資本形成の鈍化が成長率低下の主因となったものの、個人消費の拡大が景気を下支えしたことが分かる(図表1)。

まずGDPの約6割を占める個人消費は前年同期比6.4%増となり、前期の同5.6%増から上昇した。12月の消費者物価上昇率は前年同月比5.6%増と、昨年8月(同3.7%増)に底打ちしてから緩やかな上昇傾向にあるものの、中央銀行のインフレ目標(16年1月までに6%)を下回っている。

またインフレ率の低下を追い風にインド準備銀行(中央銀行)は2015年に政策金利を計1.25%引き下げたことから貸出金利は緩やかに低下し始めており、10-12月期の乗用車の販売台数が前年比13.9%増と大きく上昇するなど消費は堅調を維持している(図表2)。

もっとも、昨夏の雨季に続いて乾季においても雨不足が続いており、農業収入の減少に伴う農村部の需要鈍化が消費全体を下押しする状況は続いている。実際、農村部が主な購買層である二輪車の販売台数は祭事期需要で二桁増となった10月を除けば鈍い動きが続いている。

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政府消費は前年同期比4.7%増と、前期の同4.3%増から上昇した。

総固定資本形成が前年同期比2.8%増と、前期の同7.6%増から低下した。これまでは新政権樹立後の外資規制の緩和や積極外交による投資誘致、中央銀行による段階的な利下げ、そして政府の資本支出の拡大などが投資を押上げてきたが、10-12月期は一服感が見られる結果となった(図表3)。

公共投資の拡大は続いているものの、世界経済の先行き不透明感の高まりや政府の経済改革の停滞、企業が過剰債務を抱えていることなどから民間投資は鈍化したものと見られる。

外需については、輸出が前年同期比9.4%減(前期:同4.3%減)と大きく減少した。通関ベースの貿易統計によると、主要輸出先である中国・東南アジアと中東の景気減速を受けて両地域向けの輸出が低迷している。一方、輸入も同10.8%減(前期:同3.4%減)と石炭公社の国内生産拡大などによって減少した。その結果、純輸出の成長率への寄与度は+0.5%ポイントと、前期の▲0.1%ポイントからプラスに転じた。

実質GVA成長率は前年同期比7.1%増の上昇と、前期(同7.5%増)を下回り、市場予想2(同7.1%増)どおりの結果となった。産業別に見ると、鉱工業が上昇、サービス業が堅調を維持したものの、農林水産業が低下した(図表4)。

成長を支えるサービス業は、金融・不動産・専門サービス業が同9.9%増(前期:同11.6%増)と低下したものの、小売・ホテル・運輸・通信業が同10.1%増(前期:同8.1%増)、行政・国防が同7.5%増(前期:同7.1%増)とそれぞれ上昇した。

鉱工業は、電気・ガス業が同6.0%増(前期:同7.5%増)と低下したものの、製造業が同12.6%増(前期:同9.0%増)、鉱業が同6.5%増(前期:同5.0%増)、建設業が同4.0%増(前期:同1.2%増)とそれぞれ上昇した。
農林水産業は同1.0%減(前期:同2.0%増)となり、雨不足による穀物やオイルシードの生産減が響いてマイナスに転じた。

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先行きも国際商品市況の下落が政府による食料の安定供給を容易にし、インフレ率の安定化による金融緩和がインド経済を押上げる展開は続きそうだ。また原油安は燃料物品税の増税の追い風となっており、今月29日に公表される来年度予算案で財政健全化に進展が見られれば、中央銀行は足元のインフレ圧力が和らぎ次第、追加の金融緩和に踏み切るものと見られる。

さらに政府は11月に敗北したビハール州議会選挙後、外国直接投資の規制緩和を発表している。シングルブランドの小売業や国防、土地開発・建設などの分野で一定の規制緩和が実施される見込みである。こうした経済改革の進展が伸び悩みつつある投資を下支えするだろう。

もっとも輸出の低迷は長期化が見込まれ、インド経済は内需頼みの成長が続くものと見込まれる。

(*1)2月8日、インド中央統計機構(CSO)が国内総生産(GDP)統計を公表。
(*2)Bloomberg調査

斉藤誠(さいとう まこと)
ニッセイ基礎研究所経済研究部 研究員

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