職場でも家庭でも使える「男女の会話」のコツ
男性と女性とで会話するとき、お互いの「伝え方」とその「受け止め方」に差があるために、お互いにイライラしたり、ケンカになったりしてしまうことがある。それを防ぐには、どうしたら良いのだろうか。男女脳論の専門家である黒川伊保子氏に、アドバイスをいただいた。
俯瞰してとらえる男性、細部を察知する女性
「女性はなぜオチのない話で盛り上がれるのか」「男の人ってどうして察してくれないの」――古今東西、「男女の違い」は数々のコミュニケーションギャップを生んできました。
なぜ、こうしたすれ違いが起こるのでしょうか。それは、物の見え方・感じ方に、男女間で大きな差があるからです。
その違いを作り出しているのは、脳の中の「脳梁」という部分。ものを感じる右脳と、理論的に思考する左脳をつなぐパイプ役を果たす器官です。このパイプが、女性は男性より20%ほど太いのです。
従って、男性の右脳と左脳は女性ほどスムーズに連携しません。しかし、そのことは、双方から受け取る情報の差異を際立たせ、認識に奥行きを与えます。「物事全体を俯瞰的・構造的にとらえる」という、男性特有のものの見方はここから生まれます。
対して女性脳は、全体像の把握よりも、細かな変化の察知力に優れています。また、右脳で感じたことを即刻左脳で言語化できるので、感情をすぐ言葉にするのも特徴。「で、オチは?」と言いたくなるような、とりとめのないおしゃべりも、こうした脳の働きによるものです。
この違いは、コミュニケーションのあり方にも大きな差異を生み出します。
女性脳は、感情を共有できたときに喜びを感じます。女性同士の会話で、「そうそう!」「わかる、わかる」といった言葉が頻発するのはそのせいです。
そう考えると、男性が女性と接するときのコツも見えてきます。そう、最大の秘訣は「共感すること」にあるのです。
これを実践する上で、一番簡単な方法は「反復」。相手が「面白いですね」と言えば、「そうだよね、面白いよね!」と繰り返すのが基本です。
ただし、例外もあります。「私の仕事は、重要性が低いんです?」などと聞かれたときに、「そうだね」などと答えては大変なことになります。「そんなわけないじゃないか!」と即座に、強く否定しましょう。
また、女性は理由を言わずに不機嫌になることもあります。この場合、男性のふとしたひと言が彼女のコンプレックスを刺激してしまった可能性大。彼女は「そこに劣等感を持っている」ことも言いたくないので、ただ黙って機嫌を損ねるのです。
そんなとき、コンプレックスの所在を明らかにしようとして、「何を怒っているの?」などと聞くのは逆効果です。
正しい処方箋は、「その女性が得意なこと」を頼むこと。「この資料、まとめてもらえる? 君のまとめ方はいつも見やすいから」と言えば、彼女の自尊心はすぐに回復するでしょう。
職場の男性に「共感」を期待してはいけない
逆に、女性が男性に接するときの秘訣は何でしょうか。それは、ここまでの話とちょうど逆。「共感を期待しないこと」です。
職場においては、とくにこの意識が必要です。「毎日が勝負」の仕事場に、共感の入る隙は少ない、と心得ておきましょう。
男性は、これをごく当然のこととして認識しています。
試合中のラグビー選手は、全力疾走しながら「おお、君のパスは素晴らしい!」などと、いちいち会話しませんね(笑)。職場も同じです。男性は称賛やねぎらいや同情を、たとえ感じていても逐一言葉にはしません。
それがわかっていない女性は、しばしば戸惑うことになります。
たとえばプレゼンのとき。「会心の出来だ」と思いながら発表を終えたとたん、「ここのコストはもっと削れないの?」「準備期間が短すぎない?」などと、弱点を突くかのような質問が飛んでくることがあります。すると女性は「なぜ、こんなにけなされるの?」と心外に思いがちです。
それはけなされているわけではないのです。男性陣は、良い案だと認めたからこそ、より実現性を高めようとして質問するのだということを理解しましょう。「いい出来だね」の一言がないからといって、「何がいけないの」と怒り出すのは禁物です。