米ゴールドマン・サックスが「ブロックチェーン技術を現物市場の決済に採用することで、銀行は年間60億ドル(約6618億円)節減できる」という内容の調査レポートを発表した。
レポートは、高コストで複雑な現物市場のポストトレード(取引内容などの通知)のプロセスをブロックチェーンで簡潔化することを提案しており、人件費や管理業務などを大幅に減らすことが可能なほか、約定見返勘定などにともなうリスク軽減も期待できる点を強く主張している。
しかし企業にとっては大きな利益となる分散型台帳の導入は、大量の雇用口を閉ざす結果になりかねないとの懸念も持ち上がっている。
シャロヴィ氏「10年後には銀行がなくなっている」
ゴールドマンの計算通りにいけば、ブロックチェーンによる取引プロセスの簡潔化によって、米国だけでも年間20億ドル(約2206億円)の経費削減が期待できるという。
中でも現在の取引量の1割に利用されている手動システムの排除は、人件費や時間の節約につながるだけではなく取引エラーの防止にもつながる。
分散型台帳の導入による人件費削減総額は9億ドル(約992億7000万円)、システム運営費削減総額は7億ドル(約772億1000万円)と見込まれている。またブロックチェーンの透明性が、年間30億から50億ドル(約3309億から5515億円)のマネーロンダリング取引を防止できると予想している。
レポートではこうした分散型台帳の利点だけに焦点があてられているが、「ブロックチェーンが社会の脅威に変貌しかねない」という懸念の声も聞こえてくる。
R3への参加検討を含めブロックチェーンの研究をすすめているロシア最大の商業銀行、ロシア貯蓄銀行のヴァイス・プレジデント、アンドレイ・シャロヴィ氏は、「2026年までにはこの世から銀行という存在が消え去っているだろう」とコメント。ブロックチェーンの登場によって10年後には金融システムがそっくり新しいものに入れ替わっている可能性が高いとの見解を示している。
人間がテクノロジーを「利欲」ではなく「共存」に利用するための道を切り開かない限り、人工知能やブロックチェーンが人間の脅威に変わる日は、そう遠いことではないのかも知れない。( FinTech online編集部 )
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