金融市場(6月)の動きと当面の予想
◆10年国債利回り
- 6月の動き 月初▲0.1%台前半からスタートし、月末は▲0.2%台前半に。
月上旬は▲0.1%台前半での推移が続いたが、Brexitへの警戒や日銀追加緩和への思惑から10日には▲0.1%台後半へと低下。Brexitへの警戒がさらに強まり、15日には▲0.2%を付けた。
その後、17日には高値警戒感から▲0.1%台後半へと上昇し、以降しばらくは▲0.1%台半ばでの推移に。しかし、24日には英国のEU離脱が決定したことでリスク回避の債券買いが優勢となり、再び▲0.2%へ。さらに28日には▲0.2%台前半まで低下、月末も同水準で終了した。
- 当面の予想
今月に入ってもリスク回避姿勢が続いているうえ、日銀追加緩和観測の高まりもあって、足元は▲0.2%台後半まで金利低下が進んでいる。特段の金利上昇材料が見当たらないなか、リスク回避に伴って金利が低下しやすい地合いにあるが、0.3%近くでは高値警戒感も出てくると思われる。しばらくは0.2%台後半を中心とするレンジでの一進一退の展開を予想している。
その後は月末の日銀決定会合が最大の焦点になる。0.1%程度のマイナス金利拡大を伴う追加緩和に踏み切れば、金利は現行水準で定着しどうだ。もし見送れば、これまで前のめりに織り込まれてきただけに、一旦金利は上昇するだろう。
◆ドル円レート
- 6月の動き 月初110円台後半からスタートし、月末は102円台後半に。
月初、110円台でスタートした後、米雇用統計の大幅な下振れを受けて、6日には106円台後半へと円が急伸。その後は106円台から107円台での一進一退となったが、16日には日銀の追加緩和見送りを受けて円高が進行、104円台に突入した。
以降しばらく英国のEU離脱を問う国民投票を控えて104円台での小動きが続いたが、24日にはEU離脱決定を受けて101円台半ば(一時100円割れ)に円が急伸。終盤は政策期待などからリスク回避が一服し、やや円安に振れたが、ドルの上値は重く、月末も102円台後半で着地した。
- 当面の予想
今月に入り、Brexitの影響への警戒感の高まりや、ハト派色の強い6月FOMC議事要旨を受けて円高が進み、足元は100円台後半で推移している。今後も米国の早期利上げが見込めない以上、ドルの上値は重く、悪材料が出た際には円の上値を試しに行く展開が続きそうだ。
目先の焦点は本日夜の米雇用統計。前回があまりにも悪い結果だっただけに、米雇用のトレンドを占ううえで非常に重要な位置付けにある。市場予想(Bloomberg集計:雇用18万人増、失業率4.8%、賃金上昇率0.2%)並みか予想を上回る結果となれば、ドル高反応が出ると見込まれるが、早期利上げが見込めない以上、ドルの上昇幅は限定的となる。予想を下回った場合は再び100円割れも。
◆ユーロドルレート
- 6月の動き 月初1.11ドル台後半からスタートし、月末は1.11ドル付近に。
月初、1.11ドル台で推移した後、期待はずれの米雇用統計を受けて6日に1.13ドル台半ばへユーロが上昇。その後はBrexitへの警戒からポンド安とともにユーロ安圧力が強まり、13日には1.12ドル台へ。さらに16日には1.11ドル台を付ける。
その後、英国での残留派議員襲撃を受けて残留派盛り返しの観測が強まり、20日には1.13ドル台へと上昇し、しばらく高値で推移した。しかし、24日には英国のEU離脱決定を受けて1.10ドル台へと急落することとなり、月末も1.11ドル付近で終了した。
- 当面の予想
今月に入り、Brexitの影響への警戒が高まったことでややユーロ安となり、足元は1.10ドル台後半で推移している。今後もBrexit問題への警戒感は続き、経済的な繋がりが深いユーロにも下落圧力がかかりやすい。
英国・ユーロ圏の経済指標の下振れ、追加緩和への期待、EU離脱ドミノを連想させる動きなどの材料を受けて、ユーロ安が進む可能性が高い。目先の焦点はドル円同様、本日の米雇用統計となるが、いずれにせよ、最近のトレンド・地合いを一変させることにはならないと見ている。
上野剛志(うえの つよし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
シニアエコノミスト
【関連記事】
・
英国のEU離脱と日本への教訓
・
英国民のEU離脱の選択から1週間-なお不透明なこれからの道のり
・
EU離脱で英国不動産市場に暗雲 Part2~英不動産ファンドの解約凍結、2007年パリバショックとの相違点は?~
・
EU離脱で英国不動産市場に暗雲~マイナスの影響が大きく、UK REITは大幅下落~
・
Brexit決着後の為替相場~マーケット・カルテ7月号