公認会計士&税理士、そして、作家としても精力的に活躍を続ける山田真哉さん。公認会計士や税理士というお仕事柄、決算書をご覧になる機会も多いのではないでしょうか。これから投資を始めてみたい人、別の会社に転職を検討している人はもちろん、決算書の読み方が気になるなら、山田さんの今回のお話はためになるはずです。

決算書は投資家?取引先?どちらで見る?

山田 真哉さん

――山田さんはお仕事柄決算書をご覧になることも多いと思います。企業の決算書を見ると、どのようなことがわかるのでしょうか。注目すべきポイントなどを教えてください。

山田:少し専門的な話になりますが、どういった目的で決算書を読みたいのかによって、見るべきポイントは変わってきます。投資家として見るのか、取引先として見るのかでは大きな違いがあるのです。

決算書は、こう言っては不謹慎かもしれませんが、あくまで“ご遺体”みたいなものだと思っていて。犯人を捜したいのか、それとも死因を調べたいのかによって、アプローチが変わってくる。現場で活躍する捜査官が、DNAや指紋を採取して検証するように、なかなか素人では判断のつかない部分は正直あります。

ただ、素人であっても、外見から判断できるパーツというのはあって、それはいわゆる顔の部分ですね。売上は企業の規模を表す、いわばその人の顔の大きさ。この大きさって、実はけっこう大事で、例えば、売上100億円の会社が利益を200億円出すことはできません。利益は、最終的なその会社の実力ですから。結局、会計の考え方って“利益が大きければその会社はより成長します。だから幸せですね”と。いわば幸福度の数値化なんです。

まあ、それって人間には難しいですよね。“幸せとは何か?”って、もはや哲学の領域ですから。ところが会計の世界では、「利益が出れば幸せだね」という世界観ですから、利益が出れば出るほどいいし、増えれば増えるだけ幸せなんです。

直伝!危ない会社の見分け方

そういった観点から、では、どうやって危ない会社を見分けるのか?という話をします。よく話題になるのは“粉飾決算”、すなわち嘘の決算書を作成して公開するというものですね。ステークホルダーから良く見られたいと考えて、利益を多めにかさ上げをする。ということは、売上が架空である、もしくは経費を隠している、この2つの可能性があります。

外から決算書を見るだけでは、なかなかわからないですよね。そのために会計士がいるのですが、それでも見抜けないことがあります。でも、どこかから噂が広まります。そんなに売上はないよね…とか、逆に、もっと売上があるはずなのに、隠しているのではないか…とか。

最近は、SNS上でさらされますから、付きあってはいけない会社は口コミで広がります。要するに、数字だけで気がつくのは難しいですから、文章で見て知って、数字で裏付けを取るというのが正解なのかと思います。

卑近(ひきん)な例で言えば、私には今、あるクレジットカードの契約を続けるかどうかという悩みがありまして、非常にポイント還元率が高い、夢のようなカードだったのですね。

ところが、6月1日に規約が改定されて、使用量によってポイント還元率が変わるという話になりました。しかもポイントの上限も設定されるという。私は事務所の経費の支払いにすべて、そのカードを使用していたので、ポイント還元率は高いままで維持できる可能性はあっても、上限をオーバーする可能性がある。

このまま使っていていいのかどうか、迷っていたときに、このカード会社の決算書を見たのですね。すると、売上が2億円であるのに対して経費が29億円、大赤字だったので、それは規約を改定するだろうと納得しました。そもそもポイント高還元率の維持が無理だったのだと。こういったカタチで数字の裏付けをとったわけです。

これがもし、利益が出ていたら、もっとおもしろい追加サービスが出るかも?なんて期待もできたのでしょうけれども、黒字化するまでサービス内容が良くなることは考えづらいんです。

なんでも裏付けをとっておくことが大事

山田 真哉さん

裏付けを取ってみたときに、そこに矛盾があったとしたら、何かあると疑ったほうがいいですよね。評判はすごく良いけれど大赤字だったり、その逆も怪しいですよね。人気がないのに利益が出ているとしたら、それは粉飾決算の可能性があります。このように、大本を確かめるのはかなり大切だと思うのです。

例のシェアハウス投資って、「女性に人気です」と言う文脈は確かにありました。その噂を確認するために数字を見てみると、入居率は30%とか10%とか。ここに投資する選択肢などあり得ないのに、多くのサラリーマンは忙しさにかまけてしまったのか、数字を確認するという行為を放置。宣伝マンと銀行の言うことを聞いて、ポンポン借りて投資した結果が…ああいった事態を招きましたから。

文脈だけでも怖いし、数字だけでも怖い。文脈を理解したうえで数値に落とし込まないといけないですよね。投資をするのに裏をとらないのは、もはや無謀としか言いようがありません。シェアハウス投資などは、地域の坪単価を聞けば高すぎると気づくはずです。建築費ってこんなにする?とか、ネットやSNSで拾ってくれば、こんな情報はすぐ手に入るはずなのですが…。人脈も大事ですよ。知り合いの不動産屋に聞けば、すぐに危ないとわかります。

――だまされる側にも問題があるということですね。

山田:そういう教育を受けていないからですよね。裏をとるって、誰からも教わってきていないではないですか。性善説をとっていますからね。だからこそフェイクニュースに踊らされたりする。お金がらみの話において裏をとるのは、今はそれほど難しくないので、そこはぜひ習慣化してほしいですよね。(提供:お金のキャンパス

山田 真哉(やまだ しんや)
公認会計士・税理士
一般財団法人 芸能文化会計財団 理事長

神戸市生まれ。公認会計士・税理士。大学卒業後、東進ハイスクール、中央青山監査法人(現・PwCあらた有限責任監査法人)を経て、芸能文化会計財団の理事長に就任。
主な著書に、160万部のミリオンセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社)、シリーズ100万部『女子大生会計士の事件簿』(角川文庫他)。
現在は『浅野真澄×山田真哉の週刊マネーランド』(文化放送)・『坂上&指原のつぶれない店』(TBS)等にレギュラー出演し、約60社の顧問、内閣府の委員等を務めている。


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