米大統領選の共和党候補者指名争いで、獲得代議員数が2位だったテッド・クルーズ上院議員が選挙戦からの撤退を表明。これにより7月の共和党全国大会で候補者として指名されるのは、実業家のドナルド・トランプ候補になる公算が大きくなっている。

クルーズ氏が撤退したのは、3日に行われたインディアナ州予備選で大敗し、ここからの逆転は難しいと判断したからと見られる。共和党の指名獲得には、代議員総数の過半数(1237人)が必要とされるが、トランプ氏はあと200人程度に迫っているといい、ほかの候補が覆すのはほぼ不可能と見られている。

数々の暴言・放言……実業家としては評価

トランプ候補といえば、数々の暴言や放言で知られる。

たとえば「メキシコは問題人物をアメリカに送り込んでくる。彼らはレイプ犯だ」「日本が攻撃されれば、米国はすぐに助けにいかなければならないが、我々が攻撃を受けても日本は助ける必要はない。条約は不公平だ」「日本・韓国が自主防衛の体制を取るのであれば、両国に核武装を認める」。はたまた共和党から立候補する予定だったカーリー・フィオリーナ氏の顔については「あの顔を見てみろよ。あの顔に一票投じる人間なんているのかね?あの顔が次の大統領なんて想像できるか?」--。例を挙げればきりがないほどだ。

トランプ候補が共和党の指名を確実にしたとはいえ、当然のことながら大統領選で勝てるかどうかは分からない。米国は大別すると共和党と民主党で二分されているうえ、共和党支持者内でも意見は割れているからだ。上で述べたような放言を繰り返しているトランプ候補だけに、米国民の氏に対する評価には温度差があり、相当の嫌悪感を抱いている人たちも少なくなさそうだ。実際、スーパー・チューズデーで勝利が明確になった直後、米国版グーグルでは、「どうすればカナダに移住できるか」という検索が1500%も上昇している。

しかし、米国在住のある日本人アナリストによれば、昨今の放言も自由な立場だから言えるだけであって、「さすがに彼も大統領になれば自重するのでは」という見方が実業界で広まっているという。トランプ氏が実業家として目覚ましい成果を出しているのは間違いなく、ビジネスパーソンとしては優秀と言えるはずで、実務に長けたスタッフを配置することで大統領職も務まるのではないかというのだ。

実際、4月27日にワシントンで行われたスピーチでは用意された原稿を読むスタイルで、自由に放言するトランプ流は見られなかった。

このスピーチでは、トランプ政権の外交政策が示唆されたと考えられる。内容としては「米国第一」である点は変わらず、経済政策においても米国の利益が最優先であることを指摘。ただし、米国が世界で果たすべき役割は今よりずっと強いとも述べ、「欧州やアジア、中東の同盟国も新しい外交政策から利益を得られる」と主張したといい、このスピーチからも共和党内の主流派の間でトランプ候補支持の動きが広まっているという。

先述のスピーチでトランプ氏は「トランプ政権ではいかなる米国民も、外国の市民のために自分たちのニーズが二の次にされていると感じることはない」(CNN)と述べたという。日本の立場からすると、上で触れた発言にもあるように、日米安保に関わる重大な方針転換をもとめられる可能性がある。経済政策の面でも貿易摩擦に発展する恐れもある。世界中で右傾化が進んでおり、米国民のトランプ候補支持もその流れにあると言えるだろう。民主党の候補者選びと合わせて、今後の選挙戦にも注視が必要だ。(ZUU online編集部)

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