「結論と数字」が男性脳を喜ばせる
報告や伝達のシーンでは、「結論から言わない」女性が、しばしば男性を怒らせます。
俯瞰的にものをみる男性脳が「結果・結論」を重視するのに対し、小さな変化や推移に敏感な女性脳は、「プロセス」を重視します。その結果、つい発端から経緯、個人的感想まで長々と伝えたくなるのです。
しかしこの伝え方は、男性の目には「デキない人間」と映ります。まして、最後に言う結論が「……というわけで、先方がお怒りで、至急お電話くださいとのことです」などだった場合は、激怒されても文句は言えません。
大事なのは、「結論から言う」ことと「数字を言う」ことです。
「部長、この件は○○になりました。理由は三つありまして……」がベストな伝え方です。
ちなみに、3つ伝え終わる前に4つ目、5つ目を考えついてしまうのも女性脳によくある現象ですが、あとから勝手に増やしてはいけません。
男性脳は、対話に使う脳のワーク領域が女性の数十分の一しかなく、「3つあります」と言われたときには、狭いスペースに隙間を作り、三つの箱を用意します。そこへ4つ目、5つ目が予想外に降ってくると、男性の脳神経回路は多大なストレスを覚えるのです。
どうしても言いたいときは、いったん席に戻ってから少し時間を置き、「追加情報があります。2つありまして…」と、新たにワンセット組みましょう。
「ダメ出し」のコツは男女で正反対
「結果重視とプロセス重視」の違いは、「叱り方」にも大きな違いを生み出します。
あるタスクで上々の成果を収めた時、女性は「成功を導いたプロセス」に満足を覚えています。ここで上司は、「でも、あの段階のあの部分は問題があったよ」と言ってはいけません。その出来事全体の世界観が壊れて、女性は途方に暮れてしまいます。
逆に、結果が悪かった場合は、プロセスにダメ出ししてもOK。そのせいで失敗したのだ、と女性も納得しているからです。
男性に対しては、この構図が正反対になります。
成功を収めたとき、男性は結果に満足しています。ですから、途中段階に問題があったことを指摘してもさほど気にしません。「そうですね、次から気をつけます!」で済むでしょう。
逆に、失敗したときに経過を責めると、多大なダメージを受けてしまいます。
もちろん、上司として問題点に気づかせることは必要。男女を問わず、「問題があるとしたらどこだと思う?」「なぜ失敗したかわかる?」と問いかけ、自分で答えを出させるのがベストです。
このように、接し方ひとつで対話はぐっと円滑になるもの。相手の性別による「感じ方」の違いを把握して、無用な波風を立てないコミュニケーションを図りましょう。
女性部下への「言い換え」例
「つらい」と訴えられたとき
○「そうか、それはつらいね」
○「嫌な思いをさせて、申し訳ないね」
×「それなら、もっとこうすべきだよ」
×「あ~、ごめんごめん!」
喜び、驚き、困惑、落胆など、女性は様々な感情を言葉にする。そのときは必ず、共感する言葉で答えよう。「つらいんです」と言われたら「そうか、つらいね」が正解、いきなり提案やアドバイスをするのはNG。
また、相手を怒らせたときに「とりあえず謝っておく」のは大きな間違い。「本当にわかっていますか?」という、さらなる怒りを呼び起こす。「嫌な思いをさせたね、ごめんね」と、謝る言葉の前に、気持ちに寄り添う一言を。
男性部下への「言い換え」例
男性部下が失敗してしまったとき
○「そんな失敗、誰でも一度はするよ!」
○「失敗も糧。精一杯リカバーしよう」
×「そういえば前も、ここを間違えたよね」
×「これは大変だ。どうしてくれるんだ!?」
男性は「悪い結果」に弱い。とくに自分が失敗したときはひどくダメージを受ける。
そんなとき、「慌てる・怒る・責める」上司は最悪。動じずに、「リカバー」という次なる目標を与えるのが良い対処だ。
とくに、女性上司の場合、「前の失敗」を蒸し返さないように注意。女性脳は、同一の感情を覚えた経験を瞬時にすべて再生できてしまうので「そういえばあのときも……」とつい言ってしまうが、不毛な上に人間関係も損なうので注意しよう。
黒川伊保子(くろかわ・いほこ)感性リサーチ代表取締役社長/感性アナリスト
1959年、長野県生まれ。栃木県育ち。奈良女子大学理学部物理学科卒業。㈱富士通ソーシアルサイエンスラボラトリにて人工知能(AI)の開発に従事。2003年に㈱感性リサーチを設立、脳機能論と人工知能の研究成果に基づく五感分析法を開発し、マーケティング分析に生かす。性別や年代による脳の性質の違いを軽妙な語り口で解説、講演やセミナー、テレビ出演等幅広く活躍。『キレる女 懲りない男』(筑摩書房)ほか、著書多数。(取材・構成:林加愛)(『
The 21 online
』2016年5月号より)
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