老後資金は、ストックではなくフローで用意する

答えはフローがあるかどうかの違いです。老後になっても、フロー(毎月一定額のお金)が入ってくるというのは、安心できます。ストック(資産)の減りが少なくてすむからです。

ストックがあってもフローが少ないと、ストックの減りが多く感じられて、不安になります。ですから老後資金で重要なのは、毎月一定程度のお金が入ってくるということです。資産の減りが少なくなることで「不安が軽減する」と考えて良いでしょう。

たとえ資産1000万円の人でも、毎年300万円ずつ入ってくるのであれば安心感が増します。実際は、資産1億円を持っている人の方がずっと安心なはずなのですが、人間の心理とは不思議なものです。

では、資産1億円持っていても心配な人はどうすれば良いのでしょうか? 一つの考え方として、ストックをフローに変える方法があります。たとえば、毎月配分型の投資信託を購入するのも良いでしょう。安心できる運用に切り替えることでお金の心配が軽減します。

長生きに対応した老後資金を用意する

もう一つ、問題になるのが「年金の受け取り方」です。

国民基礎年金、厚生年金は終身で受け取けることが決まっています。しかし、個人年金保険は、一時金、確定年金、終身年金など受け取り方法を選ぶことができます。

確定拠出年金も給付の受け取りを(1) 一時金、(2) 確定年金、(3) 一時金と年金の併用、(4) 終身年金(一部の商品)から選ぶことができます。国民年金基金も、申込時に受け取り方法を選べます。

どれを選ぶか、実に悩ましく、複雑な問題です。というのは、税金のことがあるからです。どれが有利なのかは、その人の収入等で変わるので一概には言えません。

もうひとつ、「いつまで生きることができるのか」でも変化します。何歳まで生きるかは、死ぬまでわかりませんが……。

長生きをするのなら、終身で受け取れるタイプがお得です。早く死んでしまうのなら、一時払いまたは確定がお得です。税金のことを別にすれば、どちらが得かというのは、まさに賭けですね。

2060年には、平均寿命が4歳延びている

ちなみに、私は長生きする方に賭けています。つまり、早死にをすると賭けに負けます。長生きをすると賭けに勝ちます。

そういった視点で、老後資金を考えて見てはいかがでしょうか。毎年、平均寿命は長くなっています。2060年には、平均寿命が「男性84.19歳」「女性90.93歳」になる見通しです。ですから、これからの時代は、長生きのリスクに対応できるように考えておいた方がいいでしょう。

もちろん、ストックとして貯めるのも重要ですが、毎月入ってくるフローを準備しておくのも、長寿社会に対応した賢い方法ではないでしょうか。

長尾義弘(ながお・よしひろ)
NEO企画代表。ファイナンシャル・プランナー、AFP。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『怖い保険と年金の話』(青春出版社)『商品名で明かす今いちばん得する保険選び』『お金に困らなくなる黄金の法則』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)、『保険はこの5つから選びなさい』(河出書房新社発行)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。