アジアにおけるFinTechの発展レベルを地域ごとに比較した最新版のレポートを、シンガポールを拠点にアジアで活動するFinTechスタートアップ、tryb の共同設立者、マーク・グナーク氏が発表。

グナーク氏はFinTechアクセラレーター・ネットワーク「スタートアップ・ブートキャンプ」のCOOとして、昨年に引き続き二度目の訪問となった日本、香港、ベトナムなど、7地域の金融革命への取り組みと成長分野、今後の課題などを取りあげている。

日本 FinTechプロの育成が成功のキー

政府によるFinTechコミュニティーや、仮想通貨の規制を目的とした法改正案の設立など、革命が活発化している。

ウェルス・マネージメントや投資会社などで、今後さらにFinTech化が進むと期待できるだろう。

研究開発(R&D)は外部の技術者まかせーーというのが弱点。内部でFinTechの知識と経験に富んだ人材を確保、育成する必要がある。

香港 他分野とのインテグレーションに期待

5月に開催されたアジアFinTechイベント「Finnovasia Conference」では、600人以上の参加者を集めるなど、確固たるFinTechエコシステムが形成されつつある。

ウェルス・マネージメント、銀行、業務ソリューション、投資マネージメントなどが香港FinTechの狙い目。資金調達の環境も整っており、医療やIoTとのインテグレーションも可能になりそうだ。政府機関による協調性の欠落が目立つ。

韓国 人材は豊富だが投資したい人が少ないのが課題

韓国金融通信(KFTC)や大手韓国16社と提携して設立して、モバイルバンキングを立ち上げたカカオ。2200万ドル(約22億3476万円)の大型資金調達に成功している。

ウェルス・マネージメント、ビッグデータ、マシーン学習などが伸びそうだ。テク分野で優秀な人材に恵まれており、銀行もAPIシステムの開発に熱心。韓国FinTechの投資に関心を持つ投資家や銀行が少ないのが残念だ。

インドネシア 大型投資で活気はあるがスタートアップは小粒ぞろい?

銀行業務許可の規制が改定され、一気にデジタル化しそうな気配だ。大手マンディリ銀行が4200万ドル(約42億6594万円)の資金調達ラウンドを開始したほか、中国Alipay上陸予定など、活気がみなぎっている。

注目分野は決済、投資、デジタル関連。投資家からの関心は集めているが、肝心のスタートアップの魅力が今ひとつのようだ。

マレーシア 銀行は提携に積極的だが大物スタートアップがいない

マレーシア証券監督当局がFinTechグループを立ち上げたほか、主要銀行によるインキュベーター、 アクセラレーター、支援プログラムが盛ん。

中小企業向け融資、国際決済、ウェルス・マネージメント、銀行、業務ソリューションが活性化されるだろう。スタートアップとの提携を歓迎する銀行が多いが、突出したスタートアップがいまだ出現していない。

シンガポール 注目度No.1のアジアハブ 幅広いFinTech展開に期待

瞬く間にアジアFinTechで不動の地位を築いたシンガポール。FinTechフェスティバルを11月に控え、改善されるべき問題への取り組みにも熱心だ。国内すべての主要銀行が支援プログラムや研究所に参加している。

ウェルス・マネージメントからマシーン学習、証券、コンプライアンスまで、非常に幅広い分野で勢力を伸ばすだろう。

英国や豪などと提携を結び国際化に精をだすのもよいが、ピンポイントに労力を絞ることで、さらなる飛躍が期待できる。

ベトナム 米ゴールドマンが一目置く成長株だが規制が足かせ

3月に米ゴールドマン・サックスから2度目の資金を調達した、電子決済スタートアップのMomoなどが、にわかに注目を集めている。決済、融資、デジタル関連が今後成長しそうだ。

アジア開発銀行は、ベトナム・スタートアップ向けの支援資金提供を検討している。
「規制の厳しさが足かせになる」との理由で、ベトナムスタートアップとの提携に消極的なインキュベーターが多く、成長を妨げているのが残念だ。( FinTech online編集部

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