結果の概要:雇用者数は前月から大幅に増加、市場予想も上回る
3月4日、米国労働省(BLS)は2月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は前月対比で+24.2万人の増加(*1)(前月改定値:+17.2万人)と、前月から伸びが大幅に加速、市場予想の+19.5万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も大幅に上回った(後掲図表2参照)。
失業率は4.9%(前月:4.9%、市場予想:4.9%)と、こちらは前月、市場予想に一致した(後掲図表6参照)。一方、労働参加率(*2)は62.9%(前月:62.7%、市場予想:62.8%)と前月から上昇、市場予想も上回った(後掲図表5参照)。
結果の評価:時間当たり賃金の伸びは予想外に鈍化も、労働市場の回復持続を確認
2月の雇用者数は、上方修正された1月からさらに市場予想を上回る増加を示した。この結果、16年に入ってからの月間平均増加数は20.7万人増と、昨年の22.9万人増や15年10-12月期の28.2万人増よりは低下したものの、20万人超の順調なペースで拡大していることが確認された。
また、失業率は前月と変わらずの4.9%となったものの、これまで回復がもたついていた労働参加率が3ヵ月連続で上昇するなど、改善基調が明確になっており、労働力人口が大幅に増加する中での失業率の横這いは、労働市場の需給タイト化が持続していると評価できる。
一方、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比▲0.1%(前月:+0.5%)と、大幅なプラスであった前月から一転、2ヵ月ぶりにマイナスとなったほか、市場予想(+0.2%)も下回った。さらに、前年同月比も+2.2%(前月:+2.5%)と、市場予想の+2.5%を下回り、明確に伸びが鈍化した(図表1)。
賃金の伸び鈍化は、ネガティブであり、来月以降の数値を確認する必要はあるものの、雇用者数の増加や労働参加率の改善にみられるように、労働需給のタイト化は持続していることから、一時的な鈍化の可能性が高い。
このようにみると、2月の結果は賃金上昇率こそ期待外れだったものの、それ以外は労働市場の順調な回復持続を示唆する内容であり、最近一部で言及されている米国経済がリセッション入りするとの懸念を払拭するのに十分な結果と言えよう。
もっとも、原油価格の下落により物価上昇圧力が後退する中で、賃金上昇圧力に加速がみられていないことも確認されたため、物価面から追加利上げを急ぐ必要はないため、3月のFOMCでは追加利上げが見送られるほか、FRBは今後の追加利上げ時期を慎重に見極めるとみられる。