世界的な低金利の流れを受け、高利回りが期待できるハイイールド債が近年人気であったが、雲行きが怪しくなってきた。エネルギー関連部門の債務不履行額が増え、デフォルトリスクが高まってきているというのだ。では、こうしたハイイールド債に投資している時に、知っておくべき点や見ておくべき要素はなんだろうか。

債券といいながら、価格の動きは株のごとし

ジャンク債とも呼ばれるハイイールド債は、信用性は低いが高い利回りが魅力の商品だ。アベノミクス以前は、株式市場の低迷の影響もあって、米国のハイイールド債を中心に組み込んだ投資信託が人気だった。2014年資産残高第一位を記録するなど、資金流入が続いていた。

だが、2014年には7兆円に迫る勢いであったハイイールド債投信の資産残高は、原油安の影響を受けて投資家心理が悪化し、2016年1月末時点で4兆円を割り込むなど、資金流出が続いている。米国のハイイールド債投信は、シェールガス関連などエネルギーセクターの組入比率が高く、原油安になるとダメージを受けやすい。2015年12月に米国籍のハイイールド債ファンド「フォーカスト・クレジット・ファンド」が清算発表を行い、事実上破綻したことで、ハイイールド債の信用不安が一気に高まった。

ハイイールド債は株式に近い水準のリスクを持っている。リーマンショックなど株価が暴落した時、通常であればリスクを回避するために債券が買われ、債券価格は上がるはずである。にもかかわらず、ハイイールド債は株式と同様に売られ、価格は暴落している。これはひとえに信用性が低いからだ。

デフォルトすると「ただの紙切れになる」わけではない

債券がデフォルトすると、全額資金が返ってこないと思いがちだが、一概にそうではない。

利払いの延期や債務削減交渉などが行われ、債務の一部カットが行われることが多いのだ。こうした交渉の結果次第で、返済率も会社の状況で異なってくる。過去の例をあげると、日本航空 <9201> の場合は670億円分の社債がデフォルトし、返済率は20%程など、紙くずにはならなかったものの、投資額の大半が戻ってこなかった。米国のハイイールド債も同様で、お金が返ってくる可能性はあるものの、大幅に損失を出すと考えてよいだろう。

ハイイールド債投信も、組み入れている債券がデフォルトした場合は、基準価格の下落という形で影響が出てくる。2015年末から2016年始めにかけて、ハイイールド債の価格が大幅に下落したため、投資信託の基準価格も10%以上下落した。ただ、組み入れ債券は数百本にのぼり、多くのハイイールド債に分散投資しているため、前述の日本航空のように突然大幅な損失がでるわけではない。

ハイイールド債を持っている時に見るべき3つの要素

ハイイールド債の動向を判断するには、3つの要素を追うといいだろう。

1つ目は米国10年債利回りとハイイールド債利回りの差である、スプレッドだ。過去10数年は2~8%の間で推移してきた。スプレッドが2%に近づくと、債券が買われて価格が上がってきているということで、信用度は増しているといえる。逆に8%に近づいてくると、投資妙味はあるが債券が売られ、債券価格は下落しているということなので、注意が必要だ。リーマンショック時はスプレッドが大幅に上昇し、20%を超えていた。8%を超えてくると、債券価格が通常の幅を超えて大幅に下落しているということだ。この場合、デフォルトする可能性が高まっていく可能性があり、注意が必要だ。

2つ目は原油価格だ。現在は1バレル40ドル半ばまで持ち直している原油価格だが、ハイイールド債券型ファンドに多く組み入れられている、エネルギーセクターの企業に良い影響をもたらす水準ではない。最低でも1バレル50ドル、できれば60ドルが必要であると見られている。今後再び原油価格が下落すれば、同時にハイイールド債も下落すると見ていいだろう。

3つ目は地学的リスクだ。前述した通り、ハイイールド債はリーマンショックの時に、株式と同じように暴落した過去がある。経済に大きなインパクトを与える出来事があれば、リスク資産を嫌う投資家が一斉に資金を引き上げるため、ハイイールド債も一斉に売られることになるだろう。

今後も英国のEU離脱の影響、米国の大統領選、オリンピック開催後のブラジルの経済状態など、世界の状況もしっかりと把握しておきたい。(ZUU online編集部)