昨年12月に1200人の人員削減を発表した米モルガン・スタンレーが、上海で新たな人員整理を予定していることが関係者の証言から明らかになった。

今回は一部の従業員の解雇を含め、上海の従業員の3分の1に値する75人をインドや香港といった低コストで運営可能な土地に移動させ、管理業務の効率化を図る目的で実施される。

中国の管理事業部門を縮小し、アジアの成長株であるインドに基盤を移し替えることで、「コストを抑えながら事業を運営することは可能だ」というジェームズ・ゴーマンCEOの意向に沿う意図が強い。

ゴールドマン、HSBCなども低コストな土地を物色中

4月に発表された第1四半期の決済報告では株主資本利益率が6.2%に落ち込んだモルガン。ゴーマンCEOが掲げる10%という目標を達成する手段として、「合理化プロジェクト」の一環であるコスト削減に本腰を入れるのは自然の流れといえるだろう。

モルガンはテクノロジーや外部業務委託を積極的に採用し、2017年までに10億ドル(約
1096億5000万円)の経費削減を目指している。この改革はニューヨークの本社を含む「高コストな支社」を中心に実施され、10%から15%の従業員を「低コストな支社」に移動させる計画だ。

同様の合理化は近年、大手銀行に多く見られる。米ゴールドマン・サックスがここ数年で何千という職をソルト・レイクやダラスなど維持費の安い土地に移したほか、最近では英HSBCホールディングスが2017年を目途に、ロンドンやシェフィールドからインド、中国、ポーランドへの「人事移動計画」を明らかにしている。

ゴールドマンの例では雇用自体はかろうじて国内にとどまるが、モルガンやHSBCの改革は雇用が国外に流出することを意味する。企業にとっては「最適な手段」ととれる人員整理だが、移動やリストラの恐怖の中で勤務せざるを得ない従業員は勿論、投資家にとっても理想的な環境とはいい難い。

利益を追求するあまり過剰な合理化に走り、自国経済にとってマイナスの結果とならなければよいのだが。( FinTech online 編集部)

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