ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、シティバンクなど米大手銀行が、就職希望者の特質を診断する人工知能(AI)ソフトウェアの採用に乗りだしている。
「チームワークに向いているか」「向上心や根性があるか」といった企業にとってプラスに働く特質は、面接時の対話や履歴書からは本当のところが見えにくい。そこでAIに判断を任せることで、人材を効率的にふるいにかけて究極のコスト削減につなげるという意図だ。
実例に基づいて判断するAIの正確度に疑問の声も
近年、大手銀行にとってコスト削減は、デジタル化と同じくらい重要な課題になっている。大規模な人員整理で不要な人材を減らすと同時に、会社に貢献できる優秀な人材確保には余念がない。
AI人材ソフトの採用もこうしたコスト削減策の1つだ。米キャピタル・ワン・フィナンシャルによると、「誤った人材選択」から生じるコストは従業員の給与の最高3倍にもおよぶという。
シティバンクを含む数社は、シアトルのスタートアップKoru Careersが開発したソフトを採用。従業員を対象に実施されたテストから「優れた実績」を判断基準として設定し、同じテストを受けた応募者の中から「最も適正の高い人材」を選び出すという賢いソフトだ。
また面接時の様子を撮影した映像から身体言語や話す速度を分析し、「仕事への野心」など応募者が面接官には隠している本音の部分も探りだす。性格テストでは「感情的知性」「考え方」など精神面も含めて、総合的に評価することができる。
これらのテストや分析は、オンラインやモバイルデバイスからも実施可能だ。企業によって求める人材の基準が異なる点への配慮もなされている。
ここで最も気になるのはAIによる判断の正確度だが、「AIが常に正しいとは限らない」と指摘する専門家もいる。AIはあくまでデータのパターンに基づいた判断を行うため、その会社で優れた実績をあげている人材(例えば30代後半、◯◯大学卒、子供2人、左ききなど)と共通点の多い応募者が「最高の適任者」として選ばれる可能性は高い。
しかし優秀な人材との共通点が多いというだけで、実際の仕事ぶりが保証されるわけではない。ロボットと人間、どちらの判断力が勝っているのか--それが明らかになるのはまだ先の話になりそうだ。( FinTech online編集部 )
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